第137話 学校のデータベースを操るチョコ
割井夫妻を捕まえたチョコは、校長をアッシー君代わりに使い、ついでに「サーブル」のチョコレートケーキもおごらせる。
「うおっほん。我が校の生徒がいかがわしい場所に出入りしていないか見回っていたところなのだよ」
「お家だとマンネリになるから、たまには部屋中鏡張りでミラーボールのあるお部屋がいいのよ。ね、ダーリン」
「じゃあなんで今、俺達を見て急にUターンしたんすか?」
「勘違いして変なところに入ってしまったものだからね」
「医者として言わせてもらうと、部屋のノートに書いてある寄せ書きが妙な味わいがあって私は好きなのよね」
イシヨ医師は今、そっちの事で頭が一杯で、通常の会話が不能になっている様子。
話が余り噛み合っていない割井夫妻の車に勝手に乗り込むチョコと強。
「校長先生、比企新斗君の自宅まで送ってくれませんか?」
とチョコ。
「場所はわかるのかね?」
「魚池高校のデータベース、使わせてもらいまーす」
そう言って携帯を操作するチョコ。
「税所君、君は携帯アーミーのリーダーだからデータベースへのアクセスを特別に許可しているが、くれぐれも濫用はしないでくれたまえ」
「勿論です校長。あたしと強は今、極めて重大な任務を遂行中なのです。それで、まず手始めにみどり野のパティスリー『サーブル』によってもらえますか?」
「分かった。これも任務の為なのだね」
「いえ違います。今あたしは発作的に美味しいチョコレートケーキが食べたくなってしまったのです。サーブルはイートインできるので直行して下さい」
「君達二人だってイケナイ建物に入って行ったのに、お咎め無しで済ますつもりかね税所君?」
「事が表沙汰になった時の失う物の大きさをちゃんと天秤にかけて下さい、校長」
そう言ってチョコはラブホに入った校長夫妻の車の写真を見せる。
「あたし達はただの幼稚園児と茶髪の高校生。かたや魚池の校長と附属病院の女医さん」
「ぐぬぬ……」
苦虫を噛み潰した様な表情の割井校長。
それを見てチョコがウインクする。
「うなじに吐息くらいは大目に見ますから」
とイシヨ先生には聞こえない様に囁くチョコ。
強は二人の会話を指をくわえてただ聞いているのみ。
「(硬軟取り混ぜた大人の駆け引き。校長を完全に手玉に取っている。俺には真似出来ねえな)」
「チョコレートケーキの五個や六個、安い物ですよね、校長?」
「(おいおい、まさか一人で全部食べる気かよ?)」
ヒッキーの家の前で車が止まり、降りて来るチョコと強。
「さあダーリン。今日できることは今日中にやりましょう」
イシヨ医師はそう言って、夫妻の車は去って行く。
『比企』と書かれた門の前にたたずむチョコと強。
「さて、誰が呼び鈴を押すんだ?」
「ここは流れ的に強だよね」
と園服を着たチョコが言う。
「俺が押せばいいんだな」
強は恐る恐る呼び鈴を押す。
「ピンポーン」
と鳴った瞬間彼は逃げ出す。……がチョコが強にタックルして逃走を阻止する。
「何やってるのよ、強!」
「いや、俺、ピンポンを押すと反射的にダッシュしたくなる習性が……」
「あんた子供なの! 確かに体の一部はそうかもしれないけど」
「俺の体の秘密を世間に広めるのはやめてくれー」
「大丈夫。もう日本中のみんなが知っているから」
そこをランドセルをしょった八歳くらいの男の子が、
「あ、小さいお兄ちゃんだ」
と強を指差して通り過ぎる。
「俺は身長は百七十八センチだ! それなのに……もう日本中に知れ渡ってしまったのかーっ!……」
と強がうなだれているとインターホン越しに女性の声がする。
「はい、どちら様ですか?」
幼稚園児の格好をしたチョコが大人びた口調で答える。
「はじめまして。私達、魚池高校の風紀委員会の者です。今日、比企新斗君が童貞を卒業するという極秘情報を入手したので、真偽の程を確かめるべく伺った次第なのですが」
女性の声で返答がある。
「まぁ、うちのニイちゃんが! さっき来たお嬢ちゃん(くう子)と? こうしちゃいられないわ。鍵は開いているから入って下さい。ニイちゃんの部屋は二階です。ご自由にどうぞ」
「チョコ、でかした」
二人は玄関のドアを開け、廊下から階段を登って部屋に向かう。
需要があるかはわかりませんが、チョコの幼稚園児姿、「みてみん ガーディアンデビルズ」のサイトにアップしました。第三部ではもう少し露出をアップさせたいです(笑)。




