第13話 ミルクの身体検査
ハムラビ法典を遵守する治安維持の会。女生徒に恥ずかしめを与えたヤンキー女にミルクが刑を執行する……しかし強はそれを見られない。
強は少しはにかみながらヤンキーの胸元に手を伸ばす。ヤンキーもまんざらでもなさそうな表情。しかし強の手はガシッとつかまれて止められる。ミルクの手だ。チョコも手を伸ばしていたがミルクの方が一瞬早かった。
「IDカードを隠しているのは〜ブラジャーの中〜? それともパンツ〜? もしかして、あそこ〜? 私が探してあげるね〜」
ミルクはヤンキーの服の中に乱暴に手を突っ込む。
「うぎゃあ!」
「大人しく出すもの出せば〜痛くしないわよ〜」
「そ、そこはダメ。……そんなとこには入らないよ、堪忍して……あっ、そこはあたし初めてなんだけど……」
チョコは強の背後からジャンプして肩車の様に飛び乗る。
「強、良い子は見ちゃダメ!」
チョコは両手で強の目を覆う。
「今日ほど自分が良い子である事を恨んだ日は無いぞ」
目隠しされたまま、強は暫くヤンキーの喘ぎ声を聞いている。
「は〜い。IDカードゲットしたよ〜」
ミルクがヤンキーのIDカードを強に渡す。何かネトネトしている。強はポケットからカードリーダーを取り出しカードをかざす。ピッと音がする。
「こいつの本名、面白えな」
と呟く強。そして二年の女生徒に声をかける。彼女はミルクの所業に赤面している。
「君には生徒指導室に今日の出来事を報告する義務があるんだ。分かるかい?」
「は、はい」
強が自分の携帯を覗き込む。AIの声で、
『納豆タイカレーパン、くさやの干物風味。今日は売り切れているから明日にしてね』
とのアナウンスが聞こえる。
「納豆タイカレーパン、くさやの干物風味を一つ学食で買って持って行って欲しいんだ。明日でいい」
「分かりました。納豆タイカレーパン、くさやの干物風味ですね。何から何までお世話になってしまって、本当にありがとうございます」
ヤンキーがミルクの方を見て言う。
「最後に一つ聞いていいか? えっとミルク……さん……だっけ?」
「なぁに〜?」
「あんた、カレシ持ちって言ってたけど、本当かい?」
強、チョコ、ミルクが声を合わせて答える。
「本当だよ」
「あたし達をダシに使って池面を軽く振っておいて、その上にカレシまでいるのかよ」
強がヤンキーを慰める様に言う。
「妬むな。治安維持の会のメンバーはこんな奴等ばかりだ」
「おまけにミルクのカレシは強の天敵なんだよ」
とチョコが言う。
「ケンカ十段の天敵がカレシなのかよ。あきれたぜ」
ヤンキーは諦め顔で呟く。
「大丈夫、ミルクは脳みそがオッパイに民族大移動しちゃってるから。弱点を研究していつか一緒に倒そう!」
「チョコ、お前誰の味方なんだ?」
強が苦笑いをする。




