第136話 くう子を尾行する二人
チンチラとマンチラの為に、変装までしてくう子を尾行する二人。そのさ中、二人は意外な人達と偶然顔を合わせる。
週末の朝。駅前の商店街を歩くくう子。手にはスポーツバッグ。楽しそうに鼻歌を歌っている。
彼女を尾行するマスクや帽子を被った怪しげな二人組。一人の男性はロングコートを着ており、もう一人の女性は幼稚園の園服を着ている。
時々くう子が後ろを振り返ると彼らもピタリと止まる。くう子がフェイントをかけ、振り向き終えた瞬間に前に歩き出す振りをしてピルエットで一回転してまた後ろを向くが、彼らはやはりピタリと止まる。
「ちゃんと『達磨さんが転んだ』って言ってくれないとやりにくいよね」
「しっ!気付かれるぞ」
尾行しているのは変装しているチョコと強。
「でもさぁ、強。くう子が振り向いた瞬間にこっちも立ち止まったらかえって怪しまれない?」
「そうかもしれねえ。お前頭いいな、チョコ。それにしても何で俺達がくう子を尾行しなければならんのだ?」
「チンチラとマンチラだよ! あんた見たくないの?」
「いや、俺はそうまでして見たくも……」
「そっか。強は小さい頃あたしと二人でやり過ぎて卒業しちゃったんだね」
「じゃあまた二人で入学するか?」
そんな事を話していると、ふとくう子がチョコと強の方に向かってくる。
「うわっ、こっちに来るよ!」
「緊急事態だ。チョコ、俺の中に隠れろ!」
二人は通りの店の門の中に入り、チョコは強のコートの中に隠れる。
暫く経ってくう子が追って来ないのを確認して、チョコが強のコートから出てくる。
「行ったか?」
「強、ちっちゃい頃のまんまだね」
「どさくさに紛れて何見てんだよ!」
チョコは門の外を見回す。
「あれ、くう子ちゃん居ない」
強も見回すがやはりくう子の姿は無い。
「上手くまかれたようだな」
「どうする、強? せっかくだからあたし達二人でチンチラとマンチラの続きでもやる?」
「続きって何だよ。もう始まっているみたいじゃないか! 大体昼間の屋外でそんな事……」
「やればできるよ」
チョコは二人が立っている建物を指差す。
『御休憩六千円から 御宿泊九千円から』
と書かれている。
「学園ラブコメ物の定番キター。異性の友達と歩いていると偶然ラブホの前を通りかかるやつ」
「でもさぁ強、ここ相場より高くない?」
「ラブホの相場に詳しい幼稚園児、初めて見たぞ」
と幼稚園の園服を着ているチョコに強は言う。
「きっとお金持ち御用達のラブホなんだよ」
その時、門を通り一台の高級そうな車が敷地に入って来る。車はチョコと強の前を通り過ぎ奥に進もうとするが、何故かそこでUターンを始める。強は門の入り口に立ち、車が外に出て行くのを阻止する。
「何してるの、強?」
「この車、この前お宅訪問で見たんだ」
お宅訪問でのミルクの水着姿を思い出す強。
車は強の前で止まり、中から人が降りて来る。なんと割井校長と割井イシヨ医師である。
「や、やあ剛力君に税所君。こんな所で会うとは奇遇だね」
「校長先生、こんちわ。何してたんすか?」
「してたんじゃないの。これからするところ」
とイシヨ医師。
「うおっほん。我が校の生徒がいかがわしい場所に出入りしていないか見回っていたところなのだよ」
「お家だとマンネリになるから、たまには部屋中鏡張りでミラーボールのあるお部屋がいいのよ。ね、ダーリン」
「じゃあなんで今、俺達を見て急にUターンしたんすか?」
「勘違いして変なところに入ってしまったものだからね」
「医者として言わせてもらうと、部屋のノートに書いてある寄せ書きが妙な味わいがあって私は好きなのよね」
第10話 「ヤンキーの暴行を受ける池面君の彼女」の画像をアップしました。彼女は第三部の後半で、ヤンキーと演劇で共演します。「みてみん ガーディアンデビルズ」で検索して下さい。




