第47話 「避妊は面倒臭い」に地球規模の反響
百獣の王など羨ましくもなんともない。むしろ哀れ。野生動物に生まれるなら熊さんみたく雑食がいい。遂に本作も茨城ローカル学園エッチコメディーの枠を超えてグローバルな展開を見せる……が次の瞬間急速に縮小し、再び舞台はちゅくば市に戻る。
彼女の大声は言語と空間の壁を突き破り、茨城県ちゅくば市から地球規模で響き渡る。インドのゾウ、上野のパンダ、ケニアのライオン、鉄研の気の弱そうな部員、達がそれを聞き届ける。
「パオパオン!(避妊はちゃんとしなくちゃダメだゾウ)」
とベタなリアクションのインドのゾウ。
「パンダパンダッ!(避妊? ただでさえ不妊に苦しんでるのよ? 国際問題に発展しかねないわよ! ちなみにあたしのレンタル料は一年で百万ドル。ヒルズ族御用達のコールガールにだって負けないんだからねっ!)」
と上野のパンダ。
「ガオガオー!(野生のオスのライオンの寿命は八〜十年。こんな哀れな百獣の王に一体いつ避妊しろというのだ)」
と結構マジなケニアのライオン。
「『避妊はめんどくさい』か。死ぬ前に一度は言ってみたいセリフだな……って誰も聞いちゃいないか」
と動物さん達と一緒に嘆く、鉄研の気の弱そうな部員。
これらを全てスルーしてミルクが言う。
「別れちゃいなよ〜。あなたの事を本気で思ってくれるなら〜あなたの事も聞き入れてくれるはずだよ〜」
「別れるって……私拒んでいたら彼から捨てられちゃいそうで怖いんです」
「そんなヤツはこっちから捨てろ!」
とくのいち。
「『避妊してくれなきゃ絶対イヤ』ってハッキリ言わなくっちゃね〜。でもそれだけじゃ不十分かも〜」
「どうすればいいの、ミルク?」
ミルクは先程携帯アーミーが送ってきた、くのいちと女生徒のやりとりの映像を思い出す。くのいちがフランクフルトで凌辱(?)されているやつだ。
「ねえあなた〜フランクフルト持ってたよね〜?」
「はい」
メガネっ子女生徒はフランクフルトを四本取り出す。
「こんな事も有ろうかと、この女生徒はフランクフルトを常備しているのであった」
とのナレーションが流れる。
「装着の練習をしよ〜。くのちゃん、アレを持ってきて〜」
くのいち、心の中で独白。
「(アレってもしかして話には聞いた事のあるアレよね。……でもここでおじけ付いたらミルクになめられちゃうわ)」
くのいち、努めて平静を装ってミルクに言う。
「あたしはあんたのお手伝いさんじゃないわよ。……ったく」
くのいちは携帯を取り出し例のヤンキーに電話する。
「あ、ヤンキーか。大至急ガーディアンデビルズの部室に来て」
「あ、あたし達これから友達とカラオケなんだけど……」
「いいから来い。来ないと手裏剣でお前の制服をズタズタに切り裂いて、全校生徒の前で裸踊りをさせるぞ」
「イエッサー! すぐに参ります!」
「(くのちゃんは女の子なんだから〜ここは『イエス、マム』よね〜)」
とどうでもいいツッコミを心の中で入れるミルク。
ミルクが女生徒に言う。
「避妊がめんどくさい、なんていう男には〜あなたがちゃんとがっしり装着してあげなくちゃダメ〜」
くのいち、心の中で独白。
「(アレってがっしりと装着するものなんだ。携帯にメモしとかなきゃ)」
くのいち、携帯を取り出してメモを打ち込む。
そこにヤンキーがガーディアンデビルズの部室に入ってくる。
「くのいちさん、ただいま参りました。あ、ミルクさん、どうも」
「あんたに買ってきて欲しい物があるんだけど。お金は出すわ」
くのいち、財布を取り出す。
「流石くのいちさん。で、何を?」
くのいちは四本のフランクフルトを持っている女生徒を指差す。
「これに被せるゴム、大至急ゲット」
「ゴム? フランクフルトに? どこで買えばいいんですか?」
「ほら、今妊娠するとマズイから産むのは今度にするやつで、ドラッグストアとかに売っている……」
「なぞなぞですか?」
「作者が若い頃には「『明るい家族計画』なんていう名前で街なかの自動販売機でも売っていた……」
「もっともっと楽しいヒントを出して下さい」
くのいち、ヤンキーの胸ぐらをつかむ。
「お前、分かっているのにとぼけているだろう。泣かすぞ」
ヤンキー、もうすでに泣いている。
「ふえーんすみません、くのいちさん。ヒックヒック。それで厚さはどうしますか?」
くのいち、きょとんとする。
「厚さ? えーと、あの、その……一ミリくらいなの?」
「一ミリは厚すぎですよ。0.05ミリより薄いと値段が高くなっちゃうから、その辺でいいんじゃないですか?」
「じゃあ0.05ミリでいい!」
「サイズの方はいかほどに?」
くのいち、心の中で独白。
「(服のサイズなら2XLで即答だけど、アレってサイズあるんだ? あいつだったらSサイズかなぁ……って何考えているのよ、私!)」
一体何を根拠にくのいちはそんな事を……はっ、もしかして強との決闘の時、(女)性上位の体勢に持ち込まれたどさくさで何かをつかんだのか? いや、つかんじゃマズいだろう。
くのいちの心の中で強と弁護士の節操先生がツッコミを入れる。
『節操先生。これは明らかに名誉毀損です。訴訟を検討したいのですが』
と心の中の強。
『例え事実でも名誉毀損は成立するから安心して裁判に臨め』
と心の中の節操。
くのいちの心の中のツッコミにチョコも加わる。
『携帯アーミーのみんなを傍聴に連れて行くね』
琢磨も真顔でツッコミに加わる。
『当然、証拠は陳列されるのですよね。あぁ、強君のボウチョウ楽しみだなぁ』
さすが琢磨。ウイット満載である。
くのいちはそれらをスルーしてヤンキーに言う。
「サイズ? お前の好きにしろ!」
ミルクはヤンキーに問いかける。
「ねぇ、ヤンキーちゃ〜ん。今日はちゃんとID持ってるの〜?」
「も、もちろんですミルクさん」
まさか彼女もヤンキーパンチの体育倉庫の一件を忘れてはいまい。
ミルクの目がキラリと光る。
「念の為身体検査しよ〜。大量破壊兵器とか隠し持ってるといけないから〜」




