第208話 「第4部後日談」という名のエピローグ①
ところでちゅくばケーブルの方はどうなったのだ? 以下、後日談という名の蛇足。
「皆さんこんにちは。今日はちゅくば市の近くにリニューアルオープンした『かみね公園エベレスト級ハイランド』にやって来ました! アトラクションにチャレンジしてくれる高校生を紹介しちゃいまーす」
ちゅくばケーブルのアラサーのインタビュアーが元気一杯にMCを勤める。
「先日、『わらしべ可愛い子探し』で見事に可愛い子に推薦された、森野ミルクさんでーす!」
得意げな顔でミルクが登場する。
「私なんて〜、全然可愛くないよ〜」
と言いつつポーズを決めるミルク。
背後にそびえ立つエベレストちゅくば山。観覧車や無茶な角度のジェットコースターなどが目を惹く。爽やかなそよ風がミルクに吹き付ける。よく見ると、横では大きなうちわを持って風を送っている男女計二名。ヒッキーとヤンキーである。
「今日はミルクさんとその推薦人の方にもお越しいただきました」
インタビュアーはうちわを扇いでいるヤンキーに近づく。
「あなたがミルクさんを推薦したヤンキーさんでいらっしゃいますね? ミルクさんを推薦した理由を教えていただけますか?」
「あたしもまだ十八だから、子供を産める体でいたいんだよ」
「……ヤンキーさんには何か複雑な事情がおありの様です」
ここで複雑な事情の説明。今日のテレビ撮影に先立ち、昨日ヤンキーはガーディアンデビルズの部室で琢磨、ミルクと顔合わせをしたのだ。
「凝ってません」と言ってもミルクがやる事はひとつ。
マッサージの後は緊縛。
「私の言う事を聞かないと……わかってるよね〜」
とでも言いたげな、さりげな〜い恫喝が
昨日の部室で繰り広げられたのだ。
という訳で、ミルクに命じられるがままに、心を込めてうちわであおぐヤンキーとヒッキー。
しかしヒッキーの方がバテてくる。
「こら、お前、もっと気合いを入れてあおげ!」
「そうは言っても体力の限界でござる〜」
ヒッキーは大きなうちわを持ったままふらついて倒れる。大きな風が発生し、ミルクのスカートがめくれる。
「キャッ、いや〜ん」
と恥ずかしがるミルク。
「いい絵が撮れました。あざーっす!」
とインタビュアーの女性。
「ミルク、申し訳ない。拙者ふらついて、不可抗力でこんな事になってしまい……」
ミルクは笑顔で対応。
「ヒッキーはラッキースケベの達人だからね〜。不可抗力だから仕方ないよ〜」
「分かっていただけて嬉しいでござる」
「でもさ〜ヒッキー」
急に顔がシリアスになるミルク。
「不可抗力で命を落とす事もあるから気をつけた方がいいよ。I’m giving you an ultimatum.(これは最後通牒よ)」
顔が青ざめるヒッキー。これからはミルクへのラッキースケベは命懸けだ! 頑張れヒッキー!
「それではミルクさんに、新しいジェットコースター『ヒマラヤ山』に乗ってもらいまーす。一人では寂しいので、パートナーの方にもお越しいただきましたーっ」
琢磨が登場する。
「はじめまして。切磋琢磨と申します」
「ミルクさんとはどういうご関係なのですか?」
「下僕です」
と琢磨。
彼はミルクの体に弱点を書き込んだ事を叱責され、かみね公園エベレスト級ハイランドでは下僕を演じる事を義務づけられていたのだ。
「ミルクさん、琢磨さんは下僕なんですか?」
とインタビュアー。ミルクはそれには答えずに琢磨にヘッドロックをかける。
「(琢磨さ〜ん。テレビの前なんだから本当の事を言っちゃダメだよ〜)……下僕なんかじゃありませ〜ん。種馬で〜す」
それを聞いてヒッキーとヤンキー、ドン引き。
「どちらにせよ、オンエア時は銃声が鳴り響きそうですね」
欧米では精力的で魅力的な男性を『種馬』とか『発電機』などと例える事があるらしいが、これは日本ではフライングか。
「それではお二方、いってらっしゃーい」
インタビュアーに見送られて二人はジェットコースター『エベレスト山』に乗る。とんでもないスピードでぐんぐん走るコースター。ミルクは『キャー! こわいよ〜!』とか言いながらノリノリで楽しんでいる。
コースターが止まりミルクが下車しようとすると、琢磨は動かない。笑顔で手を振ったまま完全に気を失っている。
ミルクは驚く。
「琢磨さん! 私が『キャー!』と叫んだ衝撃波で失神しちゃったのね! 本当は五輪仁希先生(五人力)に浴びせるつもりだったのに!」
ミルクは琢磨を肩で支えて下車する。
「ミルクさんの彼氏も気絶するくらいの迫力のジェットコースターでした!」
とインタビュアー。
ミルクは係員に問いかける。
「すみませ〜ん。この人、気分が悪いみたいで〜。横になって休める場所はありますか〜?」
「たまにそういう方もいらっしゃるんですよね。一部屋空いています。どうぞ」
インタビュアーはジェットコースター『エベレスト山』の絶叫ポイントで自動で撮影された二人の写真のモニターを映す。琢磨は気を失っているが、ミルクはカメラ目線でドヤ顔。
「『キャー、こわいよ〜!』と叫んだわずか数秒後にこのポーズ。撮影に全集中されています」
次回は第4部の本当の最終回です。めでたしめでたし。




