くノ一
姿を現したのはどう見ても忍者、しかもくノ一・・・つまり女性だった。森の中だからか緑色の装束で全身を覆っており、顔も隠している。なんで女性か分かったかって?出るところが出てるし・・・言わせんなよ。
「お前たち・・・ここに何の用だ?」
ほら、声からしても女性だ。・・・って今はそれどころじゃない。
「俺たちは【盗賊ギルド】のギルドマスターのゴエモンさんの紹介で、忍の里を目指しているところだ。」
俺は目の前の相手を刺激しないように説明する。せっかくの手がかりだ。逃がしたくはないな。
「ゴエモン先生の?・・・証拠はあるのか?」
俺は【盗賊ギルド】の紹介状を謎のくノ一に見せる。
「・・・確かにこれはゴエモン先生の字・・・そうか。」
くノ一は納得したかと思うと顔を覆っていた布を取り払った。
「失礼しました。私はキキョウと言います。お名前を伺っても宜しいですか?」
急に下手に出たような態度に変わる。どうやら信じてくれたようだ。キキョウと名乗った女性は、20歳くらいの黒髪で整った顔をした和風美人といった感じだ。おっと俺たちも自己紹介しないとな。
「俺はアルク。こっちは俺の【眷属】のアーテル。」
「僕はラング。こっちはヒュント。」
「私はロゼといいます。この子はヒュームです。」
キキョウさんは笑顔を返してくれる。とりあえず俺たちを信用してくれたらしい。これなら大丈夫かな。
「ありがとうございます。それでは私が皆さんを忍の里へご案内します。私に付いてきてください。」
そういってキキョウさんは歩き出す。それは俺たちが向かっていた方向そのままだった。どうやら俺たちが進んでいた方向で間違っていなかったようだ。
「どうやら運が良かった・・・というわけでもないようだね。多分、亡霊武者を何体か倒してたら監視が出てきて、その監視に気付くのがフラグだったようだね。・・・ところでアルク、どうやって彼女に気づいたんだい?」
彼女の後を付いていきながら小声でラングが話しかけてくる。
「・・・さあ?【気配感知】に引っ掛かった感じがしたんだが・・・ラングたちは分からなかったのか?」
「僕は気付かなかったね。」
「私もです。」
「ふむ、となると【気配感知】のレベルかな。あとは一定以上のステータスかどうか、か。アルク、よかったら後で【気配感知】のレベルと今のステータスを教えてくれるかい?」
「ああ。」
忍の里のことは後でアテナたちにも教えるつもりだからな。何か条件があるならそれも教えておいた方が良いだろう。・・・と、そうだ。目の前のくノ一には聞いておくことがあるな。
「なあ、キキョウ・・・さん。一応聞くがなんで俺たちを監視していたんだ?」
まあ、普通に自分たちの里に近づく奴がいれば監視ぐらいするだろうけどな。正直、もっと早く、というか俺が話しかけなかったらずっと監視を続けるつもりだったのだろうか?
「キキョウで良いですよ。この樹海は亡霊武者が彷徨っていますから、私たち忍びの者は里の警備もかねて巡回を行っているのです。その途中で皆さんをお見掛けしました。ただの冒険者なら問題はなかったのですが、皆さんは明らかに目的をもって進んでいるように見えましたので監視しておりました。」
・・・警戒するのも当然だが、それってつまり、亡霊武者が俺たちに襲い掛かってたのを黙って見てたってことだよな。俺たちは問題なく倒せていたから問題なかったが、もし俺たちがやられそうになっていたらどうなっていたのだろうか?
