vsアミネ
アミネのあんまりな言いようにイラっと来たのは俺だけではないようだ。
「聞き捨てならないっすね。ボクはともかく、アニキが足手まといなんて納得できないっすよ!」
・・・いや、アシュラよ。お前はどの立ち位置で怒ってんの? 怒るんなら自分のことで怒れよ。なんで俺のことで怒ってんだよ。
「ワタシは事実を言ったまでなのよ。違うというのなら証明してほしいのよ。親子丼のお礼に付き合ってあげるのよ」
そう言って立ち上がるアミネ・・・いや、立ち上がるというか浮かんでいるというべきか? なんせ下半身が魚だからな。あれでどうやって歩くのかと思ったが、空中を泳いで移動するタイプらしい。
「望む所っすよ!」
アシュラもやる気になってるな。というかアシュラが戦うのか? 仮にアシュラが勝っても俺が足手まといではないという証明にはならないと思うんだが・・・ああ、駄目だ。二人とももう既に俺のことなんで眼中にないみたいだ。
二人ともちょーっと猪突猛進すぎやしないか?
「おりゃああ!【竜撃拳】!!」
アシュラが先制を取るように殴り掛かる。止めようかとも思ったが、俺たちを足手まといだと言い張るほどのアミネの実力を確かめたかったので、そのまま続けてもらうことにした。
当のアミネはというと・・・む? アミネの両腕が赤く染まっていく? いや、それだけじゃなく硬質化もしているようで、まるで手甲に変化しているような・・・
ガキンッ!
アシュラの拳を真正面から受け止めたアミネ。その瞬間、生身ではありえない、まるで硬い金属同士がぶつかったような鈍い音が響き渡った。
「むう・・・【竜撃乱舞】っす!!」
ドガドガドガドガッ!!
次々と繰り出されるアシュラの攻撃をアミネは両腕を使って綺麗にさばいていく・・・さすが言うだけの事はあってアミネの実力も相当なものであることは、見て取れることはできた。
しかし、アシュラの方もそれだけで終わるような奴ではない。
「中々やるっすね! ならこれならどうっすか! 秘儀! 【竜撃雷光烈破】!!」
今度は雷のようなオーラをまとったアシュラがより一層激しい攻撃をアミネに食らわせる。
威力、スピードともに段違いに上がったはずのアシュラの攻撃をアミネは・・・
「♪~」
先ほどの何ら変わらない様子でアシュラの攻撃をさばき続けていた。
・・・アミネのあの動き・・・スキルを使ったものでもないし、武術の型によるものでもないな。反射神経だけでアシュラの攻撃を凌いでいる。
いわゆる野生のカンってヤツか? ・・・いや、よく見るとアミネの目が・・・さっきまでは普通の人間だった目が、今は猫のように縦長の瞳孔をした目になっている。あの目でアシュラの攻撃を見切っているのか?
「ぐぬぬぬぬぬぬっす!!」
アシュラの方がじれて来たな。まあ、アミネの余裕そうな顔を見ればそれも致し方ないとは思うが・・・おそらくそれは誘いだ。
「落ち着け、アシュラ。誘いに乗るな」
沸騰しかけているアシュラに頭を冷やす意味を込めて助言を呈したのだが・・・
「ぐぬぬ・・・こうなったら最後の手段っすよ!!」
「聞けよ、おい」
駄目だ・・・すでに戦いに夢中で俺の声が届いていない。アシュラの悪い癖だ。
「ルドラ! 【精霊憑依】っす!!」
「まうっ!!」
ルドラと一体化したアシュラは、今度こそ全力を込めた・・・
「秘儀! 【轟竜鉄砕脚】!!」
必殺の蹴りをアミネに放った。しかし・・・
「♪~」
それでもアミネの様子は変わらない。アシュラの蹴りに対し、アミネは右手を差し出すと・・・
ドゴッッッッ!!
鈍い音を立てながらも、アミネは一切微動だにすることなくアシュラの蹴りを防いだ。
「なあ!?」
当然ながらに驚くアシュラだが、アミネは平然として・・・
「そんな様子じゃあ【幻獣界】の猛獣たちを相手にできないのよ」
アシュラの脚を掴み、自らの方へ引き寄せると・・・
ゴッッッッ!!
アシュラの腹に思い拳を食らわせた。
「がはっ!?」
アミネからの強力な一撃を受け、吹っ飛ばされたアシュラは・・・そのまま光となって消えていった。
「そんな!?」
「アシュラちゃんが一撃で!?」
その状況を見て狼狽えるメンバーを他所に、いち早く動き、アミネに攻撃を加えようとしている者がいた。
アスターだ。
【地鎌ガイアサイズ】を大きく振りかぶり、アミネに斬りかかるが・・・
ガキンッ!
「クッ!?」
・・・やはり、アミネの硬質化した腕によって防がれた。
「今のワタシの両腕は【鎧王亀アダマンタートル】の甲羅と同じ・・・つまり【アダマンタイン】製なのよ。生半可な攻撃じゃあビクともしないのよ」
【アダマンタイン】! 多くのプレイヤーが探し回っている上級素材の一つか! 【アダマンタイン】で作られた装備は決して壊れることが無い最硬の装備になるとか・・・それでアシュラの攻撃を受けてもビクともしなかったのか。
というかアミネは自身の体をモンスターのそれに変えることができるのか? まるでゼルクが使っていた【天醒:幻獣体化】と同じ・・・いや。
「他にもこんなことができるのよ」
そう言ってアミネは自身の背中にあった翼を広げた・・・いつの間にか1対2枚だった翼が3対6枚になっている。あの翼は・・・
「【風王鳥フレースヴェルグ】の翼なのよ」
そう言って翼をアスターに向けると、羽毛がまるで弾丸のようにアスターに向かって発射された。
「ぐっ!? 【サイコシールド】!!」
とっさにアスターは盾を張って防ごうとしたが・・・
バキィン!!
盾はあっさりと砕け散り、アスターは羽毛の弾丸の直撃を受け・・・光となって消えてしまった。
アスターまでこうもあっさり・・・あの力、あの威力、【天醒:幻獣体化】よりも強力じゃないか?
「アスターさんまでやられてしまったのです! もう見ていられないのです!!」
「ええ!」
「その通りです!!」
アシュラに続ぎアスターまで倒されてしまって、おさまりのつかなくなったアーニャ、アテナ、アルマは【眷属】たちと一緒に、一斉にアミネに攻撃を仕掛けようとしていた。
俺とアーテル、アウルももそれに加わろうとした、その時・・・
「数で攻めてきても無駄なのよ。ランララ~♪」
アミネは例の歌声を出してきた。
またどこからかモンスターを呼び寄せる気かと思ったが・・・違った。
「ク、クルー!?」
「!? アーテル!?」
「ガオ!?」「レオーネ!?」
「ピュイ!?」「フィオレ!?」
「キュイ!?」「キュア!?」「キュウ!?」「キュン!?」
「どうしちゃったのですか? ブランちゃん、ノワールちゃん、テールちゃん、ラメールちゃん!!」
俺たちの前に立ちふさがったのはアミネが呼び寄せたモンスターではなく・・・俺たちの【眷属】だった。
まさか・・・アーテルたちまでアミネのあの歌声に操られているというのか!?
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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