第166話 浄化モードは野球拳
森野ミルクの浄化モードは恐ろしい魔女裁判であった。チョコの浄化モードは何故野球拳なのか? そこには彼女の驚くべき出生の秘密が隠されていた!(笑)
モンスターと化した古門の迫力に気押されるチョコ。すると再び壊れた天井の辺りから、
「私がルールブックでおま!」
と野球の神様の声が響き渡る。
同時に、チョコの焼けこげた制服は消失し、新品のセパレートの鎧上下の装備となる。火の玉攻撃で受けたチョコのダメージは回復する。
古門先生は相変わらずのジャージの上下。チョコのバットは消え失せ、古門先生の火の玉も消失する。
「浄化モードが作動したで。ここからは武器の使用はできまへんえ」
チョコはやっと野球の神様の力を理解する。
「あなた、本当の神様だったのね。ねぇ、この先生悪い奴なんだよ。今すぐ逮捕して廊下に立たせて!
ついでに浣腸と導尿もして牢屋にぶち込んで!」
「おチビちゃん、ワシはおまわりさんじゃないから逮捕や牢屋にぶち込むのはできんよ。先生でもないから廊下に立たせる事もかなわん。医療従事者でもないから浣腸はともかく導尿となると……」
「何よ! 管轄外だっていうの! 使えない神様ね! じゃああんたに一体何ができるの!」
と何故か強気に出るチョコ。
「ここはひとつ、野球拳で決着をつけなはれ」
神様のこの言葉に唖然とするチョコ。
「どうしたらこのシリアスな展開で野球拳になるのよ! ストーリーの必然性がまるで無いじゃない!」
「おチビちゃんはこの大ピンチの状況で、野球の神様であるワシに助けを求めた。おまけに我らが茨城県は野球県として有名じゃろうが」
「だからって野球拳……」
「茨城県の高校野球の名将木内監督が、無名の選手を率いて、甲子園の強豪高を次々と撃破したのを知っておるじゃろう。負けた相手の選手には、後にプロ野球で大活躍する桑田、清原、ダルビッシュもおったのう」
「どうしてもあたしに野球拳をやらせたいわけね」
「おチビちゃんはどうして自分の名前が税所千代子なのか知っておますか?」
「チョコレート色の肌のかわいい女の子だから?」
「かわいい、は道頓堀のたこ焼きプレートの脇にでも置いておきまひょ。ほな、苗字の税所は?」
「それは……税所家に生まれたからとしか」
「違うでおま。さいしょちよこ、最初はチョコ(チョキ)、じゃんけんぽん! あんさんは野球拳をするために生まれたのでおま」
まさかそんな設定が仕組まれていたとは作者も仰天である。
初めは唖然として事の成り行きを聞いていた古門先生だが、次第に顔に薄ら笑いを浮かべる。
「ルールの説明をするでおます。今そこにいるtea茶とおチビちゃん、よく聞きなはれ。あんたら二人は上下に二枚ずつ、合計四枚の服を着ておるのう。これから二人でじゃんけんをして、負けるたびに一枚服を脱いでもらおうかのう」
チョコが口を挟む。
「これってあたしの浄化モードなんだよね? あたしが野球拳で負けたら、ただ裸になっておしまい?」
「どんな理不尽が襲おうとも、勝てばいいだけの話でおま。天は自らを助くる者を助く。おチビちゃんも自力で勝利をつかみなはれ」
古門先生が口を開く。
「それで私が勝ったらどうなるんだい?」
「勝負はどちらかが三回負ければ終わりにしやす。終わりの時点でパンツ一枚は残るので安心してeテレのオンエアに臨みなはれ。ただし負けた方には心を失った着せ替え人形になっていただきま」
「着せ替え人形?」
と尋ねるチョコ。
「敗者は意識を失い、人形になってもらいま。勝者はその着せ替え人形の衣服を全部もらうなり、パンツを脱がして辱めを与えるなり、好きに料理してかまわんよ」
チョコは嫌でもこの浄化モードの野球拳、受けるしか無い。彩子の心の救済の為にも。通常のバトルでは古門先生の火の玉には文字通り刃が立たないのだ。だが古門先生の方は? こんなメチャクチャなバトル、受けるメリットが彼女にはあるのか? モンスターと化した古門先生に拒否権はあるのか?
「面白い。受けて立とう」
と何故か乗り気な古門先生。
辺りを見回すと、くのいちと彩子は火の玉攻撃で気を失ったままである。
「んじゃ、野球拳をおっ始めるぞい。みんなで合唱するがよろし。真面目に歌わん輩にはワシが衣服を頂戴するでおま」




