第180話 古門先生の精神世界
事の発端は演劇部員の彩子がちょっとセクシーな自撮り写真を自分のSNSにアップした事だった。それをネットで発見した演劇部の顧問、古門劇代先生は大激怒。彩子にそのSNSの写真を削除させる。さらに先生は演劇部の全国大会「演劇甲子園」への出場を辞退してしまう。辞退の表向きの理由は「部員から流行り病が出たため」としていたが、彩子への当てつけである事は明白であった。古門先生の酷い仕打ちに、彩子に同情する声はあった。しかし大抵の部員は「彩子が変な写真をアップしなければ私達は演劇甲子園に出場できたのに」、と怒りの矛先を彩子に向かわせる。
それ以降彩子はさまざまな嫌がらせや陰口、いじめを受ける。元来被害的思考の強い彩子はノイローゼになり、ついに自宅のマンションから飛び降りようとする。すんでのところでガーディアンデビルズのくのいちとチョコに助けられた彩子。上記の自殺企図の原因を知るべく、彩子の仮想現実の世界を探索したガーディアンデビルズのチョコ。そこでチョコは彩子の心が生み出した古門先生のモンスターと対決する。チョコはバトルでまず敗れ、ついで必殺技「浄化モード」を起動するのに必要な野球拳でも古門先生のモンスターに敗れた。
「何故古門先生はそこまで彩子を苦しめるのか?」といぶかるガーディアンデビルズの面々。削除された彩子の自撮り写真を発掘するヒロインのくのいち。その写真を拡大して分析して、一同は大事な証拠をつかむ。
古門先生に眠り薬を盛ったくのいちは、先生を仮想現実の世界に連れ出す。前回、彩子の作り出した仮想現実の世界で先生にコテンパンにやられたチョコ。今回の古門先生が作り出した仮想現実でリベンジに燃えている。
校内の一室。魚池大学SF研出張所の室内。ダイブの黒いカプセルの中で眠る古門劇代先生。彼女はくのいちの眠り薬で眠らされたあげく、カプセルの中に入れられたのだ。今回は古門先生がダイブの世界の『あるじ』となって精神世界が構築されるのだ。その周りに並ぶ白いカプセルにはガーディアンデビルズのメンバーやその他の面々が入っている。
カプセルの中の人達の精神は仮想現実の世界に転送される。
白いカプセルに入っているガーディアンデビルズのメンバーは気がつくとミルクの道具屋に居る。
「古門先生の精神世界の構築は順調に進んでいるよ〜」
道具屋のカウンター越しに話しかけるミルク。周りにはチョコ、くのいち、強、琢磨、彩子。みんなダイブの世界に来たのだ。
チョコがミルクに話しかける。
「ミルク、今回も防具頼むわ。古門が今度はどんな化け物に変身するか分からない。……みんなも重装備で臨んだ方がいいよ」
そう言ってメンバー一同を見渡すチョコ。
「今回は防具は要らないんじゃないかな〜。」
ミルクのその言葉にちょっと驚くチョコ。
「アイテムは絶対必要だよ! 前回のダイブではあんたが用意したクコリーヌの防具でどうにかあたしは命拾いしたんだから!」
「今回の古門先生は、攻撃する意思は無いみたいだよ〜」
ミルクはスクリーンに古門先生が構築した世界を映し出す。四畳半くらいの狭い部屋に机とそれを挟む二脚の椅子。机には小さな電気スタンドが置かれている。机の前で神妙な様子で立っている古門先生。
「これは?」
「取調室みたいだよ〜」
それを聞いてチョコが声を荒げる。
「何あいつ! 警察官にでもなったつもり? あたしを取り締まるつもりなの? おあいにくだけど、今日はちゃんと天パ証明書を持ってるんだからね!」
前回の彩子の世界のダイブでは、チョコは天パ証明書を持っておらず、そのせいで彩子の心が作り出した古門劇代先生のモンスターに火の玉攻撃を喰らったのだ。
「よく見て、チョコ〜。彼女は背もたれの無い丸椅子の後ろで神妙にしているよ〜。今回のダイブの目的を察知しているのかも〜」
机の片側の、肘掛け付きの柔らかそうな椅子には腰掛けず、その向かいに置かれている丸椅子の後ろでたたずむ古門。椅子の中心には直径十センチくらいの丸い穴があいている。
「なるほど。あたしが古門を取り調べればいいのね。ノートパソコンを用意しておいてよかったわ」
チョコはノーパソを手に、道具屋から一人で出て行こうとする。取調室に向かうらしい。
「チョコ、一人で古門先生の所に行くの〜?」
「まずはあいつとサシで話がしたい」
そう言って首に下げた金属バットのペンダントに手をやるチョコ。ダイブの世界ではそれはバットや剣に変型できるのだ。




