第22話 くのいちVS強 仁義無き戦い
ガーディアンデビルズを脅かす外敵はそうそう存在はしない。そうなると、しょーもない内部抗争が勃発するものなのだ。
それからまた数日後の話。放課後、ガーディアンデビルズの部室。ミルクと琢磨のカップルは茶を飲みながら雑談をしている。くのいちは一人で携帯のサイトを熱心に見ている。
「(インポートファッションクリアランスセール……えっと、輸入衣料品在庫処分特売って意味ね。これよこれ、ずっと待ってたのよ。やっぱアメリカンサイズだとあたしにしっくりくるのよね)」
「(コーチが随分安くなってるわ。バッグの他には……コートでしょ、このアバクロのレギンスもいいわね)」
「(XL、ウエスト三十インチ、バッチリだわ。靴も欲しいなぁ。ブラウスも日本のじゃ合わないのよね)」
「(あ、ラルフのノースリーブドレス、カワイイ!)」
「(モデルの身長も百七十六センチだし、あたしにピッタリね。よし、ここに載っているアイテム全部ゲットだわ)」
そこに強が入って来る。
「ちーっす」
「強君、授業お疲れ。僕が太ももの内側でも揉んであげようか?」
と琢磨。
それを制する様にくのいちが口を開く。
「強、話があるんだけど」
「おう、何だくのいち?」
「考えてみると、あたしあなたが闘っているとこ見た事無いのよね。ケンカ十段って言われてるけど、あんた本当に強いの?」
「ケンカは中学の時に散々やって、なんかもう飽きちまったんだよ。だからこの学校の推薦も舞踊枠を狙ったんだけど何故か武闘枠になっちまって。でもダイブの世界では異世界でのバトルが楽しめそうだな」
「鉄研の騒動ではあんた何もしなかったじゃない」
「あれはほっといても解決してたはずだ」
「体育倉庫のヤンキーの一件も、チョコが片付けたって聞いたわ」
「あれは男が立ち入るトラブルじゃなかったんだよ。寝過ごした俺も悪かったんだが」
「強って琢磨にはいつもいいようにもてあそばれてるよね?」
「男同士には時にはスキンシップも必要なんだよ」
「ふーん、そうなんだー」
とくのいちは強を半ば見下す様に見つめて言う。
「ところであんた、あたしと一戦交える気は無い?」
部室にいた琢磨とミルクが驚いた表情になり、室内に緊張した空気が流れる。強が少し恐い顔になる。
「俺とやろうってのか、くのいち?」
いつの間にかチョコが部室にいて、携帯を操作している。ミルクがチョコの携帯をチラッと見ると、全校生徒に裏アカライブ開始のアラートを送っている様だ。それを見てミルクが素っ頓狂な声を上げる。
「ね〜え〜! 琢磨さ〜ん! なんか〜くのちゃんと〜強君が〜これからエッチな事をするみたいよ〜!」
「なるほど、一戦交えるわけですね」
と答える琢磨。強はこの会話に意表を突かれる。
「(えっ、一戦交えるってそういう意味だったのか? それに俺は何て答えたっけ? 『俺とやろうってのか』だよな。まずい、これもそういう意味にも取れる)」
強、くのいちの方を見る。彼女は赤くなってうつむいている。
「(あたし変な事言っちゃった? 『俺とやろう』ってもしかしてエッチな意味? 『一戦交える』ってそんな意味あったっけ?)」
くのいち、携帯で『一戦交える 例文』と検索する。検索結果の画面には、
『自慢の大砲を装備しているとはいえ、私はシエラと一戦交えるのは勇気のいる行為だと思った』
と表示される。
くのいち、それを小声でゆっくりと読み上げてから心の中で独白。
「(こ、これは難解な例文だわ。まずは『自慢の大砲』の意味。文字通りの兵器と解釈する事もできるけど、何かの比喩と捉える事もできる)」
くのいちの心の中にミルクが出現しツッコミを入れる。
『何かのヒユってどういう事〜? イギリス生まれの私にも解るように説明して〜』
くのいち、顔を赤くしながら
『ちょっと黙ってて!』
と心の中のミルクに返事する。更にくのいちの心の中の独白は続く。
「(そして次に問題となるのは『シエラ』の意味。国名とも取れるし、女性の名前のようにも聞こえる。まあ、地名、国名というのは女性っぽい名前をつける事が多いはずだけど)」
くのいちの心の中で再びミルクがツッコミを入れる。
『大砲は比喩で〜シエラは女性の名前だよ〜』
くのいち、もう一度顔を赤くする。




