第14話 お給料の発表で〜す
女生徒に辱めを与えて暴行も加えたヤンキーを仕置きした治安維持の会。生徒指導室が決定した報酬額が支給される。
翌日、治安維持の会の部室。くのいちと、昨日活躍したチョコと強がいる。
「昨日はチョコと強で仕事こなしたんだって?」
とくのいち。
チョコが弁解気味に答える。
「強が『お金がピンチだから先に連絡して欲しい』って言ってさぁ」
「そうなんだ。じゃあ報酬も入っただろうから今月の家賃は大丈夫だよね、強?」
「まかせろ。俺の活躍を生徒指導室も理解してくれているはずだ」
「そうだよね……って、フラグが立ってない?」
とチョコ。
「あれ、何か香ばしい匂いがしてきた」
とくのいち。
「ミルクが何か作ってるのかなぁ? 今日もチョコレートケーキだといいな」
隣の部屋からエプロン姿のミルクがお茶と和菓子をトレイに載せて運んで来る。
「おまたせ〜。昨日のお仕事の〜収支報告の時間だよ〜」
「待ってたぜ、ミルク」
ミルクは机にテーブルクロスを敷いてお茶と和菓子を配膳する。
「今日は〜ほうじ茶を作ったよ〜」
「さっきからいい匂いがしていたのはこれね」
とくのいち。
「和菓子は〜格安ダイニングの〜フルーツ大福で〜す」
チョコが大福のラインナップをしげしげと見つめる。
「マスカット、ブルーベリー、定番のイチゴ、あっチョコ大福もある。いっただきぃ!」
「お前はまた共喰いだな。俺はマスカット大福をいただくか」
「強、ダメ! マスカットもあたしが食べる!」
「あたしは残り物をいただくから、強は好きなやつを選んで」
とくのいち。
「ところでさぁ、ミルク。ほうじ茶ってどうやって作るの?」
「簡単だよチョコ〜。お茶っ葉をフライパンで炒めるだけ〜。ちょっと見学する〜?」
「うん、見せて見せて」
チョコとミルクは部室の隣の給湯室に行く。
残ったのは強とくのいち。
「お前って、甘い物にがっついたりしないんだな」
「あたしはヘンゼルを十分に太らせてから食べるタチだから」
「人喰い魔女か。俺はグレーテルが助けてくれるまでは生き延びなきゃな」
「それに強のスイーツの好みをリサーチするのも楽しいし」
「そっか?」
強はマスカット大福を一個丸ごと口に入れて食べる。
しばらくしてチョコとミルクが給湯室から戻って来る。
「あっ、一つ足りない! 強、マスカット食べたでしょ!」
「あたしはいいからチョコがもう一個食べなよ」
「あたし今すごい事を思いついた!」
「何だよチョコ、一応聞いてやるぞ」
「『マスカット食べたでしょ』って『○スターベーション』に似てる! 世紀の大発見だわ!」
このとんでもない厨二ギャグにくのいちは凍りつく。
「この場合、世紀は平仮名にした方がいいぞ。妄想が膨らむ」
と強。
「スターベーションって〜『飢え』って意味だよね〜。チョコはお腹が〜よっぽど空いていたんだね〜」
とバイリンガルな知識で珍しくその場を収めようとするミルク。
「わかったから収支報告行っちゃってよ、ミルク」
とはにかむくのいち。
「では、発表するね〜。あの二年生に暴力をふるったヤンキーは〜停学一週間の上〜、制服の弁償と六万円の罰金が課されたよ〜。諸費用を差っ引いたのが〜みんなの取り分だよ〜。まずはチョコ〜、三万円〜」
強、くのいち、ミルク拍手。
「私ミルク〜、一万円〜」
ミルク、上品にお辞儀する。
「強君〜、二千円〜」
強がガクッとする。
「ゼロが一つ小さくねえか?」
強にチョコが説明する。
「治安維持の仕事は緊急性が問われる事が多いからね。寝過ごす、仲間をすぐに助けに行かない、なんかは大減点みたいだよ。この前くのいちも、鉄研の部室に行く時に昼寝してて、危うくペナルティだったけど、あの時は強が助けてあげたんだよね」
「俺もこれからは目覚まし時計十個持参で行かなきゃな」
くのいちが強の頭を撫でる。
「しょうがないよ、強。次からは頑張ろう。反省会を開かなくちゃね」
とやけに優しいくのいち。しかし、
「ねぇミルク、あんたの彼氏、部室に呼んどいて」
の言葉に強の表情はこわばる。
その時チョコの携帯に『♪チョッコレート チョッコレート チョコレートは……』と着信音が鳴る。
「割井校長先生からの呼び出しだ。チョコっと行ってくるね」




