第190話 謎の犯行予告メール
第4部の本筋がここからスタートします。
「それから、ダイブの世界で私がヒッキーと無理矢理結婚式を挙げさせられている時も、随分あなたの登場は遅かったですよね。
(第190話より)
お陰でヒッキーは私の胸の谷間に顔を埋めるという蛮行を挙行しました」
「ミルクさん、申し訳ありませんでした。あの時僕は花婿衣装を選んでいる最中に機械メイド(メカくのいち)に背後から襲われたのです」
「琢磨さんを襲いたくなる気持ちは私も分かります。それで、どんな事をされちゃったのですか?」
「彼女に体をぐるぐる巻きに縛られて久慈川に流されました。漂流していた僕を、川辺で見知らぬ鮎釣りのおじさんが釣り上げびっくりしていました」
「泳ぎなさい、琢磨くん!」
「おじさんが唾液を飲み込んで、僕を美味しそうに食べようとするところを、命からがら逃げてきました」
「ヒッキーの精神世界の久慈川流域では、まだカニバリズム(食人)の習慣が残っていたのですね」
「とにかく、僕は臀部を防御するのに必死でした」
「食べるってそっちか〜い!」
とツッコミを入れるミルク。
琢磨はあさっての方角を見ながら、笑顔で朗らかに呟く。
「でも僕は守り抜いた。僕はまだ綺麗な体のままだからね、強君」
「切磋琢磨さん、今何か聞き捨てならない事を言いましたね?」
「い、嫌だなあ。冗談に決まっているではないですか、ミルクさん」
その時、ふとミルクの魔女の血がよぎり、別人の様な低い小声でつぶやく。
「これ以上強君、強君と言うなら、念の為先にグーで掘っておいた方がいいかもしれない」
やばいぞ琢磨。これでは退職した古門先生の肛門の二の舞だ!
「ミルクさん、今何か聞き捨てならないセリフを聞いたのですが」
「あれ〜、私の冗談聞こえちゃった〜? もう、琢磨さんったら〜本気にしちゃダメだよ〜うふふふ」
と努めて明るくカジュアルに振る舞うミルク。しかし目は笑っていない。
臀部の話はさておき、ミルクはシリアスモードに戻り尋問を続ける。
「あなたが圧迫面接でヒッキーを怒らせ、入れ替わりの術をかけられ、あっさり久野一恵に倒されたのはこの際目をつむります。私のクッキーの力をヒッキーが悪用した、という側面もありますから。今後はこの様な事の無いよう、精進して下さい」
「はい。不肖切磋琢磨、この命に替えてでも」
ここまでの二人のやり取りは、ガーディアンデビルズ第2部のエピソードの回想に基づくものだ。
ここからは本作第4部のメインストーリーが展開する。
「分かりました。ところで最近、学園の女生徒の間で、妙なメールが出回っているのをあなたはご存知ですか?」
「メール? 覚えがありませんが」
ミルクは携帯の画面のメールを琢磨に見せる。そこには、
『ちゅくば市随一の学園の一番カワイイ人をサライに参ります。決行日時は学園で一番大事なイベントの放課後です。五人力より』
と書かれている。
「このメールがミルクさんにも回ってきたのですか?」
「そうです」
「ちゅくば市随一の学園。一番カワイイ人……って誰なのですかね?」
ミルクはおもむろに絶縁手袋を装着する。
そして電気スタンドをぶんぶんと振り回す。
「私の電気スタンドが切磋琢磨にその答えを教えたくてうずうずしているのを私は感じ取る事ができるわ!」
電気スタンドのてっぺんは放電している。下手に触れたら感電死は免れないであろう。
「うわっ! りょ、了解しましたミルクさん。要するにミルクさんに何かあったら、僕が一目散に駆けつければよろしいのですね」
「必要な時にはお願いします」
「五人力だろうが消臭力だろうが、僕の敵ではありません!」
「その言葉、信じて良いのですね」
ミルクはそう言って電気スタンドを机に置く。ドアを開け、貼り紙をはがす。




