第2話 兼尾貢(かねおみつぐ)と沢山(さわやま)くう子
カツアゲの阻止に向かうくのいちと強。一方、その鉄研の部室では悪事が行われていた。急げ、くのいちと強!
くのいちと強が向かおうとしている鉄研の部室。不良っぽい男、兼尾貢が二人の鉄研部員を睨みつけている。一人は小太り老け顔の鉄研部長。もう一人は気の弱そうな部員。
「俺様をこんな所に呼び出して何の用だ?」
兼尾は今にも手が出そうな勢いである。睨まれた老け顔の部長は穏やかな口調でこう言う。
「早速じゃが、ワシに三万円カンパしてくれんかのう?」
「何寝ぼけた事言ってんだ爺さん。気は確かか?」
兼尾は部長の胸ぐらをつかむ。部長は表情一つ変えずに続ける。
「貴様、カノジョ持ちじゃろう。時々二人でオシャレなカフェに出入りするのを見かけるぞ」
「それがどうした」
と兼尾が言った瞬間、部長の強烈なパンチが飛び出す。
「鉄拳制裁!」
「うぎゃあっ!」
兼尾は吹っ飛ぶ。
「今度の連休に、大人の休日倶楽部切符を使って北海道の廃線間近の駅を制覇しなければならぬのじゃ。おとなしく三万円よこせ」
くのいちに連絡をしてきたチョコこと税所千代子は勘違いをしていたのだ。二人の鉄研部員が一見不良っぽい兼尾貢からカネを巻き上げようとしているのだ。吹っ飛んだ兼尾がふらふらになって立ち上がる。
「お、大人の休日倶楽部って確か五十歳以上の人が対象なんじゃ……あんた高校生だろう」
「大塩平八郎の乱!」
部長は兼尾に強烈なかかと落としを浴びせる。
「グボッ!」
「駅員さんの前じゃあワシは五十歳のオッサンじゃよ。親父の保険証を持参して申し込んだらすんなり入会できたわい。さっさと金をよこせ」
「お、俺、金持ってないんだよ……」
哀れみを誘う様な声で訴える兼尾貢。しかし部長は意に介さない。
「金が無ければバイトしてでも稼げ。この腐れリア充が!」
「バイトはしてんだけど出て行くカネが多くて」
そこに兼尾貢のカノジョ、沢山くう子が入って来る。おっとり顔の可愛らしい女性だがどこか空虚感が漂う。
「兼尾君、声がしたけどどうかしたの?」
「くう子、来ちゃダメだ!」
部長はくう子を見つめてニヤリと笑う。
「ほう、カノジョのお出ましというわけか」
今まで黙っていた気の弱そうな鉄研部員がようやく口を開く。
「部長、この子結構上玉ですね」
くう子は倒れている兼尾貢を見て驚く。
「兼尾君、大丈夫?」
くう子は部長を睨みつける。
「この人が何をしたっていうの!」
「こやつがワシに三万円カンパするのを拒むもんでのう。ちとお仕置きを加えていたところじゃよ」
「兼尾君はお金が無いの。許してあげて。あたしにできることがあれば何でもするから!」
部長は再びくう子を舐める様に見回してニヤリと笑う。
「ほう、何でもか。何でもじゃな。それじゃあさっそくスカートを……」
「あ、でもエッチなのは無しね」
部員がシュプレヒコールをあげる。
「なんでですかぁ〜!」
「この作品は放送大学のゴールデンタイムのオンエアを目指しているから」
部長は苦虫を噛み潰したような表情になる。
「ぐぬぬ。我が家はUHFもCSもないので放送大学はどの道見られんのじゃが……泣く子とメディアには勝てぬ様じゃな」
「それじゃあ彼女に鉄研に入部してもらうのはどうでしょうか?」
と部員が言う。
「そうじゃな。我らが部には女子部員がいないので丁度いい」
「コスプレ同好会と兼部になるけどいいですか?」
とくう子。
「構わんぞ」
部員が歓喜の拍手をする。
「わーっ、入部おめでとう! えっと、お名前は?」
「沢山くう子、二年生です」




