第44話 第1部エピローグ 人を呪わば穴二つ……ってカワイイ子に言わせたい
母親の節操を倒し、あの切磋琢磨をも籠絡した節陶子。陶子と琢磨の間に何が起きたのか? ミルクはそれに気付いているのか? 「ガーディアンデビルズ」第一部のエンディング。
節陶子は その晩は充実感、達成感、幸福感で高揚していた。夜も最初の興奮がおさまるとすやすやと眠れた。
しかし次の晩からは時々嫌な夢を見るようになった。竹槍で串刺しにされる夢、体が裂かれる様な痛みを感じる夢、全身が焼かれる様な夢。
『どうしたんだろう』
と彼女はここ数日の出来事を振り返って考えてみた。
ミルクが粉骨砕身の努力で一緒に闘ってくれた事、万引きした店に一緒に謝って回ってくれた事、彼氏の切磋琢磨が陶子の恋人役を演じる事を快く勧めてくれた事。それなのに自分はそれを裏切る様な事をしてしまった。
ふと剛力強の言葉が頭に浮かぶ。
『ミルクが来てから彼女のクラスの生徒が三十人から二十五人に減っていった』
と。落ち着いて考えてみるとなんとも不気味な話だ。
くのいちの言葉も頭に引っかかった。彼女が陶子を、
『誘拐しちゃおう』
と言った時、
『万が一の身柄の始末の為にミルクに百万円』
なんて話を持ちかけていた事……形容のし難い恐怖感が陶子の心に侵食してくるのを彼女は感じた。
数日後。二年の英語の授業中。
例の若い女性教師が黒板に、
『Two holes if you curse a person.』
と書いている。
「この『curse』は『呪う』という意味れす。それを踏まえて森野ミルクさん、訳してもらえるかしら?」
「は〜い」
ミルクは微笑んで立ち上がる。
「人を呪わば……あの、その……」
「あの、その、ではわかりません。これは英語の授業ではなく保健体育の授業なのれすから、はっきりと答えてくらさい」
教室からヤジが飛ぶ。
「先生もはっきりと話してくださーい。あと、これは保健体育じゃなくて英語の授業でーす」
クラスから笑い声が漏れる中、ミルクが大声で答える。
「人を呪わば穴二つで〜す!」
「正解れす。森野さんが『穴二つ』と言ったからって、男子は変な想像をしない様に」
『先生、今日もありがとう』と男子生徒を中心に拍手が起きる。
拍手が鳴り止んだ頃、一つ上の階から『うぎゃあーっ』と叫び声が聞こえる。三年生の陶子の教室だ。ミルクが先生に断りを入れて席を離れる。
『うぎゃあーっ!』という叫び声とともに目を覚ます三年生の教室の陶子。授業中に居眠りをしていたのだ。
このところ夜眠るのが怖くなっていた。
彼女は担当の先生に許可をもらい保健室に向かう。
保健室のドアを開けた時、陶子は驚きの表情を隠せなかった。中でミルクが微笑みを浮かべて待っていたのだ。
「ガーディアンデビルズの活躍はまだまだ続くのであった」
とのナレーションが流れる。
ガーディアンデビルズ 第一部 完
第二部のメインキャラクターはヒッキーこと比企新斗。格ゲーチャンピオンでゲームプログラミングもこなす彼が、ダイブの仮想現実の世界でガーディアンデビルズの面々に闘いを挑む。




