第148話 学園祭は演劇!
「一人演劇」が趣味のくのいちの才能が遂に開花するか?
その後は例年通りの学校行事が流れる。定期テスト、身体測定、化学実験、農業体験、火の用心巡回など。巡回中、火遊びをしていたカップルが何組か生徒会に摘発される。当然、その中には池面君の顔も見られた。
時はやや流れて一ヶ月後のガーディアンデビルズの部室。黒板には『文化祭について』と書かれている。メンバー一同を前にチョコが口火を切る。
「学園祭まであと三ヶ月。青春ドラマといえば学園祭。我々も何かやりますか?」
「私の国では学園祭って無かったよ〜。てっきりアニメの世界のお話と思っていたの〜。やりたいよね〜」
「アニメの世界のお話って言うけど、サザエさんやジョジョやハンターハンターには確か学園祭のエピソードは無かったわよね?」
「そもそも学園ものじゃないだろ、くのいち」
「学園祭のアニメ映画といえば『ビューティフルドリーマー』かな〜?」
「読者を置いてけぼりにする様な古いネタはやめて下さい、ミルクちゃん」
「ハルヒの学園祭の回は盛り上がったね」
とチョコ。
「カフェバーなんてどうかな〜?」
「アルコールの入っていないカクテルとかおもしろそうだね」
とチョコ。
「私、バーテンダーやっちゃうよ〜」
さすがバーの本場イギリス出身のミルクである。彼女はシェイカーをつかんで上下に垂直ピストン運動させるジェスチャーをしてみせる。
「ミルクちゃん、それはちょっと……」
「え〜、どうしてダメなの琢磨さ〜ん♡」
と色気のある声で琢磨ににじり寄るミルク。これは確信犯か。
「(バットさばきならミルクには絶対負けない)」
と無意味な対抗心を心の中で密かに燃やすチョコ。どんなバットだよ。
そんな彼らを遮る様にくのいちが言う。
「模擬店って効率が悪いよね。自分でやるより模擬店の治安を確保してあげて、売り上げの十パーセントを謝礼でもらう方が楽じゃない?」
「新しい法律が施行されてからそういうシノギで稼げなくなっちゃいましたよね」
「よし、じゃあ演劇をやろう! 」
とくのいち。
「監督は? 誰が脚本を書くんだよ?」
「あなた、あたしの才能を甘く見てるわね? 近所の商店街をスポンサーにつけてハンディカムをゲットするわよ!」
「私が登場する回はパロディやオマージュが多くなる気がするんだけど〜、これも某超有名アニメのパクリなの〜? ああ、久野一恵の憂鬱だね〜」
「一応、演劇に詳しい人に監修をお願いした方がいいんじゃないですか?」
そして月曜日の朝礼。校長が講堂で生徒達を前に話をしている。
「……であるからして君達は高校生らしく毎日を大切に生きてほしい。ああだこうだ、えっへんおっほん。円周率は3.14。茨城県民の日は11月13日だ。その日は大洗水族館は入館料が割引になるが千葉にある舞浜遊園地は割引はないので注意して欲しい。これから更に難しい話をするぞ。むかしむかし、あるところにだ……」
月曜日の朝礼は拷問である。聞いている生徒達の何割かは気を失っている。ある者は輸血の点滴を受けている。
「ところで君達に尋ねたい事がある。そこで今あくびをしていた天然茶髪の男子生徒、ちょっとこっちに」
「俺っすか?」
強が眠たそうに壇上に登る。
「君は朝礼の校長先生の話をこれまでに何回聞いたろう? 小学校の時から通算するとかなりの回数になる筈だ。何か心に残る話を覚えていたら教えて欲しい」
「月曜日の朝っぱらから無茶振りですか? そんなの台本も無しにパッと答えられるもんじゃないと思うんですが。……えーっと、うーん。あ、そうだ。俺が印象深いのは七人家族の話でした。家族構成は両親と三人の子供。一番上の姉は結婚して子供が一人います。夫はマスオさんしています」
「キャラクター名をあげるのは著作権的に問題があるのではないかね?」
「先生、マスオさんは固有名詞ではありません。一般名詞です。みんめい書房の国語辞典にも載っています」
「分かった。それでどんな話だったのかね?」
「大きな空を眺めたら白い雲が飛んでいました」
校長は強を殴り飛ばす。
「ばかもーんっ!」
「ぐへぇ」
強吹っ飛ぶ。
ミルクのバーテンダー姿は「みてみん ガーディアンデビルズ」のサイトで。




