第39話 陶子の黒歴史、元カレ
ダイブの世界で無惨に母親に敗れた陶子。しかし彼女はミルクや強とは打ち解けてくる。
数日後の学校。昼休みが始まったところ。時計は十二時五分を指している。剛力強と弁当箱の入ったトートバッグを持ったミルクが、節陶子のいる三年の教室の入り口に立つ。
「ミルク、俺、一緒に来る意味あるのか?」
「私、三年生には面識ないから〜人見知りしちゃうのよ〜」
「ミルクって誰とでもすぐに友達になれるじゃねえか。俺なんて……」
「私だって同性の友達は少ないよ〜。人気投票もくのちゃんに負けたし〜」
「そいつは重症だ」
強とミルク、教室に入る。強がクラスのみんなに話しかける。
「ガーディアンデビルズの剛力強と森野ミルクだ。今日の昼休みの居残りは先生に代わって俺達がやるから宜しく」
強とミルクは一学年下の二年生だが、その気になれば三年生相手に物怖じする強ではない。
二人は教室にいた先生に軽くあいさつをして入れ替わる。
ミルクは教室の後方にいる節陶子を見つけて大きく手を振る。
「あっ陶子ちゃ〜ん、ヤッホ〜」
「ミルク。あ、強君も一緒なんだ」
陶子は強を見て自分のピッグテールの髪を撫でる。
「約束通りお弁当作ってきたよ〜」
「キャー嬉しー、ありがとうミルクー!」
と言ってミルクの手を握る陶子。
「陶子ちゃん、ちょっと変わったな」
と強は小声で呟く。
ミルクは机にお重を広げる。三人はお昼を食べ始める。
「それでねミルク、あたし教員の資格取ろうかと思うんだ」
「汝〜何ゆへに〜あへて貧困の道を〜歩むのか〜?」
「それって他の先生方に失礼でしょ!」
「お母さんはそれでいいって〜?」
「なんか前みたく反対しなくなってきた」
「じゃあお母さんともうまくいってるんだ〜?」
「相変わらず押し付けがましいところはあるよ。でさぁミルク、あたしやっぱりもう一度お母さんと戦いたいの。一度ぎゃふんと言わせたい」
「『ぎゃふん』って今の若い子は言わないよ〜。でもお母さんに勝ちたいなら〜今度は強君とダイブしたら〜?」
「俺で良ければ力になるぜ、陶子ちゃん。……って節先輩って呼んだ方がいいか?」
陶子、ピッグテールの髪を撫でる。
「陶子でいいよ、強君。確かに強君は頼もしいよね。君が本気出したら、あの切り裂きくのいちなんて敵じゃないでしょ? 裏アカの決闘見たよ」
強、コミカルに涙を流しながら、陶子の両肩をつかむ。陶子は頬を赤らめる。
「陶子ちゃん!……やっぱり見る人は見ていてくれるんだなぁ。でもあいつはヤバイんだ」
「何が?」
「俺が万が一あいつに勝っちまったら、何をされるかわかんねえんだよ」
「仕返しって事?」
「そうだ。来月から急に家賃が二倍になったり、下駄箱の靴にまきびしを仕込まれたり、ネットに俺の恥ずかしい写真をばら撒かれたり……」
「リベンジポルノってやつね、今流行りの。それは大変ね。よしよし」
陶子、強の頭を撫でる。強は泣いたまま。
「そっか〜。やっぱり強君とのダイブじゃダメだよね〜。女の人相手じゃ本気出さないし〜」




