第23話 エッチな考えは捨てろ!
ついに一戦交える事となってしまった強とくのいち。果たして一線を越えられるのか?(笑)
琢磨とミルク、十セットほどある室内の机と椅子を隅に動かし始める。それに気付かず強が心の中で独白。
「(くのいちが俺とエッチな事をしたがってるのか? いかん。邪念を捨てろ、俺。冷静になるんだ。……そうだ、掛け算だ! エッチな考えを抑えるには九九が一番。俺、九九は得意だった筈だ。よし行くぞ! 7×1=7 7×2=14 7×3= 21 7×4=28 7×5=……えーっといくつだっけ……いかん、7の段を選んだのは失敗だった。難し過ぎる。これじゃあ邪念が収まらねぇ。……そうだ、くのいちの事は忘れてくのいちのお母さんの事を思い出そう!)」
強はこの前、くのいちの実家に家賃を払いに行った時の事を思い出す。くのいちの実家は土地持ちで方々に家や土地を貸しているのだ。
少し暑い日の午後。『久野』の表札が掛かった立派な門構えの和風のお屋敷の前で強は自転車を停めて呼びかける。
「ごめんくださーい」
間もなく玄関からくのいちの母親が顔を出す。三十代半ばに見える長身でスレンダーな美しい女性。
「はーい。あら剛力君、いらっしゃい」
彼女は薄手の白い半袖のTシャツにジーンズというラフな格好。
「今月の家賃払いに来ました」
と強が言うと彼女は、
「あら、ご苦労様。せっかくだから、ちょっと上がっていかない?」
と笑顔で言う。
「あ、いえ、でも……」
「いいから、いいから」
くのいちの母親は強の手をグイグイ引っ張って家に入れる。
二人は和室の低いテーブルを挟んで座布団に座り向き合う。メイド服を着た強と同い年くらいのお手伝いさんが麦茶を持ってくる。強に会釈をして家賃の領収書を渡し、部屋に残り隅に立っている。
強は改めてくのいちの母親を見る。白いTシャツからブラジャーが透けて、ちょっとなまめかしい。その視線に気づいて彼女が喉の辺りを両手で押さえながら言う。
「あら、ごめんなさいね、こんな格好で。今日は暑いでしょう。私、エアコン好きじゃないのよ。剛力君も暑かったらズボン脱いだら?」
部屋の隅に立っていた若いお手伝いさんが強にズボンを脱ぐ様なジェスチャーを見せる。
強は赤面する。
「えっ、それはちょっと……」
「あはは、冗談よ。でも赤くなった君もカワイイね」
回想シーン終わり。強、まぶたを強く閉じて首を左右に振る。
「(いかん、いかん。全く邪念が消えない!)」
強の心の中でユニホーム姿のチョコが、
『強って守備範囲広いね』
とツッコミを入れる。
強再び心の中で独白。
「(よーし、これならどうだ、くのいちのおじいちゃん)」
強の回想シーンその二。ある夏の日の午後。くのいちの実家の玄関の前。強がくのいちの祖父に家賃の入った封筒を渡している。
「今月分です。お確かめ下さい」
くのいちの祖父は封筒の中のお札を数える。そして強に領収書を渡す。
「はい、ご苦労さん、剛力君。ところで君はいい体格をしているねぇ。何かスポーツはやっているのかい?」
「はい、舞踊を少々」
「踊りかね」
くのいちの祖父はそう言うと、強の尻や胸、ふとももを触る。思いがけない行動に思わず声が出る強。
「あっ……」
「なるほど、いい筋肉をしておる。しっかり鍛えておるのう」
「恐れ入ります」
そう言って強は少し赤くなる。
回想シーン終わり。強は小声でつぶやく。
「よし、これなら余りエッチな気分にならない!」
心の中でチョコが『余り?』とツッコミを入れる。
彼女は強とくのいちの撮影を続けながら裏アカライブの視聴参加者を募っている。




