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ガーディアンデビルズ〜学園治安維持の会〜  作者: トミロン
第5部おまけ 風邪で寝ているくのいちに強が襲いかかる
234/243

第234話 誰かが体の上に乗っかってくる夢

ミルクは人に悪夢を見せる能力があるらしい。

「ご馳走様」

「ご馳走様」

強は食器を下げ、洗い物を済ます。

「やっぱ彩子って料理が得意なんだね」

「お前も昼ごはん一緒に食べたろ? 美味かったよな。お前が急に帰ったから、俺の母親は残念がってたぞ」

「あの後、夕ごはんはどうしたの?」

「彩子ちゃんがカレーやカキフライを作ってくれたぞ」

「夕ご飯の後は?」

「俺は日課の筋トレやランニングをしたりで」

「それから?」

「それからって……汗を流して十時には消灯とした」

「それだけ?」

「夜はぐっすり寝たぞ」

「あんた何か、はしょってない?」

「何が言いたいんだよ、くのいち」


 くのいちはテーブルから離れ再びベッドに横たわる。

「ねぇ強」

「何だよ」

くのいちは掛け布団を頭から被って、顔を見せない様にして言う。

「同じ事して」

「同じ事?」

「あんたが彩子にしたのと同じ事を、あたしにもしてって言ってるの!」

挿絵(By みてみん)


「お前、それって」

「何よ。まさかあなたビビってんの?」

「よし分かった」

固唾を飲んで次の展開に備えるくのいち。


「かくものはあるか?」

「(ベッドにいる女を前にして、かくものって何よ! 自分で何とかして! いや待て。落ち着け、あたし。もしかして強は急に背中が痒くなって孫の手を探しているんじゃ……でもうちには孫の手なんて無いし。お風呂場に背中洗い用のブラシはあるけど使い古しちゃってるし……)」


 色々考えた挙句、くのいちは返事をする。

「必要なら手を貸すわよ」

「いや、自分で何とかなりそうだ」

 くのいちは掛け布団を頭から被ったまま、強のがさごそする音を聞いている。


「……つまりコークスクリューコースターが輪っかのてっぺんで落っこちずにくるんと回転する為には、てっぺんでの遠心力が重力を上回る必要がある。(V2乗/R) >Gだな。ここで輪っかの下側での初速度を考えてみよう。輪っかのてっぺんまでコースターが登る時、運動エネルギーを減らして位置エネルギーに換わる。輪っかの半径をr、コースターの初速度をVoとすると、得られる位置エネルギーはmG×2r……」

挿絵(By みてみん)

 紙とボールペンで輪っかと動く物体の図を描く強。


「何の話をしてんのよ!」

「俺と彩子がしたのと同じ事をしているんだが」

「あんた彩子と二人で物理の勉強をしたの?」


 雑念を取り払い清い心を保つ必要に迫られた時、かつて強は掛け算の九九を唱えていたが、次第に効果の薄れを自覚してきた彼は、より高度な詠唱を求めていた。そして先日、彩子から物理の遠心力の呪文を教わり、その詠唱をマスターしたのだ!


「くのいち、お前大分元気が出てきたみたいじゃないか。良かった。今晩は風呂にでも浸かってゆっくり休めよ」

「風呂に入れって……あんたまさか彩子と一緒にお風呂に入ったの!」

挿絵(By みてみん)


「俺の母親もずっといたんだけど」

「嘘、嘘! あたしも一緒に入る!」


 脱衣所や洗濯機のあるドアの入り口に立つ強。

「入浴したければこの俺を倒してから行け!」

「ひ、卑怯よ強。あたしが風邪をひいて体力が落ちているからって、腕力で自分の思い通りにしようなんて!」

「ならば仕方ない。洗濯機に溜まっているお前の衣類を俺が一つ一つ手洗いしてやる!」

挿絵(By みてみん)


「あんた実物よりもあたしの着ていた物に興味があるのね! 変態! 夢とは大違いだわ」

「大違いって、お前どんな夢を見てたんだ?」

「夢でも変態だったけど」

「ミルクが言ってたぞ。『夢は願望の現れ』だって」


 それを聞いて、くのいちが急にシリアスな顔つきになる。

「ミルクが言っていた? だったら悪夢も願望の現れなの?」

 くのいちのこの唐突な言葉を噛み締める強。もしかして彼女はこの前のヒッキーとのダイブでのミルクとの出来事を思い出しているのか?

「……確かに願望だけじゃないよな。不安や気になっていた事が夢に出る事はあるもんな」

「そうよ。あれが願望のはずがない」


「どうした、そんな顔して。怖い夢でも思い出したのか?」

「そうかも」

 強はくのいちの掛け布団をめくって頭をなでなでしてあげる。

「強はあたしの悪夢から必死に助けようとしてくれたよね」

「ダイブの仮想現実の事は忘れろ。あれは普通の悪夢じゃない」

「普通の悪夢って何よ」


「悪夢のよくあるパターンとしては、『人が急に体の上に乗っかってくる』なんてのがあるよな」

「……それは悪夢だったけど悪夢じゃなかった。あの時母親なんか呼ばなきゃ良かった」

「何だよそれ」

 

 そんな話をしている内に、先程食べた炸麺のお陰で急にお腹が動き出したくのいち。残念な事にくのいちのマンションはユニットバス。この後一緒に入浴では何かと都合が悪い。


「くっ……今日のところは大人しく一人で入浴して十分に睡眠をとる事にしてあげるわ。感謝なさい。でも一週間後にはリベンジマッチを申し込むわ。覚悟しておくことね! 負けないんだからぁ」

「ノリツッコミマスターがまたツンデレに進出してきたな」


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