第27話 化粧品の宣伝でしょでしょ
強とくのいちのアウトレットデートの話は後に譲るとして、次はチョコとミルクが裏アカ放送で校則の限界に挑む! 高校生のお化粧は魚池高校生ではどこまで許されるのか?
ガーディアンデビルズの部室。ネット放送を始める時間。ハンディカムで撮影している琢磨の前にはチョコとミルク。チョコが元気良く声を上げる。
「魚池高校裏アカウントにようこそ! 今日のテーマはズバリ、『学校にお化粧していってもいいの?』でお送りします。ねぇミルク、女子高生がお化粧をしようとする時、ぶち当たる壁は何かな?」
ミルクはカメラを前に無表情。それを見てチョコがミルクの頭をバットでコツンと叩く。ミルクははっと我に返り、懐からカンペを取り出し読み上げる。
「中学の時は〜お化粧なんてしなかったから〜やり方が分からな〜い」
完全に棒読みである。
「そうですよね。他には?」
チョコが再びコツンと叩きミルクがカンペを読む。
「お小遣いに限りがあるから〜高い化粧品は買えな〜い」
と、またも棒読み。
「そこも大事なポイントです。しかし私達女子高生がお化粧をする上で最大の問題は何だと思いますか?」
ミルクは必死に考える振りをするが答えが出ない。
「ミルク、考えなくていいからちゃんと台本を読んで」
「せっかくお化粧していっても〜、先生にダメ出しを喰らう〜」
「そう。私達には校則という拘束があるの。今日はそこを突破するためのポイントを解説します。まずはゲストを紹介しましょう。先週のガーディアンデビルズの人気投票で、圧倒的な女性票を獲得して見事一位に輝いた久野一恵さんです」
くのいちが登場する。トレードマークの手裏剣は付けていない。少しはにかんでいる。くのいちが座った椅子の前には大きなミラースタンド。
「くのいちさん、女生徒の圧倒的な支持を集めての人気投票一位、改めてご感想を」
くのいち、カメラ目線で笑顔をつくる。
「あたしに投票してくれたみんな、ありがと。恋愛相談とかは苦手だけど、治安を乱す様な奴ならスッパリ退治できるから、気軽に声かけてね。
あと、それから男子。女のあたしにいじめの相談なんてカッコ悪い、なんて思っていない? そんな事ぜ〜んぜんないから。素直な男の子って、あたし良いと思うなぁ」
「恋愛相談は苦手、って言っているけど、くのいちはミルクが転校してきたばっかの時相談に乗ってあげて、お陰でミルクは彼氏をゲットできたって聞いたよ」
ミルクはにっこりと微笑んでうなづく。
「ミルクは放っといてもどうにでもなったんじゃないかな? あたし、彼氏いないのに、なんで人の世話焼いてんだろ、バカでしょ?」
「さて今日は、くのいちにお化粧をしちゃうよ。ところでくのいち、今朝は洗顔はしてきた?」
「いつも通りハトムギ洗顔フォームで」
パソコンの画面。くのいちとチョコが会話している画面の下にハトムギ洗顔フォームの箱が表示される。これはコスメのプロモーションらしい。
「くのいちって肌キレイだよね。ニキビケアとかしてるの?」
「たまにニキビ予防フォームを使う。あと、ビタミンB2、B6のサプリを飲む事もある」
パソコンの画面の下方には更にニキビ予防洗顔フォームとビタミンB2 B6 のサプリの箱が表示される。更にミルクが口を挟む。
「私は体や口の臭いの予防に〜乳酸菌をドバドバ飲むよ〜。お通じのニオイも〜あまりしなくなるよ〜」
携帯の画面の下方には更に乳酸菌の入った「ビオスリー」が表示される。
ミルクはくのいちの頭にシャワーキャップ、首にドレープを装着する。チョコは化粧品を手にして説明する。
「今日はお化粧入門編として、化粧水、BBクリーム、パウダーを使います。オマケに眉とリップにもちょっとだけ手を加えまーす。化粧水はくのいちお気に入りのハトムギ入り。BB クリームは我らが魚池大学ラボと調剤薬局チェーンが共同開発した優れモノ。パウダーはミネラル入りのを使います」
ミルクは、ピチャピチャとくのいちに化粧水を塗る。チョコが話を続ける。
「次はBB クリームを塗っていきまーす。シミやニキビを隠して肌をキレイに見せるクリームなんだけど、くのいちには必要ないかな? 少し色白になりまーす。紫外線もカットしまーす」
画面下にBB クリームの箱。『魚池ラボ開発』の文字。
ミルクはクリームを手のひらに取り、それをくのいちの額、鼻頭、頬につけゆっくり伸ばしていく。肌がやや色白になる。
「おでこ、鼻、ほっぺのテカリを取るためにミネラル入りパウダーをポンポンしまーす。最後に眉を少し描いて、ナチュラルカラーのリップもつけまーす」
ミルクはチョコの指示のままに作業を続ける。くのいちは眉尻が下がり、唇も少し色がつき、カワイイ度がアップする。肌もつやつやしている。
「はい、完成です。あ、髪も軽くトリートメントしまーす」
ミルク、くのいちのシャワーキャップとピン留めを外し、髪に霧吹きをかけ、トリートメントを薄く伸ばして着ける。
「このトリートメントは洗い流す必要のないやつでーす。ブローには秘密兵器を使いまーす」
ミルク、横幅が十センチくらいある電気コード付きの大きなブラシを取り出す。チョコは完全に喋り担当になっている。
「これは、ストレートパーマ機能付きのブラシでーす。温度は百八十度にセットしまーす」
ミルク、くのいちの髪をゆっくりブローする。くのいちの髪がサラサラ、キラキラになる。
「せっかくだからついでにブレイドのハーフアップもやっちゃおうか?」
「ブレイド? ハーフアップって事は三つ編みね」
ミルクは手際良くくのいちの髪に、後ろ髪を残しながら細めの三つ編みを左右に作り、それを後ろで束ねてヘアゴムで固定する。最後にくのいちの首から掛かったドレープを外す。自分の顔を鏡で見つめ、ぽーっとするくのいち。チョコが問いかける。
「どうかな、くのいち?」
「ガーディアンデビルズのリーダーとしてハッタリが効かなくなっちゃうかなぁ。でも、あたし少しは可愛くなった?」
「私が保証するよ」
とチョコ。
くのいちは椅子から立ち上がる。
「じゃああたし、校長に会ってくるから」
「いってらっしゃーい」
「いってらっしゃ〜い」
チョコとミルクが見送る。くのいち、退室する。
「続いて男の子にもお化粧しちゃいまーす」




