弱者が敗者とは限らない
「・・・アヴァン、反応は?」
『反応は既に遥か空の彼方なのだ距離から考えてスカイエリア8まで行ってしまったようなのだ。追撃は不可能なのだ』
やれやれだ。ようやく人騒がせな嵐は去ったらしい。
『本当にあのまま行かせて良かったのだ?』
「良くは無いんだがな・・・現状の俺たちの力でアミネを捕らえるのは無理があるだろう」
本当なら透明化した【ガタック君】でも忍ばせてやろうかと思ったがアミネの奴はほぼ裸・・・ゲフンゲフン! ・・・服らしい服を着ていなかったからな。忍ばせる場所が無かった。まさか素肌に取り付けるわけにもいかないし。
結果としてアミネは再び行方不明になってしまったが・・・コンタクトを取れただけまだマシだろう。約束も取り付けたしな。
ただ、それで良しとしない者たちもいる。
「・・・やられっ放しだったわね。色々と」
「ええ、マイペースというか自分勝手というか・・・もう少しお話できれば良かったんですが」
せっかく見つけたにもかからわず逃がす結果となってしまい、アテナとアルマも残念そうだ。まあ、アミネの方は迎えを用意していたことを踏まえると最初から長居する気もなかったようだが。
では何をしに来たのかといえば・・・やはり、アテナとアルマの様子を見に来たんだろうな。
さっきの質問の中であえて聞かなかったが・・・もしも俺たちがモンスターたちや【風王鳥フレースヴェルグ】に敗北していたら、アミネはどうしていたか。
もしかしたら俺たち【アークガルド】がアテナとアルマの居場所としては不適格として、二人を連れ去っていたかもな。現実的なことを言えばアミネの元でパワーレベリングしていた方が、強くなれる可能性が高いし。
勝ちを拾えたからこそ、二人を任せる気になったんだと思う。・・・そこまで考えず、ノリと勢いでちょっかいかけて来ただけのような気がするが、気にしないでおこう。
「ブランちゃんたちが心配なのです」
アーニャはアミネに操られていたブランたちが心配なようだ。
一応、死に戻ったアスターからアーテルたちは無事だという連絡は来たが・・・俺もアーテルの事は心配だからな。一刻も早くクランホームに戻りたい所なんだが・・・その前にもう一つだけやるべきことがある。
「カイザー、例の物はちゃんと仕込んだんだよな?」
「ハイ、【グランディスボム】ヲ10個、例ノ小島ニ仕込ンデオキマシタ」
カイザーの言葉にギョッとするメンバーたち。
・・・確かにアミネとは結果的に敵対することは無かったのだが・・・ぶっちゃけ俺たちからすれば、アミネにはしてやられっ放しだ。モンスターをけしかけられ、アシュラやアスターを倒され、アーテルたちまで操られたわけだからな。
アミネに仲間になれと言った俺ではあるが、それはそれ。お返しはきっちりしないいけないと思うんだ。
というわけで、実はカイザーとミネルヴァに例の浮遊小島に【グランディスボム】・・・つまり爆弾をセットさせていたのだ(笑) これも万が一の時のためのものだったが・・・備えっていうのは重要だな。
「あの炎が小島を包んだ時は誘爆するか思って焦ったが、そうでもなかったな」
「オソラク、アノ巨大モンスターハ炎ノ温度ヲ自由ニ変エラレルノデハ? ソウデナケレバ、中ニイタアノ女性モタダデハ済マナカッタハズデス」
ふむ、それもそうか。つまりは今も【グランディスボム】は誘爆することなくアミネが腰かけていた浮遊小島の中で健在だということだな。
クックック、さしものアミネもこれは予想外だろう。
「・・・アミネは弱肉強食と言っていたが、弱者が常に強者に負けるわけじゃない。時に弱者も噛みつくってことをアミネにも教えてやらないとな。というわけでカイザー・・・やれ」
「了解デス。起爆シマス」
ボォォォン!!
・・・どこか遠くで何かが爆発したような音が聞こえた・・・気がする。
「まあ、この程度じゃあアミネはビクともしないだろうが・・・一矢報いたってことで。俺たちも撤収しよう」
俺は満面の笑みを浮かべながらメンバーたちにそう言った。
『アルク・・・恐ろしい男なのだ』
・・・
・・
・
「クルー!!」
クランホームに戻ってくると自由を取り戻したアーテルが抱き着いてくる。
やはりアミネは歌でアーテルたちを操っていたようで、歌が聞こえないクランホームまで戻って来るとさすがにその効果は切れるようだ。
アーニャも自由を取り戻したブランたちに抱き着いている。
その光景はほほえましいものだが・・・確かにアミネの言う通り、【眷属】が操られるというのは予想外だったな。今回は【送還】で元に戻ったから良いものの、【送還】できない状況だったら・・・もしくは【送還】しても元に戻らなかったら・・・ゾッとするな。
特にアーニャに関してはかなり致命的だ。なんせアーニャの場合、戦闘は全て【眷属】任せだからな。もしアーニャたちだけで、【眷属】を操るような敵に出会ったら・・・結果は火を見るより明らかだ。
何かしら対策を立てる必要があるな。ラングにも相談した方が良いだろう。今回は運よく大事にはならなかったが、もし戦闘になっていたら・・・うん、トラウマ必死だな。
「それでアニキ、あのアミネって奴は・・・」
途中で脱落してしまったアシュラとアスラ―は、その後の事は知らない。なので詳しく話してやると・・・
「累積レベルっすか」
「それがあの人の強さの秘密なんですね」
アシュラもそうだが、一方的にやられたアスターもやはり悔しい思いをしたみたいだ。
だが、アミネの強さの秘密はおそらくそれだけじゃない。アミネの【人魚】なのか【鳥獣人】なのか【竜人】なのか分からない種族もそうだし、俺たちには見せなかったが武器も所持している可能性が高い。そしてモンスターを操る力と・・・【固有能力】。
考え始めればキリが無いが・・・まずは累積レベルで追いつかないとな。
プレイヤーキャップがLv.75の現段階で【転生】できる回数は四回、アミネが四回【転生】を繰り返しているとなると彼女の推定累積レベルは最低でもLv.280ってことになるのか? そりゃ確かにかなわないわけだな。
今回のアミネとの遭遇は色々と教訓になった。俺だけではなく【アークガルド】メンバー全員にとってもだ。
ドタバタ色々あったが、結果的には良い刺激になったんじゃないだろうか。
ポンっとそこで肩を叩かれた。右肩をアテナに、左肩をアルマに、だ。
「良い感じでまとめようとしてるけど、話はまだ残ってるわよね?」
「アミネさんとキスしたのは・・・一体どういうつもりですか?」
・・・どういうもこういうも、あれって俺が悪いのか? 責めるべきはアミネなんじゃないのか?
「あれ、避けようと思えば避けられたはずよね?」
「HAHAHA! まさかまさか!!」
いくら俺でも、そんなとっさに動くことなんざできはしないでげすよ、姉御たち。
ピコンッ!
とここでメッセージの着信音が響いた。相手は・・・アミネだった。
『やってくれたのよ。今度会った時は百倍返しにしてあげるのよ!!』
・・・どうやら俺からの贈り物(爆弾)はしっかり届いたようだ。しかし、今はそれよりも・・・
「・・一体、いつの間にフレンドコードを?」
それは多分、あのキスの時に・・・どうどう、落ち着け二人とも。
俺は悪くないんだって・・・ふぎゃーーーー!?
・・・この後の展開はいつも通りなので割愛することにする。
===ログアウト===>おつかれまでした。
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