第134話 「クリスタルメイズ」中ボス戦の実戦解説
ゲーム攻略に苦戦している池面の為に、ヒッキーとくう子はバトルの実演付きで攻略法を解説する。
「ミルク、太巻きとてもおいしかったよ。また作ってね」
と言って教室を去る節陶子。ミルクは手を振って笑顔で見送るが、陶子が背中を向けた瞬間、またも一瞬怖い顔で彼女を睨むのに気付く強。
ダイブの世界で節陶子が琢磨と危うく一線を越えそうになった。その時は琢磨の浄化モードが発動して事なきを得たのだが、ミルクは『琢磨さんが浮気をしたのでは』と薄々勘づいている。ミルクもちょっと仕返しとばかりに強に粉をかける様な態度をとっていたのだが、強はそれを知る由も無い。
ともあれ、マッチングで打ち解けた生徒達が徐々にガーディアンデビルズの部室を出て行く。メンバーに口々に感謝の言葉が聞かれる。
残り数名となったが池面とヒッキーの会話が続いている。ヒッキーの家の会社が開発したゲーム『クリスタルメイズ』の話題で盛り上がっている。
「中ボスとのバトルがどうしても攻略出来なくてよぅ。口で説明されてもいまひとつピンとこないんだよな」
「左様でござるか。しからば……」
ヒッキーは部室に残っていたくう子に声をかける。
「くう子、ちょっと協力して下さらんか?」
その声を聞いて強は注意を引かれる。
「(呼び捨てかよ)」
くう子が答える。
「いいわよ。何?」
「クリスタルメイズ、中ボス戦の攻略法を実演してみたいのでござるが」
「えっ、ここで教えてくれるのか?」
くう子は池面に近づく。
「半兵衛での一件、バラされたくなかったらこれからも時々あたしにご馳走する様に」
「俺は勝てないケンカはしない主義なんだ。お手柔らかに頼むぜ」
と池面。
くう子はヒッキーの方に振り向いて言う。
「中ボス戦ね。オッケー、実演してみようよ」
池面がくう子を見つめて言う。
「お前、やっぱ中ボスのクコリーヌだよな? クリスタルメイズのキャラがリアルの世界に降臨か!」
「見物料はバスティーユのランチ一回でいいわ」
くう子は池面にそう答えて、ヒッキーに言う。
「廊下に出て。勝負よヒッキー」
くう子とヒッキーは新聞紙を丸め、ガムテープをグルグル巻きにした即席の剣で対峙する。
「おっ、バトルか? 見学させてくれ」
「面白そうじゃない?」
闘いの匂いを嗅ぎつけた強とくのいちも廊下に出て来る。やはりこの二人はバトルジャンキーなのか。
「この二人、ブレードの使い方わかるの?」
とでも言いたげに、バット使いの名人チョコも見学に加わる。成り行きを見ていたミルクも松戸彩子も廊下に出て来る。ヒッキーは思わぬギャラリーの増加に照れた表情。
筒状に丸めた新聞紙を手に、向かい合うヒッキーとくう子。それを囲むギャラリーの強、くのいち、チョコ、ミルク、池面、彩子。
くう子がヒッキーに言葉を放つ。
「これよりクリスタルメイズのバトルを行う。私は中ボスのクコリーヌなのだ! そこのゲームオタクのチンチクリン! おとなしく私の剣のサビとなるのがいいのだ。正義は必ず勝つのだ!」
ヒッキーも負けじと応戦。
「そこのエンゲル係数が異様に高いコスプレ女! 係数を下げるには収入の増加が不可欠であることを教えて差し上げるでござる!」
ヒッキーとくう子はローマ帝国時代のグラディエイター(見せ物のため闘わされる剣奴)のお決まりのセリフを唱え敬礼する。
「We who are about to die salute you! (今まさに死のうとしている我々は皇帝閣下に敬礼を捧げます!)」
「わぁ、演劇みたいだね」
と彩子。
「Wow, Roman Empire! Gladiator! (うわ〜っ、ローマ帝国の剣奴〜!)」
ヒッキーとは例のダイブ以来、どことなく疎遠になっていたミルクであったが、思わず声を上げる。
「ミルクが英語を口にするのって珍しいよね」
といつもミルクと一緒に裏アカの放送をしているチョコが言う。
「Way to go〜!(いけ〜!)」
くう子は新聞紙の剣を片手にバレエのポーズを取る。バレエ同好会で強から教わったピルエットターンの後、一度足を高く上げるとスカートの中がチラリと見える。
対峙しているヒッキーは目のやり場に困った表情をする。
ちなみにくう子はバレエ同好会のアリスからバレエの手ほどきを受けている。休み時間にはひと気の無い校舎の廊下で、人知れず体を動かしているのだ。
彼女の影の努力をこのまま野に埋もれさせるのは惜しいので、ここにそのイラストを載せておく(とかいうもっともらしい事を言ってみるテスト)。
スマホゲーム「クリスタルメイズ」の女剣士クコリーヌ。「みてみん ガーディアンデビルズ」のサイトにアップしておきます。




