第237話 スカウトされたい②
くのいちの姿を見るなり、顔を引きつらせるスカウトマン。
彼は早足でそそくさと立ち去る。途中で何度かこちらを振り返っていた。『追われるのでは』と心配でもしている様だ。
「くのちゃん、助かったよ〜。なんかしつこそうな人だったから〜」
と笑顔のミルク。
「あのスカウトマン、くのいちの事を婦人警官と勘違いしていたのだ」
とつい本当の事を言ってしまうくう子。
くのいちの頭の上に『がーん』という文字が入る。
「(スカウトマンに声を掛けられるはずが、婦警さんと間違われた)」
「(でもあんなチャラい男に声掛けられなくて、こっちこそ良かった……と思いたいわ)」
「(あの男、ちょっと強に似ていたなぁ。あいつも将来あんなチャラ男になったら困る)」
などと悶々として、くのいちの渋谷詣は終わったのであった。
翌日のガーディアンデビルズの部室。くのいちは強を呼び止める。
「強、ちょっと話があるんだけど」
「お前、昨日はミルクとくう子で渋谷に行ったんだってな」
「それで気がついたの。あんたはこれから、私服はチャラいのは禁止ね」
話の流れがつかめない強。
「なんでそうなるんだよ? プライベートで俺が何を着ようと勝手だろ? お前は婦人警官かよ?」
「あーっ、今言ってはならない事を言ったーっ!」
険悪な2人を見て、ミルクが割って入る。
「まぁまぁ強く〜ん。女の子には色々あるから〜」
そう言って強に耳打ちするミルク。
しばらくミルクの話を聴いた後、強は穏やかな表情でくのいちに言う。
「くのいち、世の中色々あるが、細かい事は気にするな。いつかお前の事を正しく理解してくれる人が必ず現れる」
強のこのセリフに冷静さを取り戻すくのいち。
「(そうだわ。私も人に正しく理解される様に努力しなくちゃ)」
さすがガーディアンデビルズの癒し担当のミルクである。
首尾良くこの場を丸く収めた。
後日のガーディアンデビルズの部室。入り口のドアには『立ち入り禁止』の貼り紙。以前この貼り紙を怠ったくのいちは、コンドームをフランクフルトに被せる特訓をしているところを強に見られた。同じ過ちは繰り返したくない。
(175センチを超える身長でこれだと、夜に出くわしたらちょっと怖い。)
くのいちは『婦警さんっぽくないファッション』の研究に取り組んでいたのだ。なんとか渋谷でスカウトマンに声を掛けられようと目論む彼女。
しかし『くのちゃん凄いよ〜』とかいうミルクの無責任な賞賛は、くのいちをさらなる迷宮にいざなうのであった。
おしまい (その後くのいちはめでたく、ちゅくばエクスプレス終点の秋葉原で声を掛けられたのであった)




