第240話 ワードローブが尽きた③
余談であるが、筆者は以前、親戚の幼稚園児の女の子に童話『白雪姫』を読んであげた事があった。その後、その子は『青いリンゴは毒リンゴ』としばらく信じ込んでいた。筆者はそんな事一言も言っていないのであるが、絵本の挿絵のインパクトがあったのか。
(ミルクがいい事を言った。しかしくのいちを止める気はゼロ)
話を本筋に戻す。
くのいちとのLINEを終えて下校中の陶子。商店街を歩いている。そこに背後から走って来た強が声をかける。
「よう陶子。追いついたぞ」
「強。急にあたしにLINEしてきて何の用事?」
「ちょっと今から付き合えないか?」
「付き合え? もしかして男女の付き合い?」
「いや、ちょっとアパレル店で買い物をして欲しいんだが……」
「あたし、アパレルにはうるさいわよ。そんじょそこらの店じゃ……」
「お前の生命に関わる事なんだ」
「生命に関わる? あんたまさかあたしの体の中に新たな命を植え付けるつもりなの?」
陶子は強の一学年上の3年生。ジョークも大人びている。ここで舐められてはいけないと思う強。
「そんな事言ってると本当に犯すぞ、陶子」
これで少しはビビるだろうと思った強。ところが、
「いいよ、犯して」
と返す陶子。
強があっけに取られていると、
「でも後でくのいちにチクるかもよ」
ときた。
さすが伝説の弁護士節操を母親にもつ節陶子である。『ああ言えばこう切り返す』腕前は、強は敵わない。




