第172話 彩子のショッピングモールでの写真
彩子がSNSにアップした写真を無理やり削除させた古門先生。ちょっとセクシーな写真だったのがまずかったのか。ヒッキーがその写真に興味を示す。
「その写真、友達には送らなかったの?」
とチョコ。
「私、そんな友達はいませんから」
「彩子、そんな悲しい事言わないでよ」
とくのいち。
チョコ、強、ヒッキーの三人がくのいちの方を見て言う。
「いるよね」
「いるだろ」
「いるでござるよ」
くのいちも大きくうなづく。
彩子、思わず涙ぐむ。
三人はヒッキーの家でチンチラ、マンチラを見学した時、くのいちの携帯に彩子から自撮りの写真付きのLINEが入ったのを覚えている。ヒッキーの母親が作った料理があまりにもマズい……もとい、体に良かったのでくのいちが苦悶の表情で彩子に返信をしたのがインパクトがあったのだ。
くのいちに以前送られてきた彩子の自撮り写真を、ヒッキーはノートパソコンの大きな画面に映し出す。
背景は近所のショッピングモール。ブラウスの第三ボタンまで外して胸の谷間が本来あるべきあたりが覗いている。ブラウスは汗でかなり湿っていて、かわいいAカップのブラが少し透けて見える。彩子は横ピースでポーズを取っている。
「素敵な写真でござるな。念の為、ファイルに保存しておくでござる」
とヒッキー。
「でも制服でこの写真はちょっとヤバくない?」
とくのいち。
「これは制服ではありません。私の私服です。このブラウス、制服によく似ているんですよ。襟の辺り、よく見て下さい」
ヒッキーは彩子のブラウスの襟の部分をを拡大する。制服とは形が微妙に違っている。
「ちょっとセクシーだよね。彩子って意外と大胆なんだね」
とチョコ。
「実は私のブラウス、第三ボタンが取れていたんです。第二ボタンまで外していたつもりがこんな風に……」
「だったら写真をアップする前に確認すればよかったじゃん」
「あの時は『まぁいっか』とか思っちゃって。くのいちにちょっとカッコいいところ見せようと思ったのかもしれません」
「彩子ちゃんって〜硬くなってなぁい?」
彩子の背後からミルクの手が伸びる。そして彼女の胸の辺りをまさぐるミルク。
「あっ、何するんですかミルクさん……」
慌てる彩子をよそに、改めて胸の画像のアップを覗き込む一同。薄手のブラの先端がぽちっとなっている様な。
「皆んな、見ないで! ヒッキー、拡大し過ぎ!」
そう言って彼女はノートパソコンのモニターを手で覆う。
「ヒッキーはラッキースケベマスターだからね〜」
「これは不可抗力でござるよ、ミルク」
「ヒッキーは不可抗力の為だったら親戚全員を平気で崖から突き落としたりできるよね〜」
「彩子、手をモニターからどけて下さらんか?」
「ダメに決まってるでしょ! 水晶玉の怒りを買いたいの!」
「そうじゃなくて、背景に映り込んでいるこの人を見るでござるよ……」
彩子はモニターから手をどける。ヒッキーは写真の背景の人物を拡大する。マスクをして帽子を被っている女性。
「この人がどうかした?」
とチョコ。
「この人、クコリーヌのアイテムを持っているでござる!」
「えっ、どこだよヒッキー」
と強。
確かに良く見ると、マスク姿の帽子の女性の左上腕にはバンダナが巻かれ、そこには長さ五センチくらいの畳まれた小さな扇子らしきものが付いている。
ヒッキーの家が開発に関わっているスマホゲーム『クリスタルメイズ』では、クコリーヌがこの扇子を広げて、必殺技『クロワッサンフラッシュ』を放つのだ。
「それがどうかしたの? あんたのスマホゲームのアイテムが売れている事を自慢したいの?」
挑発的なくのいちのセリフに、ヒッキーは深刻な面持ちで答える。
「これはまだ非売品でござるよ」
ヒッキーはそう言うと、ポケットから携帯を取り出し、くう子にコールする。
「もしもしくう子? 拙者でござる。とても大事な用事があるので、至急ガーディアンデビルズの部室に来て下さらんか?」
「あたし、バレエ同好会のアリスにレッスンしてもらっているところなのだ! クコリーヌのカッコいいポーズを覚えているところなのだ!」
「そのクコリーヌの事でとても大事な話があるのでござる。来てくれたら、からすみ入りおにぎりを支給するでござるよ」
「私が食べ物に釣られて動くと思ったら大間違いなのだ!」
電話はそこで切れる。
「あたしがあのコスプレ女を引っ張って来ようか? 大事な話なんでしょ、ヒッキー?」
とくのいち。最近ヒロインの地位をおびやかしつつあるくう子をこの辺でシメておきたいのか?




