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ガーディアンデビルズ〜学園治安維持の会〜  作者: トミロン
第3部 サイコなヒロイン、演劇部の松戸彩子(まつどさいこ)編
120/243

第120話 第三部へのプロローグ キツネテブクロ

第三部本編とは直接繋がりの無いエピソードが暫く続く。ミルクの病気に関わるお話。


ヒッキーが創り出した仮想現実のダイブのクエストを終えたガーディアンデビルズの一同。クエストの最中激しい頭痛を訴え嘔吐したミルクの事が気になり、強は割井校長とその妻の割井イシヨ医師に相談する。

 昼下がり。割井校長宅。庭には高級な車が一台止まっており、中には六十代の初老の夫婦が運転席と助手席に乗っている。

ビキニにサンダル、上に丈の長い白いTシャツを着ただけのミルクが車に近づきドアをノックする。運転席のガラス窓が開く。


「今日はわざわざお越しいただきありがとうございました〜。お帰りの前に洗車をさせて頂きま〜す」

「そんな事してもらっちゃ悪いわよ」

 と運転席に座っている初老の女性。

「いえ、大切なお客様なので〜せめてこれくらいはさせて下さ〜い」

「本当によろしいんですか?」

 と助手席の初老の男性。


 両側のガラス窓が閉められ、ミルクは洗車を始める。

挿絵(By みてみん)

 白のTシャツが水で濡れて下に着ているビキニがスケスケになる。それを穏やかに微笑みながら車内で眺めている初老の夫婦。


 場面変わってその洗車をしている場所から二十メートルくらい隔てた割井家の室内。応接室で強とテーブルを挟んで割井校長が座っている。そこに割井校長の妻、割井イシヨ医師が入ってくる。トレイには飲み物と軽食。


「いらっしゃい、強君。急ごしらえでこんな物しかできなかったんだけど、召し上がれ」

挿絵(By みてみん)

 彼女はテーブルに料理を置く。ホワイトオムレツとプロテインドリンク。

「ありがとうございます、イシヨ先生」

「鶏のささみ入りのホワイトオムレツとガーリックスライスのソテー、プロテインドリンクよ。召し上がれ」


「おい、イシヨさん、私もこれを食べるのかね?」

「そうよ。最近あなたは持久力、瞬発力が衰えてきているじゃないの。これを食べて強君みたいに逞しくなって。食後にはまむしビンビンドリンクも用意してあるわ」

「イシヨさん、それはミルクがバイト先の魚池ドラッグズアンドコスメで貰ってきたやつじゃないのか?」


「ミルクに飲ませても仕方ないでしょ。あなたが飲むのよ」

 一同、手を合わせる。

「いただきます」

 強はホワイトオムレツを口に運びながらまずは雑談。


 一方、洗車を終えたミルク。初老の夫婦はガラス窓を開ける。

「ざっとですけど〜目立つ汚れは落としました〜」

「本当にお世話様」

 初老の女性はミルクをまじまじと見つめる。

「ところでお嬢ちゃん、おっぱい大きいわね」

「それだけが取り柄ですから〜」

「厚かましいお願いなんだけど、ちょっと触らせてもらえるかしら?」


 助手席の初老の男性がそれを遮る。

「おい、ミルクさんに失礼だろう……すみませんねミルクさん。うちのヤツ図々しくて……」

 ミルクは濡れた白いTシャツを脱ぐ。

「宜しければどうぞ〜」

挿絵(By みてみん)

 女性は車から降りてミルクに近づく。そして両手のひらでビキニ姿のミルクの両胸に触れる。そして今度は手を合わせてミルクの胸の前で拝むような動作をする。目からは涙。

 男性もよろよろと助手席から降りてくる。杖歩行をしている。男性も二人の後ろで杖をつかみながら祈りを捧げるような仕草。


「ありがとうございます。最近、杖を使えばどうにか歩ける様になってきました」

 男性も瞳を潤ませている。

「本当にありがとうね、お嬢ちゃん。お嬢ちゃんは観音様よね」

「それを言うなら神様だろう」

「今日よりも明日、明日よりも明後日がいい日である事を祈っています」

 とミルク。夫婦は涙を拭い車に戻る。エンジンがかかりミルクが見送る。

「(神様……か〜。でも私にはちょっと無理かも〜)」


 割井夫妻宅の応接室では強を交えた三人での会話が続いている。

「じゃあミルクは家ではいつも元気にしているんですか?」

「ああ、彼女は毎朝ご飯を作ってくれたり、家の掃除を手伝ってくれたりしている」

「頭痛を訴えたりは?」

「私は見た事がないな。イシヨさんは?」

「私もないわね」


「ひと月くらい前の話だけど、俺とミルクでマッタに寄った時、あいつは頭痛でしばらく動けずにテーブルで突っ伏していた事がありました。かなり辛そうにしてました」

「本当なの?」

「ええ。あとついこないだ、ヒッキー達とダイブで対決した時、ミルクは激しい頭痛に襲われて何度もゲロしていました。ダイブ中の事なんで、現実の健康とは関係ないかもしれないけど」

 割井校長が操るソードプリンシパルは、ミルクが嘔吐した時には既に彼方に投げ飛ばされており、この事実は見ていない。


「どうしてそんな事になったのかしら? 何かきっかけとかは無かったの、強君?」

「頭が痛くなるようなイベントはなかったはずだけど……そうだ、ミルクは何か食べ過ぎたとか言っていました」

「甘いものとか? ダイブ中のイベントで?」

「そうじゃなくて……確か……えっと、キツネテブクロがどうとか言っていた様な……」

「キツネテブクロ? 何かしらね」

 一同、携帯を取り出して『キツネテブクロ』を検索する。


「新美南吉の童話『手袋を買いに』くらいしか検索にはヒットしないわ。キツネが人間の街に手袋を買いに行く話よね。……強君、本当に『キツネテブクロ』で間違いないの?」

「かなりインパクトのある言葉でしょ? 俺の耳にははっきりそう聞こえたけど」

「一度本人の口から確かめる必要があるな」

 と割井校長。



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