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ガーディアンデビルズ〜学園治安維持の会〜  作者: トミロン
第5部おまけ 風邪で寝ているくのいちに強が襲いかかる
232/243

第232話 ここより第5部おまけ くのいち「鬼の霍乱(かくらん)」

ここからは第5部の後日談。ほのぼのとした日常が展開されます。読んでいただけると嬉しいです。毎回知恵を振り絞って書いています。

 くのいちは風邪をひいて学校を休んでいた。松戸彩子の妊娠騒動はデマだと分かり、ほっとしたところで今までの騒動が心身に響き、珍しく体調を崩したのだ。


「こういう時はいっぱい寝て治すのが一番」

 と布団にくるまっているが、彼女は実家近くのマンションに一人暮らし。何となく寂しい感じはする。早く元気になってみんなとおしゃべりしたい。ヒッキーを怒らせない程度にいじめたい。


 いつの間にか眠っていた彼女。ふと玄関の『ピンポーン』という音に目を覚まされる。ドアを開けると強がいる。


「おうくのいち、授業でやったプリントを届けに来たぞ」

「あ、来てくれたんだ強。中に入って」

 強は玄関から上がる。

「きゃっ!」

 強は玄関先でパジャマ姿のくのいちに抱きつき、そのまま押し倒す。

挿絵(By みてみん)


「ちょっと強、何やってるの。やめて!」

「玄関でつまずいちまった。これは不可抗力だ」

「病気で寝ている女を押し倒すなんて最低よ。早く帰って!」

「今日の給食はフランクフルトなんだ」

「それがどうかしたの!」

「お前が食べ終わるまでみんなは昼休みに入れないんだ。早く食べろ」


「あ、あたしフランクフルトを食べるとおかしくなっちゃうのにぃ!」

「だまっておとなしく口に入れろ」

 くのいちの上にのしかかり、フランクフルトを口に押し込もうとする強。

「誰か来てー」

「へっへっへっ。こんな時間に誰も来やしないさ」

「黒猫でも飛脚でもいいから来てー!」

 何を言っているのだ、くのいちは。


「ごめんくださーい、宅配便でーす」

 突然飛脚が玄関に現れる。

「(うわ、本当に来た)」

 強に押し倒されているくのいちが応対する。

挿絵(By みてみん)

「あ、お世話様です。どこにサインをすればいいですか?」

 と澄ました口調のくのいち。

「それよりお嬢さん、大丈夫なんですか?」

 と心配そうな飛脚。

 くのいちは押し倒されたままの姿勢でボールペンを受け取り、書類にサインをする。

「品物は床に置いて下さい」

「わ、分かりました。では失礼します、お嬢さん」

 書類を受け取って飛脚は去って行く。


「ねえ強、いい加減にして。やめないと警察を呼ぶわよ」

「俺が何かした証拠でもあるのか? 呼んでみろよ」

 くのいちは押し倒された体勢のままで叫ぶ。

「おまわりさーん!」


 玄関先に警官が現れる。

「私、ちゅくば署から来ました。お嬢さん、大丈夫ですか!」

 くのいちは押し倒されたままで落ち着いて答える。

「あ、お巡りさん。パトロールご苦労様です。何でもありませんから」

「何でもないって、あなた大変な事になっているじゃありませんか!」

「これはパトロール中のおまわりさんにねぎらいの声をおかけしただけです。ご迷惑かけて申し訳ありません」

 くのいちは押し倒されたまま、四本指で敬礼のポーズを取る。


「紛らわしい事はしないで下さいね」

 そう言って警官は去って行く。


「いい加減俺の思い通りになれ、くのいち!」

 そう言いながらフランクフルトをグイグイと口に押し付ける強。

「分かったわ。あんたの好きにしていいけど乱暴はやめて。でもその前に……お湯をいただかせて下さい」

 なぜフランクフルトを食べる前に入浴が必要なのか、作者でさえ不明。

「分かった。特別に入浴を許可してやる」


 くのいちを立たせて風呂場に向かう二人。強に肩を抱かれ強引に脱衣所に入る。

「まさか、一緒に入るの?」

「当たり前だろう。ウブなネンネじゃあるまいし」

「それだけは堪忍して。じゃないとお母さんを呼ぶわよ」

「お前が呼ぶと本当に来そうだからやめろ」

「おかあさーん!」

 と叫ぶくのいち。すると、


「一恵、起きなさいよ、一恵」

 と天から声とともにまぶしい光。彼女は思わず目をつぶる。


 暫くして目を開けると、目の前にはスーツ姿のくのいちの母親。隣にお手伝い兼秘書の若い女性を連れている。

挿絵(By みてみん)

 くのいち自身はパジャマ姿でベットで横たわっている。夢を見ていたのだ。


「一恵、風邪の具合はどうだい?」

「お母さん。あれ私、夢を見ていたのね。強は?」

「俺ならここにいるぞ」

 と強が母親の背後から現れる。手には調理用の太いフランクフルトのパッケージを持っている。直径は六センチくらいとかなり太め。これは正夢か。いや、夢よりパワーアップされている。


「そ、そのフランクフルトであたしに何をするつもりなの、強。そんなの入らないから! 絶対無理!」

「やってみなくちゃ分からないだろう?」

「一恵、せっかく強君がフランクフルトを用意してくれたんだ。素直に受け入れな」

「ダメだったら! お母さんも見てるのよ!」


「一恵、今日はわざわざ強君がお見舞いに来てくれたんだよ」

「何か軽いものでも作ろうと思って食材を用意してきたんだが、お前フランクフルト嫌いだったのか」


「強が美味しく料理してくれるなら食べる」

「いきなりハードル上げるなよ」

「じゃあ私は先に帰るから、強君ともうちょっとゆっくりしてな」

 そう言って母親は帰って行く。


元気な人が思いがけず病気になる事を鬼の霍乱と言うらしい。現代では死語か。

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