第113話 第二部エピローグ① 道具屋に戻るまでがクエストです
ラスボスのヒッキーを倒した強とくのいち。無事にミルクの道具屋まで戻れればミッションクリアーだ!
「強、ヒッキーは腹をざっくりとやられているわ。ここは介錯が必要じゃない?」
くのいちは負けを認めたヒッキーをまだ許す気にはなれない様子。
「俺にヒッキーの首を斬り落とせって言うのか?」
「カタルシス満点よ」
くのいちの瞳には赤い輝きはとっくに消え失せている。これは彼女本来の残虐性なのか?
「拙者は強殿の意向に従うのみでござる」
完全に観念しているヒッキー。
「クエストは終了って事でいいんだよな、ヒッキー? だったら一緒にミルクの道具屋に戻ろうぜ」
「介錯は? 介錯!」
飽くまで残虐な処刑を望むくのいち。
「ヒッキーがこの世界から消滅すると、おそらく崩壊が始まるぞ。俺とお前は怪我をしている。道具屋までたどり着けるか? 地獄へのハネムーンだぞ」
「ヒッキーを倒してあたしと強で行ける所まで行く!」
とくのいちは自分の感情を優先させる。
「この前のダイブではミルクは崩壊に巻き込まれたそうだ」
節陶子が消失し、陶子の仮想現実の世界が崩壊。ミルクは足腰を痛め動けなくなってしまう。
「そうなの? あたし聞いてないけど」
「節陶子ちゃんが話してくれた。ミルクは道具屋に戻る途中で落とし穴のトラップにはまったらしい」
「それで?」
「あいつは竹槍で全身串刺しにされた。股間に竹槍が突き刺さり内臓を貫通して口にまで達した様だ」
それを聞いてくのいちは青ざめる。
「ヒッキー、一緒に戻るわよ」
とくのいちは諦めた様に言う。『股間に竹槍が……』のくだりは強の誇張だがくのいちには効果てきめんであった様子。
「強殿、玉すだれを使って下され」
「使うって一体……」
「玉すだれの両端を持って横に伸ばして下され。それで弁天さまを作るでござるよ」
強は玉すだれをさっと伸ばし、大きな楕円を作る。
「ちょいと伸ばせば……弁天様に早変わり……ってか?」
強はそう呪文を唱えて肩から頭上に掛けて楕円形に伸びた玉すだれを垂直に立てる。するとそれはメカくのいちに変型する。
「またのご指名誠にありがとうございます」
うやうやしくお辞儀をするメカくのいち。
「メカくのいち、拙者達を道の駅常陸大宮まで運んでくれ。そこから先は拙者の空間転位でミルクちゃんの道具屋にたどり着けるでござる」
「分かりましたマスター。すぐに送迎用の車両を用意致します」
「ヒッキーをここで助けるっていう選択がクエストクリアの正しい道って訳なんだな」
「あたし何か納得いかない」
「ちょっと待っておくれよ」
とシスター。
「あんたのつばめ返しは完璧だ。これなら宿代はいらないよ」
そう言ってミルクの金のネックレスを強に渡す。
「あのオッパイの大きな子に返してやってくれ」
「(つばめ返しはこのゲームクリアの為の重要な鍵だったんだな。くのいちからの助言もあって正解に辿り着けた)」




