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ガーディアンデビルズ〜学園治安維持の会〜  作者: トミロン
第3部 サイコなヒロイン、演劇部の松戸彩子(まつどさいこ)編
155/243

第155話 松戸先生から心尽くしのお礼の品

彩子を助けた父親の松戸博士先生がくのいちに新しい発明品を贈る。「くのいちはきっとこれを喜んでくれるはずだ」と松戸先生は確信していた。

 翌日。ガーディアンデビルズの一同が会している部室。白衣を着た松戸博士(まつどひろし)先生が入ってくる。松戸彩子の父親である。

挿絵(By みてみん)

「くのいちー! 僕は感謝してもしきれないよー。君は彩子の命の恩人だ! ありがとう!」

 彼はくのいちに抱きつこうとするが、くのいちは右腕を伸ばし手のひらを松戸博士のおでこに当ててそれを阻止する。

「やだ。いきなり抱きつこうとしないで下さい、先生」

 口ではそう言うが、くのいちも心の底から嫌がっている様には見えない。


「つれないなぁ。君と僕の仲じゃないか。君が中学生の時からの付き合いだ。僕は君を娘の様に思っているんだよ。それと強! 君はマンションの五階までよじ登ってバルコニーの仕切りをぶっ壊して娘を助けてくれたんだって?」

 彼は強に抱きつき何度もキスをする。

 強も何故か松戸先生のなすがままにされている。


「くのいちが体を張って止めてくれたお陰ですよ」

 それを脇で見ていた琢磨が松戸先生を制する。

「松戸先生、強が嫌がっています。それくらいにして下さい」

「(嫌がっているのは琢磨の方だったりして)」

 とくのいち。


「くのいち、君にささやかではあるがお礼をしたい。受け取ってくれ」

 松戸先生はくのいちに新しい髪飾りの手裏剣を渡す。

「これは?」

「新機能を搭載した君の手裏剣だ」

「ふーん。今までのとどこが違うの?」


 くのいちは手裏剣を手にして真ん中のスイッチをカチリと押す。するとその手裏剣が喋り出す。

「いじめ係数四百二十七。こんがりモードを発動します」


「何これ、どういう意味?」

 くのいちがそう言った瞬間、手裏剣が電気を放つ。


「ギャーッ!」

 くのいちの悲鳴。あたりは閃光と煙に包まれる。煙が収まったところで一同が見渡すと、そこには全身が真っ黒になったくのいちの姿。

挿絵(By みてみん)

「くのいち、大丈夫か!」

 慌てて駆け寄る強。

「くのいちさん、体が真っ黒ですよ。取り敢えずこれで拭いて下さい」

 とさっと濡れたタオルを何枚か差し出す琢磨。


「どうだ、凄いだろうくのいち。この手裏剣は手に触れた人のDNAを瞬時に解析して、いじめを働きそうな者を割り出すんだ。いじめが起きる前から予防的に悪者をあぶり出せるのだよ」


 くのいちは琢磨から受け取ったタオルでゴシゴシと顔や体を拭って復帰する。

「あたしはいじめを取り締まる方なの! これじゃあまるであたしが取り締まられているみたいじゃないの!」


 松戸博士先生は全く動じる事無く強に言う。

「強君にもお礼の品を持って来たんだ。受け取ってくれ」

「食べ物っすか?」

「君は自転車が好きだろう。新しい物を用意したので使ってくれ」


 廊下でチリリンと自転車のベルの音がする。三輪自転車をミルクがこいで部室に入ってくる。後ろにはヒッキー、前の買い物カゴにはチョコが乗っている。

「これ電動式だから楽だよ〜。保育園の送り迎えに便利かも〜」


 明らかに落胆の表情の強。

「俺、今のマウンテンバイクでいいっす」

「君達、人の好意は素直に受け取るものだよ。……はっ! もしかして君達、私の事を使えないオッサンと思っているだろう! 後で私の陰口を言うつもりだな?」


「ホント、使えないオッサンね」

「ここは『そんな事ないです』ってフォローするのが血の通った人間のするべき事なのではないか?」

 と松戸先生。


 くのいちは松戸先生からもらった手裏剣をミルクに持たせる。

「ミルク、この手裏剣の真ん中のスイッチを押してみて」

「いいよ〜。え〜い!」

 ミルクは手にした手裏剣のスイッチをカチリと押す。


「いじめ係数マイナス千。ホーリーヒーラー(聖なる治癒者)です。学園の平和のためにもこの人を皆で守ってあげて下さい」


 それを聞くやいなや、くのいちはミルクから手裏剣をひったくり、床に叩きつけ足で踏みつけてこなごなにする。

「この手裏剣、壊れてる」

「いや、お前が壊したんだろう」

 と強。

「松戸先生、こんな物じゃいじめの撲滅に何の役も立たないわ。もっとマシな発明をしなさいよ!」


 


「バルコニーから身を乗り出す彩子」のAIイラスト、「みてみん ガーディアンデビルズ」のサイトにアップしました。

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