ありえざる力
【固有能力】については俺もいまだ良く分かっていない。
ただ人を操る力っていうのは心当たりがある。
ウィキッドの【固有能力:模倣者】・・・奴はその力を使って他のプレイヤーを操っていた。
まさかウィキッドが前社長だったってオチはないだろうが・・・同じように人を操る【固有能力】があってもおかしくはない。
それを前社長が持っていて、しかも現実世界で使っていたっていうのか?
「問題はそこじゃな・・・小僧、お主の【固有能力】は現実でも使えるのかのう?」
・・・【固有能力:天醒者】の力を現実でも、か。
実は俺も考えたことはある。【固有能力】が俺個人の力なら、その力はゲームの中だけではなく現実でも使えるんじゃないかと。
ただ、ゼルクやウィキッドのように自分の体を作り変えるような非現実的なことを現実でもできるとは思えなかったので、あくまでゲームの中だけで有効な力なんだとは思っていた。
まあ、それでも一応は現実で試してみたことはあるんだが結論から言うと・・・
「・・・良く分からんかった」
「なんじゃい、それは」
俺がゲームの中で【固有能力】を使おうとするとき、『【固有能力:天醒者】の効果により〇〇〇が発動しました』みたいなアナウンスが流れるんだが、現実では当然アナウンスが流れることはない。
【天醒:隠匿突破】や【天醒:制情回避】を試してみても、ゲームの中ほど劇的な効果はなかった。ただちょっとカンが良くなったかなぁ・・・とか、いつもより落ち着いてるなぁ・・・とか、微妙な効果があったような、なかったような・・・そんな感じだった。
体が劇的に変化するような力で確認できればよかったのだが、あいにく俺が使える力の中にはそのような力はなかったのだ。そういう系統の力はゼルクに取られてしまったみたいだ。
なので結局の所、はっきりと確かめることができなかったのだ。
「ふむ、それはまた微妙じゃのう・・・じゃが、ありえないわけではないみたいじゃな」
「【固有能力】は俺だけの力じゃないみたいだから、可能性は・・・あるかもな」
いまさらだが話がどんどん非現実的な方向に行ってる気がするな。
前社長が【固有能力】を使って人を操るようなことができるのなら、ジジィが不審に思っているような、不自然にトラブルが起こっていない状況の説明はできるだろう。
「だが、結局の所・・・目的がわからないんだよなぁ」
「そうなんじゃよなぁ」
仮に前社長が不可思議な力を使ってこのゲーム開発を行っていたとして、その目的が不明だ。
そもそも前社長は亡くなっていて・・・まさか?
「そういえばジジィ、このゲームの中で既に亡くなっている前社長を探しているって言っていたよな」
「うむ、そういう依頼じゃったからな。ワシは亡くなったはずの前社長が実は生きていて、このゲーム内で何か企んでいると思っとったんじゃが・・・これまたお主の話を聞いて考えが変わったわい」
・・・アテナたちは精神だけがこのゲーム内で行動し続けていて、肉体の方は目覚めていない。
同じように肉体が無くとも、精神だけがゲーム内で活動できるのだとしたら・・・もしそれがゲームが起動し続ける限り、永遠と続くのだと知れば・・・確かにこのゲームはただのゲームじゃないということになる。
それこそ金持ち連中がこぞって投資しても不思議ではないほどの・・・
「・・・」
「・・・」
俺もジジィも思わず黙り込んでしまう。ことは俺たちが考えているよりもずっと深刻でスケールのデカい話なのかもしれない。
・・・そういえば他にもう一つ、気になることがある。
「・・・俺はアニスたちの黒幕が前社長なのかと思ってたんだが、アミネが言っていたんだよな。アニスたちの協力者でも知らないものがこのゲームにはある、と」
「ふむ、そうなると前社長ですら知らないものがこのゲームにあるということになるのう」
しかし、そうなると話がおかしくなる。このゲームを作った張本人である前社長に知らない部分があるなんて・・・アニスたちの協力者は前社長ではない? もしくは・・・このゲームを作ったのは前社長ではない、とか?
「そしてアミネによれば、それはこのゲーム世界の奥地にあるらしい」
「・・・要するに真実を知るためにはこのゲームを攻略しろということじゃな・・・良し! なら後のことはお主に任せるぞい!」
「・・・はい?」
何言ってんだこのジジィは。
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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