第150話 クコリーヌVS割井校長
ガーディアンデビルズによる文化祭の演劇の公開リハーサルの続き。「貧血光線」「物忘れ光線」の攻撃で強とクコリーヌを苦しめる悪い校長。強は校長に何度も吹っ飛ばされた挙句、なす術もなくやられてしまうのか?
「校長先生夫妻が六千円も払って車で休憩に来るのを目撃したのも忘れてしまった!」
「六千円! あとちょっと足せば舞浜ワンダーランドの一日パスが買えるのだ! どんな凄い休憩なのだ、それは?」
「休憩じゃなかった。御休憩だった……ああ、その他にももっと大切な事を色々忘れてしまいそうになる!」
「ぐぬぬ……光線は封印せねばならぬ様じゃな」
さっきまで貧血に喘いでいたクコリーヌが元気を取り戻す。
「光線が封印されたせいで私も元気が戻った。悪い校長、勝負するのだ!」
「何をこしゃくな……ならば私の攻撃を受けてみるがいい。私は校長だからなんでもできるのだ! クコリーヌ、君の学食十パーセント割引券の支給を中止にする事も出来るのだよ」
「マジにならないで下さい。それはパワハラなのだ!」
「何を小生意気な小娘が! 子供を産めない体にしてやろうか〜」
「セクハラ発言には気をつけるのだ、校長!」
「ええいうるさい、これでも喰らえ!」
校長はクコリーヌに剣を振るう。彼女は剣で辛うじて受け止めるが力に押され倒れ込む。
「きゃっ、痛い! 女性に暴力を振るうなんて最低なのだ! 校長は家庭でもきっとDVをしているのだな!」
哀愁に満ちた音楽が講堂全体に流れる。
「……なんか暮らしにくい世の中になったな。私の祖父の時代にはお妾さんの一人や二人いて当たり前だったのに。それが今ではやれセクハラだ、パワハラだと……」
強が校長に言う。
「この物語はフィクションですが、微妙にリアリティのある発言はネットが炎上するのでやめましょう、校長」
「じゃあ校長として私はどうすれば良いのだ?」
校長の嘆きをスルーしてクコリーヌが言う。
「私の本当の姿ををお見せするのだ! 戦闘モード、オン!」
クコリーヌはマントを脱ぎ捨て、クリスタルメイズのコスチュームになる。ピンク色の革製の胴巻き、今回は短めのスカート。右の二の腕には五センチくらいの扇子が着いたバンダナが巻かれている。
「おぉ」
と聴衆からはどよめき。
「色気のあるコスチュームだな。目のやり場に困るぞ」
二人はしばし剣を交え闘う。
「中年はそろそろ持久力が限界のはずなのだ!」
クコリーヌが頭突きを『ゴン』と入れると校長はふらつく。彼女はすかさず胴巻きのファスナーを下ろし、脱いで手に取る。大食いの割には引き締まっている腹部が露わになる。
「ブラボー!」
と観客からの歓声。
クコリーヌは校長に背後から組み付く。胴巻きは伸縮性があり、それで校長の上半身を巻きつける。
「か、体が動かせない……」
あがく校長を横目に、クコリーヌは左の二の腕のバンダナから扇子を外す。それをパッと広げるとバレエ『ドンキホーテ』の曲が流れる。彼女は曲に乗って舞を踊る。
「あたし『お年寄りは大切にしろ』っておじいちゃんに言われてるけど、校長はまだ若いよね」
クコリーヌはそう言って扇子で校長を斬りつける。
「必殺、クロワッサンフラーッシュ!」
「ぐわぁ、やられたーっ! コスチュームに目を奪われ、全集中できなかったーっ!」
「女には女の武器があるのだ!」
「セクハラだ、パワハラだ、女性への暴力は許せないと糾弾された挙句、女の武器に破れたーっ。無念!」
校長は倒れる。
クコリーヌは校長の体に巻きついている鎧を外し、自分の胴に装着する。
クコリーヌは強に駆け寄る。
「そこの天然茶髪の君、大丈夫?」
「ありがとう美少女戦士クコリーヌ。やっぱり正義は勝つんだね」
「勝った方が正義を名乗る限り、この世に悪が栄えたためしは無いのだ。これからも女性の地位向上のためにみんなで闘うのだ!」
「うん、そうする」




