第41話 助っ人は切磋琢磨
節陶子の母親節操は単独では敵わない。ミルクの助言で切磋琢磨が陶子の手助けに同行する。しかしこれで上手くいくのか?
黒いカプセルに入っている陶子の創り出した精神世界。森に囲まれた草原。ブラウス、ベスト、スカートの制服姿の節陶子と対峙するビジネススーツ姿の母親節操。操は白いカプセルに入っており、陶子と精神世界を共有している。
「もう一回私と戦いたいなんて、身の程知らずだね、お前は。教員の免許をとりたければ好きにすればいいさ。それで、今日はミルクちゃんはどうしたんだい?」
「今日はお母さんに会わせたい人がいるの。私の新しいパートナーよ」
「お前、また変な男と付き合っているんじゃないのかい?」
木陰から切磋琢磨が現れる。琢磨も白いカプセルに入っているのだ。ワイシャツにズボンの制服姿。左手の薬指には『V Alarm』と刻まれた指輪をはめている。左前腕にはいつも通りグルグル巻きの包帯。片手に風呂敷包みを持っている。琢磨は操に丁寧にお辞儀をする。
「お母様、はじめまして。切磋琢磨と申します。陶子さんとお付き合いをさせていただいています」
「あら、はじめまして」
「これはつまらない物ですが」
そう言って琢磨は風呂敷包みを解き、中の菓子折りを差し出す。
「これはご丁寧に」
「京都のふまんじゅうです。お口に合いますかどうか」
節操、心の中で独白。
「(私の好物を事前にリサーチしておくとは、こやつデキる)」
琢磨は陶子に問いかける。
「それで今日私は何をすれば良いのでしょうか?」
「琢磨さんは私の戦うのを応援してください。お母さん、勝負よ」
陶子は懐からシャーペンを取り出し、それを高く掲げバトンの様にクルクルっと回す。するとそれは剣に変化する。
「そのシャーペン、また盗んできたアイテムかい?」
「違うわ。万引きした品物は、全部お店に返して回った。生徒指導室の先生とミルクが一緒に回ってくれた。一緒に謝ってくれた」
陶子の心の中でミルクが『えっへん。土下座のプロだからね』と言う。
「それで解決したのかい?」
「一応、お店の人にお母さんの名刺も渡しておいた」
操、苦笑いする。
「このシャーペンは琢磨さんからの誕生日プレゼント。『頑張って教員の資格を取ってね』って言ってくれた」
節操、心の中で独白。
「(彼女に誕生日にシャーペンを贈るなんて……中学生っぽいけどちょっと羨ましいなぁ。私なんか、別れたダンナから初めて貰った誕生日プレゼントはエロい下着だったっけ)」
節陶子も心の中で独白。
「( 元彼の去年の誕生日プレゼントはエッチな下着だったっけ。エラい違いだよ。もっとも琢磨さんは本当の彼氏じゃないけど)」
操は懐から万年筆を取り出し、頭の上でクルクルっと回す。万年筆は槍に変化する。
「やってごらん、陶子」
操は槍を構え陶子をにらむ。
と、琢磨が突然陶子を押し倒す。
「キャッ!」
「陶子、お母様の許しが出た。やろうぜ。例の下着、着けてきたんだろう。でへへへ」
陶子のブラウスとスカートがめくれ、下着上下が一部あらわになる。
「もしかして、下着が親子でかぶっちゃった?」
操は小声でそう言って、恥ずかしそうに片手を胸に、もう片手を股間にやる。その動作に琢磨はチラッと目をやる。
「ど、どうしたの、琢磨さん!」
「俺は彼氏なんだから毎日ヤッて当然だろう。させないと殴るぞ! ゴラァ!」
『V Alarm 』と刻まれた琢磨の指輪が赤色に輝く。
節操、小声で呟く。
「うわ、別れたダンナと同じだ」
操は陶子の上に乗っかっている琢磨に呆れて言う。
「あの、『やってごらん』ってそういう意味じゃないんだけれど」
琢磨、突然陶子から離れ正座する。
「……などという事も無く、私と陶子さんは清い交際を続けております。陶子さんは前の彼氏さんとは先程の様に苦労された様ですが」
琢磨の指輪の赤色の輝きは消える。
「私の黒歴史をバラさないで〜。っていうか、許しが出たからって母親の前でする? 普通?」
節操、小声で独白。
「私は今みたいな感じで、できちゃった婚でこの子が生まれたんだっけ」




