第158話 女生徒達のレーザー攻撃
彩子の創り出した仮想現実の世界。いつの間にかチョコの衣服が裂かれている。チョコは彩子の精神を体験させられているのだ。
「えっ、何これ!」
驚いてくのいちの方を見るが、彼女は無傷。チョコの声に反応してまた何人かの女生徒が天パ低身長の彼女の方を見る。視線がレーザービームのように飛んできた様に感じ、チョコは改めて自分の体を見ると、切られた跡が更に増えている。そして後頭部の辺りの髪の毛がはらりと落ちる。
チョコはバットの形をしたペンダントを頭上でクルクルと回す。するとそれはバットに変化する。彼女はそれを構えて女子生徒達に詰め寄る。
「あなた達がモンスターなのね。今すぐ攻撃をやめて。さもないとこちらからいくよ」
女子生徒達は一斉にチョコを見つめる。そしてヒソヒソ話を始める。
「(小声で) 何、あの子? あたし達がモンスター? いきなりバットを向けてきたよ。頭おかしいんじゃない?」
「くのいち! モンスターの攻撃よ! 気をつけて!」
「モンスター? 女子生徒達しかいないじゃないの」
「あたしの制服がざっくりやられた。髪の毛も切られた。ほら見てよ」
「制服? どこもおかしくないじゃない? 髪の毛もいつものあんただよね?」
女子生徒達の視線が再び飛んでくる。チョコの左前腕がスパッと紙で切られたように浅く出血する。
「警告はしたよ!」
チョコは視線を向けた女子生徒を威嚇する様にバットを振るう。女子生徒はそれをかわす。
「(小声で) 信じらんない! 攻撃してきたよ! 誰、あいつ?」
「一組の税所千代子でしょ。ただのロリっ子かと思ったらとんでもない奴ね」
「バットを振り回す奴は逮捕だよ」
「あいつうざいからLINEグループから外そう」
「あのロリっ子、ソフトボール部だよね? 野球部に転部すればいいのに。そうすればレギュラー枠が一つ増えるわ」
「あ、それナイスアイディア」
彼女達のヒソヒソ話がチョコにはレーザー攻撃の様に感じられ、制服の裂け目が更に増え、頬から一筋の血が滴る。肩や腕にも傷が増えてゆき、出血もだらだらと滴り落ちる。彼女は頬の血を指で拭い、自分の服や体につけられた傷を見つめて頭に血が昇る。
「仏の顔も三度!」
チョコはバットを女子生徒に振るい殴りつける。それをくのいちがソードプリンシパルで受け止める。
「くのいち、何故止めるの!」
「どうしたのチョコ。相手は丸腰のうちの生徒だよ。殴ったらまずいでしょ?」
「あたしがこんなに傷ついているのがわからないの? そっか。これはトリックなのね。あたしを落とし入れようとしているのね」
「(小声で)『落とし入れる』だって。被害妄想入っちゃってない? あんなちっちゃい子、やっつけちゃえば? 楽勝でしょ?」
女子生徒達の声が少しずつくのいちの声と入れ替わっていく様に感じるチョコ。
「かかと落としでもお見舞いするってのはどう?」
「なんかよく男と一緒にいるよね。気に入らない」
「あたしが横取りしちゃおうかな」
意地悪な口調がくのいちと重なる。チョコはくのいちをにらみつける。
「あたしをやっつける? あんたの得意技のかかと落としで? こんなの楽勝? あたしが強と一緒にいるのが気に入らない? これではっきりした。あんたもグルなんだ。こいつらを退治するにはあんたを先に倒すしかないのね!」
チョコはくのいちにバットで殴りかかる。それはくのいちの顔面をかすめ、額が擦りむける。
「くっ!」
くのいちは数歩後ろにさがり、剣を構える。
「チョコ、今すぐ武器を捨てて! あたし達が闘ってどうするの?」




