第168話 くだらない校則なんか要らない!
彩子が自殺未遂をした原因を探究する仮想現実の世界で、彩子を苦しめていたクラスメイトを全て倒し、ラスボスの古門劇代先生と戦うチョコ。野球拳に勝てばモンスター化している古門(彩子が心の中で作り出したもの)を浄化できる。三回先にじゃんけんに勝てば良いのだが、古門二勝でチョコは二連敗。奇跡の逆転なるか?
古門先生はパー。一方のチョコはというと……グー。チョコの三連敗。勝負あった。
「パーフェクトビクトリー!」
声を上げる古門先生。
「ど、どうしてあたしが……」
うなだれるチョコ。
「お前は第二戦で私が『バカはじゃんけん弱い』と言った時、怒りを露わにした。お前は第三戦でパーを出す事を無意識に恐れたのだ」
古門先生の説明は続く。
「おまけにお前は第二戦でチョキを出して指を痛めた。この第三戦ではお前はもう一度指を私の前に出す事をためらったのだろう。お前がグーを出したのは必然だ」
「tea茶の勝ちでおま。今からおチビちゃんには意識の無いお人形になってもらいまっせ。後は下着を剥ぐなりイタズラするなり、このおチビちゃん人形を好きにするのがよろし」
「あたしは人形になんかならな……」
と言いかけて、チョコの瞳から生気が失われていく。体の動きも完全に止まる。彼女は意識の無い人形と化したのだ。
それを楽しそうに眺めてゆっくりと近寄る古門先生。
「こんな小便臭い女の下着なんか貰っても何の得もないけど、一応戦利品としていただいておくか。その後で、小生意気なこの子をゆっくりと料理しよう」
古門先生の手が人形と化したチョコのブラの肩ひもにかかる。背中のホックも外さずに、力任せにそれを一気に下ろして剥ぎ取る彼女。女同士だとその辺にためらいは無いようである……しかし古門先生の手はそこで止まり動かなくなる。
「か、体が……小学生用のブラが巻き付いて動けない!」
チョコのお子様ブラがスライムの様に変形し、生き物の如く体に巻き付いたのだ。ブラは弾力の強いゴムの様に変化し手足と胴に巻きつき、古門先生の自由を完全に奪う。
「こ、これは本物のクコリーヌの鎧?」
文化祭のガーディアンデビルズの演劇リハーサルでくう子が鎧を校長に巻き付けて勝利したのを古門先生も一緒に見学して覚えている。しかしチョコから奪った鎧は何の変化も無い。チョコが着用していたお子様ブラがクコリーヌの鎧の様に変化したのだ。
「うわっ!」
と声をあげて倒れ込む古門先生。体に巻きついたブラが腰の辺りで体をそらす様にくの字形に変形し、彼女はバランスを失って倒れたのだ。
この場にいるくのいちは『鋼鉄の処女』に閉じ込められ、火の玉の攻撃を何発も受けて気を失っている。彩子も焼け焦げて気を失って倒れている。チョコは人形と化している。一人だけ意識のある古門先生は身動きが取れずに倒れ込んでいる。
彩子、チョコ、くのいちはダイブの世界では七十二時間でゲームオーバー。リアルの世界のカプセルの中では僅か二時間に相当する。
ちなみに古門先生はダイブの『あるじ』である彩子が生み出したモンスターなので、七十二時間が経過するか、彩子がライフポイントを全て失えば消失するはずである。
ともあれ、なんとかチョコのお子様ブラから逃れようとして悪戦苦闘する事数十時間。疲れで頭がボーっとしてきた古門先生は頭に『ゴン』と言う強い衝撃を受け、意識を取り戻す。
「下らない校則なんか要らない。それを盾に取って生徒を苦しめる教師はもっと要らない!」
彩子が水晶玉を古門先生の頭部に打ちつけたのだ。水晶玉は赤く血の色に輝いている。数十時間が経過し、彩子が意識を取り戻したのだ。
「教師に向かって何て事するの!」
「あなたみたいな教師、この世界に要らない!」
水晶玉を両手に持ち、頭部にグシャリと打ち付ける彩子。身動きの取れない古門先生に五回、六回と水晶玉を打ち付ける。
「やめれくれ、いたい、いたい。顔がつるれる……あややるから……」
古門先生の鼻と上顎が窪み、歯が砕け、言葉が不明瞭になっていく。
彩子の水晶玉は古門先生の血を吸って一層輝きを増す。
ぐしゃり、ぐしゃり、ぐしゃり。何十回目かの攻撃で古門先生は言葉を発しなくなり、やがて霧の様に消失する。
お子様ブラは生き物の様に再びチョコの胸に装着される。




