第30話 ミルク、万引き犯にタックル!
魚池グループが経営するドラッグストアで看板娘としてバイトをしているミルク。そこで万引きしている生徒を見つける。「ガーディアンデビルズ」第1部のメインストーリーがここから展開していく。
次の日曜日。魚池ドラッグズ&コスメの店内。ミルクが店員として働いている。
裏アカで取り上げられていたハトムギ洗顔フォーム、BBクリーム、パウダー、リップ、トリートメント、サプリ、ストレートパーマブラシは一つのコーナーにまとめられていて、人が集まっている。
ミルクが棚の商品を並べていると、魚池の女学生に声をかけられる。
「あ、ミルクちゃん、裏アカの放送見たよ」
「それで来てくれたんだ〜。ありがと〜」
「ミルクちゃんって本当に乳酸菌ドバドバ飲んでいるの?」
「お口や汗の匂いが〜大分なくなる気はするよ〜。後は虫歯になりにくいかな〜。気のせいか風邪もひかないよ〜。人によってかもしれないけどね〜」
「ミルクちゃんが飲んでるなら、あたしも試してみたい」
「毎度ありがと〜。十パーセントオフのクーポン使ってね〜」
ミルクは今度は別の女生徒に話しかけられる。
「ミルク、ちょっと」
「は〜い」
「言いにくいんだけど……その……あそこの痒みに効く薬ある?」
「それは薬剤師さんがいないと販売出来ない薬かもしれないから〜平日の時間帯をチェックして相談に来てくれるかな〜?」
「分かった。ありがとな」
「お役に立てなくてごめんね〜」
カラーコンタクトの商品の前で一人の女性がまごついている。それを見てミルクが声をかける。
「カラコンをお探しですか〜?」
「あ、はい」
「ルビー色のカラコンですね〜。私もつけているんですよ〜」
ミルク、自分の目を大きく開いて女性に見せる。コンタクト無しの天然の赤い瞳。
「あはは。欧米のジョークですね」
「カラーコンタクトは初めてですか〜?」
「そうなんです。どれを選んだらいいか分からなくて」
「コンタクトにはサイズがありますからね〜。眼科で目玉の大きさ、カーブの具合を測ってもらわないと、後で目のトラブルを起こしますよ〜」
「でも眼科に行くのってなんか面倒で」
それを聞いてミルクはポケットからカードを一枚取り出す。
「そこで、ジャーン! 魚池眼科クリニックファストパス〜! これがあればすぐそこの眼科で待ち時間無しで受診できるよ〜!」
「今行っても大丈夫なの?」
「今がいいんですね〜。保険証は持っていますか〜?」
「持っているよ」
女性は保険証を取り出す。ミルク、携帯で電話する。
「あ、ミルクです。今からコンタクトの初診大丈夫ですか?……はい、ええ、お名前は……はい、ファストパス持って行きますので」
てきぱきと通話を終えてにっこりと微笑むミルク。
「今から大丈夫ですよ〜」
「ありがとう」
「眼科の診察券見せれば〜うちのコンタクトでポイント三倍だからヨロシクお願いしま〜す」
女性、クリニックに向かう。
『妻が喜ぶ男の活力』と書かれたポップを飾りつけている時、琢磨が店に現れ、ミルクに声を掛ける。
「マムシびんびんドリンクをひと瓶買いたいんだけど」
「あ、琢磨さん、来てくれたんだ〜。琢磨さんってあたしにはそういう事してくれた事ないくせに、何に使うの〜?」
「ミルクちゃんに飲ませる。そのあと空き瓶を変な事に使う」
「それじゃあ二人で一ダース豪快に一気飲みして〜一緒に盛り上がろうよ〜」
「相変わらずノリがいいよね、ミルクちゃんは」
ミルクは琢磨の言葉には返答せず、別の方を見ている。
「ミルクちゃん、どうしたの?」
ミルクの視線の先に一人の女性が見える。
その女性は裏アカで紹介された幅十センチくらいの横長のストレートパーマブラシをトートバッグに入れて店から出ようとしている。ミルクがその後を追う。
「待ちなさい」
と店の外でミルクが声をかけ、女性の腕をつかむ。
「放せ、ミルク!」
女性はミルクの手を振り払い駆け出す。ミルクの表情が豹変する。
「Shit! (くそっ!)」
ミルクはそう叫んで女性を追いかけタックルする。二人は倒れ込む。
そこに琢磨が慌てて駆け付ける。
「何があった、ミルクちゃん!」
「Shoplifting! Shoplifting! (万引きよ、万引き!) 」
興奮したミルクは思わず英語で叫んでいる。いつもとは別人の様な低い声。そこに店員も駆け付ける。
「Have her wrist amputated! (手首を斬り落とせ!)」
と叫ぶミルク。
女性はなおも暴れているため、仕方なく琢磨は得意の包帯で彼女を縛り上げる。ミルクを抱きしめてなだめようとする琢磨。
「あいたた。あたしは何もしてねえだろ!」
と声をあげる縛られた女性。しかし駆けつけた店員が、
「バッグの中を見せてもらえますか。それと店内の防犯カメラの映像も確認させていただきます」
と言うと女性は観念した様子。




