第110話 強とのエッチな思い出
ヒッキーの課すクエストをどうしても解けない強とくのいち。このままシェフの肉切り包丁の餌食となってしまうのか? ゲームオーバー間際の二人。人間、最期には本性が出る。
しびれを切らしてヒッキーが言う。
「惜しいね。切磋琢磨ならあっという間に解いたのだろうけど。これだけ分かりやすいヒントを出してもダメなら、あとは君達のバッドエンドに向けてゲームを進めさせてもらうよ。地獄へのハネムーンに旅立たせてあげよう。シェフ、やってくれ」
シェフはうなずくと、肉切り包丁を構える。
「二人とも、もうライフポイントは幾らも残っていませんよね。どちらから先にいきますか、と」
強とくのいちには武器は無く丸腰。しばし二人は見つめ合った後、くのいちが口を開く。
「あたしは最後まで考えているから、強、あんたが先に行って! 死に水は取ってあげるから!」
いかにも忍者らしい言い回しだが、最後には自分だけ助かりたい様にも聞こえる。人間、最期には本性が出るもの。彼女に自己犠牲の精神はないのだろうか。半ば唖然として強が言う。
「ちょっと待て。『くのいちえ』を並び変えると『イクの? エッチ♡』にならないか?」
「あんたそういう下ネタを言うキャラじゃないでしょ! 人間最期には本性が出るのね!」
「お前、よく人の事が言えるなあ」
そんな会話でくのいちは、周る走馬灯の如くこの期に及んで強とのエッチな出来事を思い出してしまう。
……アウトレットデートを賭けて一戦交えようとした時、ミルクが強とくのいちの闘いをやめさせようとして突然傍に布団を敷く。
『ケンカして 布団の中で 仲なほり』
と一句読むミルク。
『それは季語が入っていないから川柳よ』
とくのいちがミルクに注文をつける。
『布団は冬の季語です。今度の古文の試験に出るかもしれないので覚えていて下さい』
と琢磨は言う。古文の試験……くのいちはハッとする。
「分かった!」
「流石カラダはオトナ!」
と強が言う。くのいちが謎解きをするのか? まさかこの展開でノリツッコミは無いだろうが。
「『ご』は古文調に『吾』と書き直すのよ。そうするとこのアナグラムは『吾、比企新斗』となるわ。『われ、ひきにいと』。ヒッキーはシェフ、あなたよ!」
シェフは深々と頭を下げる。そして全身をブルブルと振るわせ始める。
「どうした?」
と強。
シェフの体の震えは次第に強くなってゆく。彼はそのままヒッキーを捕まえ強くハグする。強く震えたままシェフとヒッキーは融合し二人は本者のヒッキー一人となる。
「くのいち殿、正解でござる。いかにも拙者が本者の比企新斗でござる」
「やっぱりな。本者は語尾に『ござる』をつけるんだ。俺の推理通りだ」
「推理になってないわよ!」
「いよいよ最終ステージでござる。最後は強殿との一騎打ちを所望す」
肉切り包丁を構えてヒッキーは言う。
「(何か武器の代わりになる物はねえのか?)」
と辺りを見回す強。くのいちのソードプリンシパルはミルクがどこかに投げ飛ばしてしまった。取り敢えず股間のボロボロのカップを盾に変えて、何か棒状の物でも見つけて闘うしかないのか?
その時機械メイドことメカくのいちが言う。
「強さん、私を武器に使って下さい」




