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不死山

「絶景だな。」


富士山はテレビや写真なんかでしか見たことがないのだが、こうして見ると絶景だな。・・・ゲームの中だけど。あと富士山じゃなく不死山らしいが。


「確かにね。しかも空から見ると余計に雄大に見えるね。リアルだったらヘリでも使わない限り見れない光景だからなおさら珍しいね。」


ラングの奴も目の前の光景に感嘆しながらスクショを撮っている。ロゼさんは録画しているようだ。


しかし、あれだな。富士山・・・じゃなくって不死山の頂上とかにボスモンスターとかいそうだな。・・・やべぇ、フラグ立っちゃったか?


ま、まあ、不死山のことはともかく、地図にある忍の里は麓の森の中だ。・・・森っていうより樹海か。富士で森と言ったら青木ヶ原樹海、別名富士の樹海だろう。


ただ、リアルでの富士の樹海とちがって、眼下に広がる樹海は不死山をグルっと取り囲むように存在している。確かリアルの富士の樹海は山の北西にある森だったはずだ。目の前の山が富士山と同等の大きさだとすると眼下の樹海はけた違いの広さだということになる。なんでもかんでもリアルと同じというわけでもないらしい。


「上空から見る限り、里らしい物は見当たらないね。事前情報通りに上空から探しても見つからないようだ。」


「それにこの広さだと闇雲に探してもまず見つからないでしょうね。」


確かに情報なしに忍の里を見つけるのは難しいだろう。仮に俺たち以外のプレイヤーがここを訪れたとしてもスルーしてしまうだろうな。富士の樹海は一度入ると出られないなんて言われているが、たしかにここなら忍者が隠れていてもおかしくないかもしれない。


「・・・とりあえず降りるか。地図の場所だと大体この辺りみたいだしな。」


ホントに大体だけどな。そもそも地図自体、大雑把にバツ印が書かれているだけだ。これで細かい座標を見つけろと言われても無理がある。まあ、愚痴を言っても始まらない。ここまで来た以上、探さないわけにもいかないだろう。


俺たちは慎重に樹海の中へと降りて行った。


===移動===>不死樹海南西部


「暗いな・・・」


降りてみてわかったが、樹海の木は予想以上に巨大で乱雑に並んでいた。そのせいで日の光が僅かにしか入ってこず、地上は予想以上に薄暗かった。


「そうだね、それにそこはかとなく不気味に・・・」


「リーダー!」


ロゼさんの声に俺たちは振り返った。彼女の視線の先に見えたものは・・・鎧武者だった。


【亡霊武者 Lv.38】

樹海を彷徨う武者の亡霊


亡霊!?妖怪じゃないのか?目の前の鎧武者は全身灰色の鎧を纏い、顔も仮面で覆われていて中身はわからない。・・・亡霊だから中身はないのかもしれんが。


鎧武者はボロボロの刀を抜きながらゆっくりこちらに向かってくる。


「・・・ラング、あの敵を知ってるか?」


「いや、あんなのは初めて見るよ!話にも聞いたことはないね!」


「ここに来て新しい発見の連続ですね!!」


・・・ラングとロゼさんは大喜びだ。盛り上がるのは良いんだが、まずは目の前の敵を倒すことを考えてほしいんだが。


ゆっくり目だった鎧武者はボロ刀を構えながら走り向かってくる。狙いは・・・ロゼさんのようだ。


「ロゼ!」


「分かってます!!」


ラングの声に反応したロゼさんが取り出したのは・・・鞭だった。・・・鞭?


・・・俺の疑問をよそにロゼさんは鞭で鎧武者をベシベシと叩き始めた。鎧武者を鞭で・・・すさまじくシュールな光景だが・・・気にしないでおこう。ただ、ダメージはあるみたいだ。亡霊なのに。


ロゼさんの攻撃に続いてグリフォンたちも風の魔法で攻撃を行っている。そして・・・


「邪悪なるものを浄化せしめよ!【聖なる十字架(ホーリークロス)】!!」


ラングの放った【浄化魔法】・・・光の十字架が鎧武者に直撃し、・・・その体を灰にした。


・・・俺の出番がなかった。


「クルルー・・・」


アーテルもだな。だが、あの魔法を見る限り、物理攻撃も効くし、【浄化魔法】も有効だ。俺達が戦うのも問題ないだろう。・・・次は俺たちがやってやる。


「素材も手に入ったね、亡霊武者の鎧のかけらに、欠けた刀。やはり聞いたことのない素材だ。ガットあたりが喜ぶかもしれないね。」


「・・・なんでだ?」


「素材によっては新しい武器とかそれにしかない能力の武器とかが出来たりするんだよ。特にこういう元刀みたいなものは修復という形で刀になったりするしね。」


と、言うことらしい。生産職も奥が深いようだ。まあそれはそれとして、だ。


「・・・にしても妖怪じゃなく亡霊っていうのはなんでなんだろうな?」


「場所柄なのか、何か由来があるのかもね。ダンジョンなんかでもそれに由来するモンスターが出てきたりするしね。調査はおいおいするとして目的地へ急ごうか。ロゼ、周囲に何かあるかい?」


「いえ、軽く見てみましたがどこまでも樹海が生い茂っているだけですね。気になるようなものは何も・・・」


どうやら俺たちが話している間にロゼさんは周囲を探索していたようだ。・・・なんだろうな。二人の慣れた感じというかツーカーというか、息が合ってるような感じ。これが年季の差か。・・・たった一か月程度のはずなんだが。


「ふむ、困ったね。道らしき道もないし何処を目指せば良いものか。」


確かに。・・・これまでの経験上、モンスターが出てきた方向に何かあったりするんだが・・・さっきの亡霊武者は樹海を()()()武者の亡霊と【看破】の説明にあった。彷徨う存在である以上、どこからか来たとは考えにくい。


それに忍者が亡霊武者を放ったとも考えにくいしな。・・・そもそも亡霊が彷徨ってるところに里があるのか?段々不安になってきたな。


「・・・じっとしていても仕方がない。とりあえず不死山を目指して進んでみるっていうのはどうだ?良い目印だし。」


ほとんど空の見えない樹海だがあの大きな山は隙間から見える。仮に見えなくてもアーテルたちがいるから空に出れば方向もわかる。


「・・・そうだね。闇雲に探すよりはそっちのほうが良いだろうね。」


「異存はありません。」


こうして俺たち三人・・・と三体は樹海の中を歩きだした。


・・・


歩き出して一時間ほど。代り映えのない光景の中、不死山を目指して歩いていた。道中何度か亡霊武者が現れたが問題なく撃退していった。ただ、彷徨うという言葉通り、現れる方向はてんでバラバラでアテにはならなかった。


「うーん、これだけ歩いても手掛かりがないねぇ。」


「そうですね。こうなると時間をかけて探すしかないのかもしれません。そうなると何日かかかるかもしれません。応援も視野に入れるべきでしょうか?」


「・・・」


二人は今後のことも視野に入れて、どうやって忍の里を探すかを話し合っていたが、俺は他に気になることがあって話に参加していなかった。


「クルルー?」


アーテルが俺のすぐそばにまで来て鳴く、何かを警告するかのように。・・・どうやらアーテルも気が付いているようだ。


「・・・アルク?どうしたんだい?」


・・・どうやらラングやロゼさんは気づいていないようだ。スキルの差だろうか?それともクラスかレベル?それとも種族?・・・わからないな。


「アルクさん?」


・・・こうしていても埒が明かないな。今ある手掛かりは・・・俺は近くの木の上方を見て叫ぶ。


「おい!いつまで見てるつもりだ!!出てこい!!!」


先ほどから・・・3体目の亡霊武者を倒してから()()()()()()()()()()()()()()に。


その声を聞いたからかその何者かは木の上から降りてきた。


「「!?」」


二人は驚いている。俺は・・・およそ見当がついていた。


そう、そこに現れたのはどう見ても・・・忍者だった。

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