・・・まあ、仮に何の関係のない冒険者・・・つまりプレイヤーの前に出てきていたら忍者が出たって大騒ぎになっていただろうな。多分、ラングの言った通り、フラグが立ってないと出てこなかったんだろう。
「ちなみに、貴方はなんでこの樹海に亡霊武者が彷徨っているのか知っているのかな?」
俺に続いてラングも質問する。情報系クランのリーダーとしては情報は集めるだけ集めたいってことなんだろう。確か情報を集める一番の方法はNPCに詳しく聞くことだって前に言っていたしな。
「・・・すいません、私の口からはお答えはできません。里に着きましたら長にお聞きください。」
・・・あ、これもフラグだな。なんか理由があるっぽい。忍の里がこんな危ねぇ場所にあるのと関係があるのかな?ラングがなんか嬉しそうにしている。多分、なんかイベントが起こると確信したんだろう。あと、忍の里の長とやらに会うのも確定したな。・・・忍びたちの長・・・やっぱり歴史上の人物だろうか。
「・・・さあ、もうそろそろです。」
そうキキョウが言うと進行方向に見えてきたのは・・・大岩だった。
「ここです。」
「ここですって・・・岩しかないようですが・・・」
ロゼさんの疑問に答えることなくキキョウは大岩に手を当てて・・・
「・・・開門!!」
と言うと大岩がカパッと真っ二つに割れ左右に移動した。まるで引き戸が開くように・・・忍びすげぇ。
「さあ、どうぞ。」
キキョウはその大岩の間をくぐり向けていく。俺たちもあわてて後に続いた。
===移動===>忍の里
大岩を潜り抜けた途端、俺たちが見る光景が一変した。どこまでも続いていた樹海がなくなり、青空が見える開けた場所に建物や畑が並んでいる。そして道を行く着物姿の人々・・・その光景はどう見ても村だった。
「ようこそ、忍の里へ。」
キキョウが朗らかに俺たちを歓迎してくれる。こっちは驚きっぱなしだが。
「驚いたね。まるで【転移装置】で瞬間移動したみたいだ。」
「瞬間移動ではありませんよ、ラング殿。【幻術】で作られた結界です。決まった扉を通らないと決して中に入ることはできません。」
・・・どうやらここの忍者は【幻術】も使えるらしい。忍者すげぇ(2回目)。
「さっそくですが皆さんを長の元へ案内します。詳しい話は長となさってください。」
そう言ってキキョウは再び歩き出し、俺たちもその後に続く。あ、アーテルたちは幼体に戻ってもらった。とりあえず戦闘はなさそうだしね。
・・・
村、というか里か、の様子は至って普通だった。木造の家が立ち並び、そこにいる人たちは着流しのような着物を着て、ある男は鍬を持ち、ある女性は洗濯を、空き地では子供たちが遊んでいる。
普通だ。普通過ぎて逆に不自然だ。よそ者の俺たちには目もくれず自分たちの作業をしている・・・ように見せているが、不自然にならない程度に俺たちを見ている。俺たちに視線を感じさせない程度にさりげなく。大人たちだけではなく子供たちまでもだ。・・・よく訓練されているな。
やがて大きなお屋敷にたどり着く。里の中で一番でかい、立派な日本家屋だった。キキョウが門番らしき男に話しかける。
「長にお客人を連れてきました。ゴエモン先生の紹介です。紹介状もお持ちになっています。」
「ゴエモン先生の?・・・わかった。通ってくれ。お客人たちもな。」
・・・楽なのは良いんだがいささか不用心な気もするな。ゴエモンさんはそれほど信頼されてる人物なんだろうか。
「さあ、皆さん。中へ。」
そういって屋敷の中の客室らしき場所に通される。キキョウは一旦席を外した。どこへ行ったかはわからない。・・・ここまで来て罠だったとかないよな?
「・・・あ、お茶おいしい。」
「そうですね。うちの店でも出したいくらいです。」
・・・ラングとロゼさんは暢気にお茶を啜ってるし。・・・と言いつつ俺も飲むけど。・・・あ、ほんとだ。おいしい。
と、そこで部屋の中に入ってくる人物がいた。一人はキキョウ。もう一人は見たことがない(当たり前)男性だった。見た感じ、キキョウより少し年上程度でずいぶん若い感じだがまさか・・・
「待たせてしまって申し訳ない。私がこの忍の里の長、ハットリハンゾウだ。」
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