第219話 彩子ちゃんの心と体は私の物だよ〜
「さあ彩子ちゃ〜ん、私のクッキーを咥えて〜」
ミルクはあらかじめ用意していたクッキーを手にして、それを彩子の口に挿入する。
ここでミルクのクッキーについて、これまでの経緯を説明しなくてはなるまい。
割井校長夫妻に学費も生活費も支給してもらい、同居して娘の様に扱われているミルク。ミルクは鶴の恩返しの様に、不思議なクッキーを身を削って作っている。
それを食べている割井校長はいつの間にか頭頂部がふさふさになり、妻の割井イシヨ医師は若返って精力絶倫となった。強はミルクをお姫様抱っこして2.5メートルの塀を飛び越えた。琢磨は校内一の秀才になった。
ダイブの仮想現実の世界でもクッキーにはヒーリング効果がある。ミルクはくのいちに恐ろしい拷問を加え、死ぬ直前に何度でも甦らせて、永遠に続く苦痛と恐怖を与えた。(ただし食べ過ぎは周囲を巻き込んで悪魔化させてしまうという副作用がある)。
今、彩子はそれを無理やり口に挿入されているのだ!
一時間後。ミルクは彩子から奪った携帯で暗証番号を自白させ彩子の父親の松戸博士先生に電話している。そうだ。ミルクは『身体検査』と称して彩子の肉体を隅々まで調べ尽くした挙げ句、連絡手段である携帯を奪ったのだ。
その奪われた代償に、今まで無縁だった女としての悦びをちょびっと得た彩子。ミルクはヤンキー、五輪仁希先生に次ぐ三人目の獲物を狙っていたのだ!。
ブラウスの第四ボタンまで外れた彩子は放心状態で幼稚園児の様にコミカルにヨダレを流しながらあらぬ方角を見て床に横たわっている。仲良しJK同士のほんの可愛いおたわむれだ。本気にする事もあるまい。
「あ、松戸先生ですか〜? ミルクです〜。いつもお世話になっています〜。今夜、彩子ちゃんと二人で女子会を開きたいのですが、SF研のお部屋お借りしていいですか〜?……はい、ありがとうございま〜す。……ええ、彩子ちゃんの声が聴きたいのですね〜。ちょっと代わりま〜す」
携帯を彩子の口元に向けるミルク。彩子ははっと我に帰る。
「お父さん、助けて! 私監禁されている! ミルクちゃんに大切なものを奪われちゃった!」
携帯を自分の方に戻すミルク。
「彩子ちゃんは今、演劇の練習の真っ最中なんです〜。私がちょっと彩子ちゃんの携帯を借りたからって『大切な物を奪われた』とか大袈裟に言ってるんですよ〜うふふふ」
屈託の無い笑いを見せるミルク。世間知らずの松戸先生は疑うはずもない。
「はい、彩子ちゃんと楽しい夜を過ごしますので〜」
電話を切って楽しそうな笑みを浮かべるミルク。
「(お父さんは私のピンチに気付いてくれない。私がお父さんに『触らないで』とか言っていたからバチが当たったんだ!)」
(彩子の父親、松戸博士先生。マッドサイエンティスト。SF研の重要人物)
と自責的、被害的に考える彩子。いやいや、今回はギャグ展開なのだからそんなにシリアスになられても困るのだが。しかしそんな声は彼女には届かない。
Fカップ魔女を呆然と見つめる彩子は、自分の心と体が何か別の物に変わっていく感覚を覚えていた。ミルクの魔力に魅せられてしまったのだ。
「わたくし、怪盗ミルク三世はとんでもない物を盗んでいきました〜」
(今回も著作権の限界に挑むミルク)
「えっ、ミルクちゃんは私の心を盗んでしまったの?」
彩子の財布を目の前に見せるミルク。
「盗んだのはあなたの財布で〜す」
「それじゃあただのコソ泥だよぅ」
コミカルに涙を流す彩子。また『ガリ、お酢、トロ』のお寿司屋さんのネタが出てしまった。




