第142話 このコスチューム、冷めない内に召し上がれ♡
CGゲームキャラのクコリーヌと連動してMCをするリアルのくう子。「クリスタルメイズ」のプロモーションは人気を博している様だ。
「みんないつも応援ありがとう。クコリーヌだよ。月末はいよいよ『クリスタルメイズ バベルの塔武闘会』が開催されるのだ! 四人一組のチーム戦だよ。メンバー募集用の専用サイトもあるからアクセスして仲間を集めるべしっ! 今回の賞品は……」
画面に先ほどのタンクトップと胴巻きが映し出される。
「ジャーン! クコリーヌの鎧なのだ! さっきの闘いで見た通り、敵に組みつかれた時鎧が変形し色んな攻撃に使えるスグレモノだよ。上位の二十チームには次回のバトルから装備可能になるのだ! 更に上位の五チームには……ちょっと失礼するね」
クコリーヌことくう子はなまめかしくスカートを脱いでいく。一旦恥ずかしそうに腕で股間を覆い隠す仕草が目をひく。これはあのプロデューサーの演出か。はたまたくう子のアドリブか。スカートの下もビキニ姿。
画面にはタンクトップ、革製の胴巻き、スカートが表示される。
脱いだスカートを片手にMCを続けるくう子。
「クコリーヌのコスチュームのレプリカをあげちゃうのだ!……こんなのもらってくれる人いるのかなぁ? サイズはあたし用だから合わなかったら許してちょんまげ。使い道は……コミケでコスプレでもしてみるといいのだ! 多分。このコスチューム、脱ぎたてだからまだあったかいよ。冷めないうちに召し上がれなのだ!」
ビキニ姿で笑顔満面のくう子。
ノートパソコンのモニターの映像はここまで。
「くう子は一生このキャラで行った方がいいんじゃね?」
「アラフォーになってもこのキャラだと世間の目が痛いのだ!」
早速ネットで情報を検索するチョコ。
「今、オークションサイトをチェックしてみたら、クコリーヌのコスチュームのレプリカ、すごい事になってるよ。まだ誰も手に入れてないのに購入希望が殺到してる。『五万円で購入希望』なんて書き込みはザラにある……コスチュームの他にもビキニ上下も売って欲しい、とか」
ふと、みんなの会話を遮る様にくのいちが言う。
「ご馳走様でした。あ、お母さん、私食器洗います」
「ありがとうお嬢ちゃん。新斗の友達はみんないい人ばかりね」
くのいちは会話を避ける様に台所に向かう。セクシーなコスプレのくう子に話題が集まっているのが気に入らないのか。
その後、ヒッキーとくう子はゲーミングラボに向かった。
強、くのいち、チョコは比企家を後にする。
「お口直ししようよ。反動でジャンクな物が食べたくなった」
とくのいち。
「さんせーい」
と答えるチョコと強。麗しき全体主義である。くう子がいないと、くのいちとチョコのスレンダー同盟の結束は堅い。
マッタの店内でくつろぐチョコと強とくのい
「そういえばくのいちは『好きな人から告白される』って彩子ちゃんが占ってたよね。もし当たったら教えてね」
とチョコ。
「そんな占いが当たるなら、彩子はもっと人気者になってるんじゃないの?」
「今日のお前、なんかちょっとひねくれてるなぁ」
くのいちは確かにちょっとひねくれた気持ちにはなっていた。くう子とヒッキーが生き生きとしているのが羨ましく感じられたし、『好きな人から告白される』って言われたのに、当の強は目の前にいるくせに何のアクションも起こさないのが癪に触った。得意の忍術でヒッキーの家に侵入し、母親に一服盛り、変装術で母親になりすましたのに肝心のチンチラ、マンチラは肩透かしを喰らった。そして酸っぱい納豆、イワシ、味噌汁……ともあれこの日のガーディアンデビルズの臨時集会はこれでお開きとなった。
着実に伏線を織り込みつつ、話は進む。




