第28話 くのいち、化粧をして校長に突撃!
化粧姿を他の教師に注意されても、「でも校長先生は問題無いって言ってました」と返せば教師も反論はできないはず。くのいちは勝負に出る!
場面変わり、校長室の前。くのいちが軽く咳払いしてから『校長―、入るよー』と声を上げる。
パソコンの画面。校長室の中。大きな机を前に座っている割井校長とそれに向かい合って立っているくのいち。校長の頭の禿げている部分は大分小さくなってきている。
部屋の隅では監視カメラが二人の様子を撮影している。校長とくのいちの会話はそこを経由して裏アカウントでオンライン中継されているのだ。
「校長先生、おはようございます」
「おはよう、久野君。今日は何の用だね?」
「特に用という訳ではないんですけど」
くのいち、大きな机の上に腰を乗せ校長に近づく。
「今日のあたし、どうですか?」
「どうって……今日も元気そうだな」
くのいち、顔を割井校長に近づける。
「先生、女の子ってちょっとした変化を男の人に気づいて欲しいものなんですよ」
校長、小言で独白。
「(何だこの子は。私に気でもあるのか? しかし私は校長。動揺してはいかん)」
校長は努めてさりげなくくのいちに言う。
「今日も綺麗な肌をしているね」
「わかります? 今日は紫外線クリームを塗ってきたんです。お肌がシミになるといけませんので。あたし、唇も紫外線に弱いのでケアしているんです。問題ありませんよね?」
「もちろんだとも。今日は髪もなんかキラキラしているね。君にとても似合っているよ」
くのいち、はにかんで校長を軽く肘でつつく。
「ヤダ、校長。あんたに褒められても嬉しくないわよ」
「校長をあんた呼ばわりするのはお前くらいだぞ」
「あ、ごめんなさーい」
「今日の君はカドが取れたみたいでいいじゃないか。これからも勉学に励んでくれ」
「わかりました。失礼しまーす」
くのいち、校長室から退室する。
魚池高校裏アカウントの画面にはくのいちの顔のアップが映し出され、クリーム、パウダー、リップ、眉、トリートメントなどの説明が書かれている。チョコが解説をする。
「皆さん、ご覧いただけたでしょうか? 先程使用したB Bクリーム、テカリ防止のパウダー、ナチュラルカラーのリップ、眉の微妙な調整、ヘアトリートメント、これらは学校での使用に全く問題が無い事がたった今証明されました! ちなみに我が校は今のところ三つ編み、お団子、ハーフアップはオッケーです。さあ再び校長室の映像をご覧下さい」




