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ガーディアンデビルズ〜学園治安維持の会〜  作者: トミロン
第1部 ガーディアンデビルズ結成〜鉄研部長編〜ヤンキー編〜強とくのいちの決闘編〜万引きJK節陶子編
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第19話 携帯アーミー始動!

 チョコを中心とした携帯撮影連絡チーム、「携帯アーミー」がいじめ防止のチームとして機能し始める。

 数日後、二年生の英語の授業。舌足らずな話し方が特徴的な若い女性教師が黒板に『cartoon』と書いている。

「ここからは試験に出ない英語のコーナーれす。みんなもcartoonって言葉は馴染みがありますよね。『漫画』という意味れす。カートゥーンネットワークなんていう子供アニメ専門のチャンネルもCSにあります。それを踏まえて森野ミルクさん、今から私が書く英文を日本語に訳して下さい」


 先生は『Milk reads strip cartoon every day.』と書く。ミルクは起立する。

「わ、私が訳すんですか〜?」

「そうれす」

「ミルクは〜、あの〜、その〜」

「あの、その、じゃないれす。はっきりと言うのれす!」

 『先生も日本語もっとはっきり言った方が……』とヤジが入る。クラスから笑いが漏れる。


「ミルクは〜ストリップ漫画を〜毎日読みま〜す」

 教室から『おおっ!』とどよめきが起こる。

「……じゃなくて、ミルクは〜連載物の四コマ漫画を〜毎日読みま〜す」


「正解れす、ミルクさん。『strip』はこの場合、『短い帯状の物』という意味を持ちます。『strip cartoon』は『ストリップ漫画』ではなくて『短い帯状の漫画』つまり『新聞などに連載されている四コマ漫画』を意味します。さすがバイリンガルれすね、ミルクさん。引っ掛からなかったれすね」


 『ちゃんと引っ掛かったフリをしてくれるところがポイント高いな』

 との声が漏れる。

 その時授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。

「今日の授業はここまでれす。See you next time! ……って今日は私は昼休みの居残りれす。みんなも付き合ってね!」


 魚池高校では昼休み中に教師が教室に残り治安の維持に努める事になっている。今日の昼休みの居残りは英語の先生。彼女は一旦教室の外に出て手を洗い戻ってくる。教壇の下の段に置いてあった袋からパンを取り出す。教壇の高さに合う椅子も寄せてくる。


『♪生きる幸せ嬉しいな、食べる為に生まれたよ、アンパンにバイキン付いたらドキンとしちゃう』

 と歌いながらパンを食べようとした時、教室に剛力強が入って来る。昼食を食べ始めていたクラスが一瞬静まり返る。


「剛力強だ。邪魔するぜ」

 強は先生の方にズカズカと進んで睨みつける。

「先生、今日という今日は一万円、耳を揃えて払ってもらわないと困るんだけど」

 先生は慌てる。

「あ、強君。先生も強君が来るのを待っていたのれすよ。パン、一緒に食べましょうよ。強君の好きなのもあるのれす」

 強は先生の前にドカッと座る。


 クラスからヒソヒソ話が聞こえる。

『あいつ剛力強だよな』

『ケンカ十段とか言われてねえか?』

『凄えな。先生をカツ上げしちゃってるよ』

 などなど。強が声のする方を見ると声はピタリと止む。


「はい、強君、あ〜ん」

 先生はパンを強の口に持っていく。強は仕方無さそうに口を開ける。

「強君、肩凝ってない? 揉んであげるね」

 先生は強にマッサージを始める。

「食後に耳かきなんてどうかなぁ? 私バイトしてた事あるから得意なんらよ。耳つぼも刺激しちゃうよ。もちろん膝枕付き。だからさぁ……」

「分かった分かった。じゃあ残りは九千円でいいからちゃんと払ってくれよ」


 その様子をクラスの二、三名が携帯に録画している。強がそれを見て、一人の男子生徒に近づく。

「お前、何俺の事を撮ってるんだ?」

 男子生徒は無言で撮影を続けている。

「今すぐ撮影をやめろ!」

 強の恫喝に男子生徒が応える。

「僕達は携帯アーミーのメンバーだ。この教室内で起きた事は全て記録されている。映像はメンバー全員に共有されている。僕達を脅したり、暴力を振るったりしたら処罰が下される筈だ」


強が教室内を見回す。脅されている男子生徒の周りにも撮影を続けている生徒が数名いる。先程より人数が少し増えている。

「この野郎、口で言っても分からない様だな」

 強が男子生徒に拳を振り上げる。


 その時、

「はい、そこまで」

 と声がする。強の拳がピタリと止まる。携帯アーミーのリーダーを務める事になったチョコが教室に入って来る。

「強、見事な演技だったね」

「ありがとよ」

 と強。彼は男子生徒に言う。

「君は俺に殴られそうになっても撮影を続けていたな。何か凄えな。……こういうのって何て言えばいいんだ?」


「ジャーナリストの鏡〜」

 とミルクが言う。今日のミルクは脳みそがちゃんと頭の中に収まっている様だ。

 強が男子生徒に続けて言う。

「君はジャーナリストの鏡だ。でも本当に危険な時は逃げてくれ。身の安全が第一だ。脅かして悪かったな」


「いえ、僕が殴られそうな時も撮影を続けていた仲間がいましたから」

 と男子生徒。舌足らずな英語の先生もミルクも撮影を続けている。

「携帯アーミーの予行演習、完璧じゃない?」

 とチョコが撮影していたメンバーに問いかける。一同嬉しそうにうなづく。

「万が一撮影している奴が殴られたら俺が倍返しにするからそれは覚えておいてくれ」

 と強。


「強君は私を恐喝しようとしたんらから、これで一万円はチャラれすね」

 と先生。

「ちょっと待ってくれよ先生。治安維持の為の昼休みの居残り、一回千円で十回も代わってあげただろう。その代金はちゃんと払ってくれよ」

「耳かき十回分じゃダメれすか? もれなく膝枕でのヘッドスパも付きますよ」

挿絵(By みてみん)

 その時くのいちが教室に入って来る。

「強、今月分の家賃、支払いのメドはついたの?」

「あ、くのいち。今それについて大事な交渉をしているところなんだ」

「強君も色々苦労してるね〜」

 とミルクが言う。

「家賃払わない奴は倍返しだからね」

 とくのいち。強の家賃問題は未解決だが携帯アーミーは順調にメンバーを集め連携も取れてきている様である。


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― 新着の感想 ―
強君も大変ですね。家賃はもちろんのこと、働いた費用も取り立てないといけないとは。しかも女性相手に。色仕掛けまでされてしまうとは厳しいですね。今回もとても面白かったです。
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