第201話 処女の奇妙な冒険
「その手裏剣は完成と同時に何者かに破壊された。もう悪の手に渡ることはないぞ」
と強。くのいちはその手裏剣で黒焦げにされ、彼女は腹いせにそれを破壊してしまったのだ。
「彩子ちゃん、とにかく荷物は一旦片付けるのが良いでござるよ。しかれど、これだけの物をどうやって学校に持ってこれたのでござるか?」
「実は一週間前に五人力のメールが回って来た時から、山岳部に仮入部して部室に私の登山グッズを少しずつ運び込んでいたのです」
集団下校に付き添っている男子生徒二、三人が強に提案する。
「剛力さん。俺達が登山道具一式を山岳部の部室に戻してきちゃいましょうか? 今日は奴等は部活で残っているはずです」
強は『こいつらが居なくても、まあ大丈夫だろう』と判断する。
「じゃあ済まないがそうしてくれるか? 山岳部の奴らが何か言ってきたら俺の名前を出してくれ」
彩子の荷物をまとめる男子生徒達。くう子やヒッキーも手を貸す。
「私が愚かな事をしたばかりに迷惑をかけてすみません」
「剛力さんのお手伝いができて俺達も嬉しいっす」
彩子は水晶玉を取り出す。
「ありがとうございます。皆さんに幸多き事を祈っています」
彩子は水晶玉を高く掲げる。それは淡い光を放つ。
「あいたたた」
頭を抱える男子生徒達。
「この水晶玉はあなた達の身体の問題点を指摘してくれます。痛みのある部分は十分にケアして下さい」
「そういえば俺、頭が悪かったかも」
と冗談半分に笑う男子生徒達。
「ヒッキー、強。股間が痛むのなら無理に我慢しなくてもいいのだぞ」
とくう子。
「お前だって頭が痛いのを必死に我慢してるんじゃないのか、くう子? それとお前の根性は痛まないのか?」
と強。
一方、ちゅくばケーブルのカメラクルーはくのいちのグループに追いつく。彼女にくっ着くように陶子、メガネっ子、ヤンキーがいて、その周りにカワイイ女子や男子生徒達がいる。
「長身に黒髪、頭に手裏剣。彼女だわ」
インタビュアーのアラサー女性がくのいちに話しかける。
「すみません。くのいちさんでいらっしゃいますか?」
くのいちは明後日の方角を見ておりインタビュアーに気付かず。
「えーと、くのいちさん?」
「はい、何でしょうか?」
返事をしたのは、くのいちの上腕に抱っこちゃんの様に抱きついてしがみついている携帯アーミーのメガネっ子。
「私達、ちゅくばケーブルの番組のスタッフです。今、ちゅくば市で一番カワイイ子を探しているのですが、あなたがくのいちさんの本体ですよね?」
「本体?」
とメガネっ子。
「本体のあなたが指令を出してこの巨大ロボを動かしているのですよね?」
「確かに特殊なゴムの装着方法などは私が指令を出す時もあります」
「モット ソウチャクノ テクニックヲ シリタイ」
とメカくのいち化しているくのいち。
「くのいちさん、またフランクフルトで技を磨きましょう!」
とヤンキー。
「ゴムクサイ フランクフルト タベタイ……って、いつまでやらせるのよー!」
お約束のファンファーレが『タラッタ、タラッラ、ラッタッタ』と鳴り、くのいちのノリツッコミポイントがまた一つ上がる。これはキノコ王国で働く配管工が一機やられた時の音楽だ。メガネっ子、ヤンキー、くのいちの三人で行ったフランクフルトの特訓は彼女達の結束力を一段と高めた様である。
節陶子がくのいちに言う。
「くのいち、なんで私を頼ってくれないの? ゴムの装着方法だったら私が手取り足取り教えてあげるわよ」
「あんたには教わりたくないの! 乙女心をわかってよ!」
陶子は周りにいるヤンキーとメガネっ子を見て言う。
「乙女じゃないヤンキーとメガネっ子と私の三人を乙女のくのいちが守ってくれているのね」
そう陶子に言われて辺りを見回すくのいち。まったくやれやれである。使う予定も無いゴムで『処女の奇妙な冒険』をしているのはくのいちだけの様だ。
ヤンキーはついこないだまで、陸上部の池面くんとヨロシクしていた。陶子は以前だめんずと付き合って、お泊まりの時は彼氏は入湯税だけ払い、残りは彼女が払った。メガネっ子は『彼氏が避妊をしてくれない』とくのいちに相談していた。
そうだ、彼女達はくのいちからすれば裏切り者だ! もう彼女達のボディーガードなんかやめて、彼女達の亡骸の前で鎮魂歌、もとい、レクイエムを歌ってはどうか? いや、それではストーリーが成立しなくなる。ここは耐えろ、くのいち。
処女らしく、ちんこ◯◯の事は忘れるんだ。
BGMは当然、「ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風」のop「裏切り者のレクイエム」だ!




