第132話 スピリチュアル系キター!
ヒッキーの家が開発したスマホゲーム「クリスタルメイズ」にハマっている池面。ヒッキーは「お得意様ゲット!」とばかりに嬉しそう。一方、第三部のヒロイン松戸彩子はくのいちとの運命的な出会いをする。いじめられっ子の彩子といじめっ子のくのいち、相性は如何に?
くう子の話し声に一瞬ビクッとして太巻を咥えたまま振り向いた男子生徒がいる。陸上部のイケメン、池面君その人である。彼はくう子を茨城藁葺き村旅館『半兵衛』に連れ出し、不純異性交遊を試みたが、見事くう子に返り討ちに逢った。彼は今、身長が頭一つ分低いヒッキーと話をしている。
「どうしたでござるか、池面殿?」
「あ、いや、なんでもねえ。それよりお前、格ゲーチャンピオンだろ、すげえな」
「リアルの格闘はさっぱりでござるよ。この前も剛力強君にダメ出しを食らったでござる」
「俺さぁ、今『クリスタルメイズ』にハマってるんだよ。知ってるよな?」
それを聞いてほくそ笑むヒッキー。
「 (うちのアプリの人気も上がっている様でござるな。よしよし) 」
しかしヒッキーはあえて澄ました顔で言う。
「ちょっとプレーしたことはあるでござるよ」
「本当か? 俺、どうしても攻略できないステージがあってよぅ……」
池面とヒッキーが話しているところにスッとくう子が近づき、二人の食べ残しの太巻きを奪って口に放り込む。
「ザコキャラが二人いるわね」
とくう子が微笑む。池面とヒッキーは苦笑い。二人ともくう子の拳の重みを体で味わっているのだ。
一人になった節陶子は太巻きの乗った紙皿を手に、強とミルクに近づく。
「お久しぶり。強君にミルクちゃん」
「よう、陶子ちゃん。……なんか一段と綺麗になったな」
強のこの言葉に、陶子は自分のピッグテールの髪を撫でる。好意を持つ男性の前で見せる仕草らしい。
ミルクは強に軽く肘鉄を入れる。
「楽しんでくれてる〜?」
「おかげさまで。ところでこの太巻き、作ったのミルクだよね」
「アハッ、バレた〜? 強君は玉すだれで丸めただけ〜。下準備をしたのは私だよ〜」
「玉子焼きにもしっかりダシの味が付いている。しいたけも、かんぴょうも、鶏そぼろも絶妙な砂糖と塩加減。ミルクの味付けだ〜。ゴマをちょっと加える所もセンスがいい。また食べたいな、ミルクのお弁当」
それを聞いて強が言う。
「札束でほっぺをペシペシしてあげると、嬉し涙を流しながら作ってくれるぞ。でも最近ミルクはちょっと金回りがいいみたいだから暫く間を空けた方がいい」
「そっか。じゃあミルクがピーピーの時にはまた教えてね」
「任せろ」
陶子はその場を離れる。
その刹那、ミルクは陶子の背に凍りつく様な恐ろしい視線を投げつける。それを強に一瞬気付かれ、ごまかすようにミルクは強に言う。
「私の台所事情、やけに詳しいじゃな〜い?」
「口から出まかせだ。当たってたか?」
二人が室内を見渡すと、カラオケ好きの女子達はカラオケ採点あるある話をしている。チョコも会話に加わっている。
「音階が上がるところでしっかり高音を出さないと容赦なく減点されるよね」
「『部屋の隅々まで響き渡る声ですね、感動しました』っていう採点結果が出たけど、激せまい一人用カラオケルームだったんだけど」
「涙を流しながらアニソンを熱唱していたら、店員さんが食事を運んできた」
などなど。
ミリタリーファンは戦車や最新の戦闘機やドローンの話題で盛り上がっている。
同じ地下アイドルを推している生徒同士でディープな会話をしている女生徒達もいる。
一緒にコンサートに行く仲間ができて喜んでいる生徒も見られる。
アニメ、サッカー、ボカロ、Vチューバー辺りは男子生徒達は話題にし易い様子。
くのいちはそんな彼らを見回っている。その中に一人ぽつんと座っている女生徒、松戸彩子がいる。くのいちも彩子もまだお互いに面識は無い。彩子はムンクの『叫び』が背中にプリントされた黒いレインコートを着て、頭には電池式のろうそくを生やしている。机の上に手を乗せ、両方の手のひらで何かを覆っている。くのいちが近づいて見てみると、それは台座に鎮座する水晶玉。
「(うわっ、スピリチュアル系キター。あたしこのジャンル苦手なのよね)」
くのいちが彼女の脇をそそくさと通過しようとすると彩子はくのいちに話かける。
「そこのあなた」
「な、何ですか?」
「あなた今、私を無視して通過しようとしましたね」
「はい」
第20話 「不登校から立ち直るために、ミルクの指導の元、ダイブの世界でくのいちと戦うヒッキー」のAI イラストをアップしました。「みてみん ガーディアンデビルズ」で検索して下さい。




