表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガーディアンデビルズ〜学園治安維持の会〜  作者: トミロン
第5部 彩子、くのいちに命を狙われる編
224/243

第224話 強の家に強行突入するくのいち

強の家に向かうタクシーの中で、一人悶々とするくのいち

「お泊まり用のコスメセットを切らせていた! 寝巻もちょっと着古しちゃってる! いざとなったら近くのコンビニでゲットするしかないわね。強の家の近くにはあるかしら? ネットで調べなくちゃ。 やっぱりデパートでおしゃれなネグリジェを買っておくんだったわ」

 いや、それは違うぞ、くのいち。若いんだから薄着ならなんでも良いのだ!


「ミルクは0.02ミリのアレをいつも持っているけど、あたしはどうすればいいのよーっ! あ、あとあっちの方は大丈夫かしら」

何だよあっちって。


「下着の心配はいいけど、肝心の服はどうしよう。 やっぱり強が好きそうなやつを選ばないと。翌日は今日とは違った服でイメチェンした方がいいわよね」


 ありもしない状況を五手、六手先まで読むくのいち。将棋の藤井聡太名人も顔負けである。これなら強の玉を奪えるのではないか?


 ……などとすったもんだの挙句、タクシーを呼んで乗り込み、今は強の家に急行しているくのいちなのであった。


「お嬢ちゃん、ここでいいのかい?」

「ありがとうございます、運転手さん。お釣りは取っておいて下さい」

 強の家に到着するくのいち。強の母親からのLINEには、

『私は買い物に出かけるから、お嬢ちゃんは勝手に上がっていてね』

 との文字。


 そーっと玄関のドアを開け、まさに忍び足で強の家に侵入するくのいち。廊下を音もなく進み、(ふすま)の前に来る。部屋の中からは強と彩子と思われる声が漏れ聞こえる。


「全体を撫で回すようにゆっくりとやってね。……ほら、豆が開いてきたでしょ? 後はじっくりしずくがしたたり落ちるのを待つの」


挿絵(By みてみん)


「いい匂いだな」

「ちょっと強君、顔近づけ過ぎ」

「ごめん彩子」

「ここで一気に熱い液体を注ぎ込むのよ!」

「お前、入れるの上手いな」


「(豆が開いてきた? しずくがしたたり落ちる?)」

 賢明な読者諸氏にはこれが何をしているのかは容易に察しがつくのであろうが、『彩子が強の家に泊まろうとしている』とテンパっているくのいちには、もうそっち方面にしか想像が回らない。


「その豆を開いたり入れたりするの、ちょっと待ったーっ!」

挿絵(By みてみん)

 そう叫んでふすまを『パンっ』と開けるくのいち。

「おいくのいち、お前何でここに?」

「あんた達、高校生の分際でナニをしてるのよ!」


「キリマンじゃろ」

挿絵(By みてみん)

 と彩子。

「キリマン? あたしの知らない技で強に何をするつもり!」

「これからコーヒーを飲むところなんだが、お前こそ、なにテンパってるんだ?」


 自分がとんでもない勘違いをしていた事にようやく気付くくのいち。どうしたらコーヒーの『キリマンジャロ』をおじいさん言葉の『キリマンじゃろ』と聞き違え、『キリマン』を何かイケナイ技と想像してしまうのか。たくまし過ぎる。


 そう言えば、以前ヒッキーの精神世界にダイブした時、男女の合体技『つばめ返し』を剣術の技と勘違いして、強に『二人で合体技を完成させよう! どんな姿勢を取ったらいいの? あたし何でも協力するから!』と意図せずに大ボケをかましていた。


 あのダイブの時はくのいちは『エクスタシー』と『カタルシス』という言葉を混同していた。そして強に『エクスタシーを得るにはどうしたら強? 協力して!』とか言っていた。


 話を元に戻す。


「ちょ、ちょっとトイレ借りていい?」

 とくのいち。ここは一旦仕切り直しだ。

「あたし、どうかしてる。彩子が強の家でコーヒーを飲んでいただけなのに、なに変な想像しちゃったんだろう。バカ、バカ!」


 トイレで気持ちを整理してから部屋に戻ろうとするくのいち。すると今度は襖の向こうからまた物音がする。

『パン、パン、パン、パン』とリズミカルな激しい音だ。

 二人で仲良くパンでも食べているのか? 一応イラストにしておこう。

挿絵(By みてみん)

(強、変な所からパンが生えてないか? しかも屋外!)


「早くタネを出して、強君!」

「も、もう少しで出そうだ」

「頑張って、強君!」

 更に続く『パン、パン、パン』のペースがだんだん速くなる。

「うっ!」

 暫くの沈黙。襖の向こうに居るくのいちはヨダレを拭くのが精一杯。

「いっぱい出たね、すごーい」


「タネは出すなーっ!」

 と叫んで襖を勢いよく開けるくのいち。もう手遅れじゃないのか?


 部屋の中には四つん這いになっている強と彼の背中をさすってあげている彩子。

「彩子、助かったよ」

「強君、柿の種一気食いするから喉につかえるんだよ」

「お前が背中をパンパン叩いてくれて助かったぜ」

 強と彩子は部屋に入って来たくのいちを見る。

挿絵(By みてみん)

「おいくのいち、タネは出すなって、俺を殺す気か?」

 冗談半分に笑う強。

「ご、ごめん。あたしちょっと頭冷やしてくる」

 逃げ出す様に部屋を出て外の空気を吸いに出るくのいち。『タネは出すなーっ!』は今後彼女の黒歴史として永遠に輝き続けるだろう。



強よ、彩子ちゃんと深い仲になると、きっと色々な技を披露してくれるぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