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ガーディアンデビルズ〜学園治安維持の会〜  作者: トミロン
第2部 天才ゲーマー&プログラマー比企新斗(ひきにいと)編
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第101話 これじゃあエクスタシーが得られないわっ!

 琢磨の圧迫面接という精神攻撃に、すっかり戦意喪失のヒッキー。このままテクニカルノックアウト負けか? 賞金の使い道を考え始める面々。「結婚式を挙げましょう」と琢磨に提案され舞い上がるミルク。くのいちはそれに対抗してとんでもない提案をする。

 ヒッキーの落胆をよそに、このクエストの賞金三百万円が気になり始めるくのいち。

「(あたしが賞金を全額ゲットしたら、それを元手に生徒のみんな相手に金貸しを始めよう。十日で一割くらいの利息をつければ、楽に儲けられるわよね)」


 強も小声で独白。

「投資部の奴が言っていたが、五十万円有れば牛丼屋の株が買えるらしいな。お食事券やなんやらで年間一万二千円分くらいの牛丼が食えるそうじゃないか。月に二回タダで牛丼が食える。俺の人生勝ち組は決定したな」


 くのいちそれを聴いて心の中で独白。

「(仕方ない。五十万くらいは強に譲ってあげてもいいけど、隙を見せたらあたしが横から掻っさらう)」


 琢磨はテーブルの向かいに座っているミルクに小声で囁く。

「このクエストに勝ったらさっきの続きをしましょう。折角素敵な式場とドレスもある事ですし」

「それって、け、結婚式? 嬉しい! 琢磨さん!」


 冷静に考えるといくらなんでもヒッキーのいる前で結婚式の真似事を始める訳にもいくまい。それにヒッキーを倒してしまえば恐らくこの世界の崩壊が始まるだろう。ミルクはそれを節陶子とのダイブで既に経験している。

 『ダイブの世界の崩壊』そのキーワードでミルクは変な事を思い出す。


「(私が節陶子とダイブして崩壊に巻き込まれた後日、弁護士の節操先生と戦う為に琢磨さんも節陶子と二人でダイブした。ダイブから戻って来た時琢磨さんは『わがままなあの子を成敗していました』と言っていた。あの時、陶子の構築した精神世界の崩壊は起きなかったのかしら? あの時何があったのだろう?)」

 という疑念がチラッとミルクの脳裏をかすめる。

挿絵(By みてみん)

 本当は琢磨の指輪のVアラームが発動していなければ、節陶子とダイブの世界で一線を軽くまたいでいたはずなのだが。ミルクもそれには薄々気づいているはずである。しかし今はそんな事を悠長に考えている場合ではない。


「じゃあ続きはリアルの世界でね〜」

 ミルクは色んな思いを込めて琢磨にそう答える。琢磨がその言葉の意味をちゃんと受け取ってくれたかは分からないが、ミルクは幸せな気分で一杯になる。まずはゲットした賞金で二人でイギリスに旅行して、ゆくゆくは……


 ヒッキーは何やらぶつぶつと呟きながら部屋の中を徘徊している。その様子が気になった強が問いかける。

「ヒッキー、元気無さそうだけど大丈夫か? 今回のクエストは俺達の勝ちって事でいいのか?」


「ダメよ!」

 と声を上げるくのいち。

「こんな決着じゃ、その、何て言えばいいの……全然エクスタシーを得られないじゃない!」

 強、ヒッキー、機械メイド、シェフ赤面。シスターはほくそ笑んでいる。


「強く〜ん、くのちゃんをどうにかしてあげて〜」

「ねえ強、エクスタシーを得るにはどうしたらいいの? あんたも協力してよ」

 琢磨はずっこけて自分を変な風に縛っている。


「お前、ユーキューブの切り抜き動画再生回数でヒッキーを抜いちまうぞ」

 『つばめ返しの合体技を二人で完成させよう』に続いて、またも切り抜き動画のネタを提供してしまうくのいち。


「くのいちさん、それを言うならエクスタシーじゃなくてカタルシスじゃないですか?」

「えっ……そ、そうとも言うわね。もうエクスタシーでもつばめ返しでも好きに切り抜き再生するがいいわ!」


 くのいちは、すっかりしょげているヒッキーを睨みつける。

「ヒッキー、あんたあたしに求婚しなさい!」

挿絵(By みてみん)


 突拍子も無いこの言葉に一同唖然。どうやら琢磨に求婚された様な形になったミルクに、変な対抗心を燃やしているらしい。

「きゅ、求婚って。チューリップですか、ヒヤシンスですか?」

「つまらないダジャレは禁止! 言う事を聞かないと、リアルの世界に戻った時にあんたをいじめるわよ!」


「た、例えばどんな風に」

 くのいちはニヤリと笑い、ヒッキーをいたぶる様にこう言う。

「あたしがゲットした極秘情報によるとあんた、とある女性Vチューバーの大ファンなのよね? グリセリン艦長ちゃんだっけ?」

挿絵(By みてみん)


「ど、どこでそれを……」

「ふっふっふっ。あたしの情報網を甘く見ない事ね。昼休みにあんたが隠れてグリセリン艦長ちゃんのパンチラ動画を食い入る様に視聴していたのを何度も見た事があるわ。あんたのお見舞いに行った時も、ライブ配信中の艦長ちゃんに自分のコメントを読んで欲しくて必死に投げ銭をしていたわよね」

挿絵(By みてみん)


「見られていたのか……」

「グリセリン艦長ちゃんのトレードマークのアイパッチをあんたがコレクションしているのも知ってるわ」

「ぼ、僕の眼帯コレクションまで知っているとは……」


「あんたの名前を使って、艦長ちゃんのサイトに放送コードギリギリアウトなあぶない書き込みを一日百回も繰り返したら彼女どう思うかしら?」

「よくもそんな酷い事を考えつくもんだな。とても人間の所業とは思えない」

 とあきれる強。

「わ、わかりました。何でも言う事を聞きます。僕と結婚してください、そこの鬼の様な女の人」


「あたしとどうしても結婚したいのね。そんな事を申し込んだらそこのケンカ十段が黙っちゃいないわよ!」

 と強を指差すくのいち。

 強引な展開に呆気に取られて言葉も出ない強。


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― 新着の感想 ―
くのいちちゃんの横暴ぶりが、見事に発揮されている、しかし、どこか可愛げのある場面でしたね。言い間違いもここまで来るとお見事です。みんな、一気に吹き出したことでしょう。今回もとても面白かったです。
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