第239話 ワードローブが尽きた②
くのいちの頭の上に『がーん』という文字が現れる。
失意の内にLINEを終らせるくのいち。
陶子としては、『くのいちならもっとオシャレな服は沢山持っているはず』と思い、たまたま間違って同じ服を着ていたくのいちに冗談っぽく指摘するつもりだったのかもしれない。
しかしくのいちは、タイミング悪く服のストックが尽きていた。それをオシャレな金満JKの陶子に指摘されてしまった。
最近くのいちはネコミミが似合うヘソ出しミニスカなどに散財して、まともな服のラインナップがおろそかになっていたのだ。
「(あの万引き女、あたしがワードローブが尽きているのを承知で敢えて誘ってきやがった。今日はこれから実家で忍術の訓練がある。今から新しい服を買う暇も無い。かくなる上は……)」
髪飾りの手裏剣を外し、真ん中辺りをカチリと押す。刃物モードだ。
「あいつさえいなくなれば、オシャレな服を一番持っているのはあたしになるはず。ここはやはり頃す! 氏ね! 陶子! ……あれ、上手く漢字が変換できない。だったら欽ちゃんの火葬大賞で真っ赤に燃え尽きろ! いや、毒リンゴで葬るという手もあるわ。昔話だから著作権は大丈夫そうだし」
こんな理由で他者の命を奪う人間などいるのだろうか? いや、しかしくのいちは『カラダは大人、おつむはようちえん』という名探偵を自称してはばからない。
名探偵が登場する話では毎週の様に殺人が起きるが、その動機は時として首をかしげたくなる物もある。話が謎解きに重点を置く余り、動機がお留守になってしまうのだ。
つまりくのいちが、動機の乏しいとんでもない犯罪を犯したとしても少しも不思議ではないのだ!(すみません。ちょっとムリがありました)。
ガーディアンデビルズの部室で一人『頃すっ!』とか大声を挙げるくのいち。それを部室の隣の給湯室で聴いていた人物がいた。主人公の剛力強である。
「(なんかよく分からんが、陶子ちゃんがピンチみたいだ。ここは主人公として何とかしねえと……)」




