風嵐を切り裂く雷
『目的の浮遊小島まで距離200なのだ』
距離200なら、今の【機動戦艦】のスピードならすぐだ。
「タイミングを間違えるなよ、アヴァン、アシュラ!」
『無論なのだ!』
『合点承知っすよ、アニキ!』
浮遊小島まで距離100・・・80・・・50・・・今だ!!
『緊急停止なのだ!!』
【機動戦艦】が浮遊小島に突っ込む直前での急ブレーキ! 当然ながら車が急に止まれないように戦艦も高速移動からの急ブレーキだったため、逆噴射をかけながら浮遊小島に激突しないよう必死に停止しようとしている。
当然、甲板上にいた俺たちに強烈な反動が襲い掛かる。それでも俺たちは事前にわかっていたため踏ん張ることができたが、【風王鳥フレースヴェルグ】は・・・
「ピィギュア!!」
・・・こらえやがった。例えるなら、トラックと正面衝突するぐらいの衝撃に襲われたはずだが・・・敵ながらあっぱれだな。
しかし、それも想定済み。事前に知っていた俺たちとなんとかこらえた奴とでは立ち直りの速さが違う。そこに隙ができる。
「ここがチャンスっす! 秘儀! 【轟竜鉄砕脚】!!」
アシュラが乗るアークカイザーが【風王鳥フレースヴェルグ】を豪快に蹴り飛ばす。
「ピィギュア!?」
いかに奴でも急停止の反動プラス、アークカイザーからの攻撃には耐えられず、とうとう奴は甲板からその足を浮かせてしまった。
『アルマの姉御! 後は頼むっす!!』
『任せてください!!』
アークカイザーに代わって、今度はアルマが乗るアークミネルヴァが前に出る。
『際限なく降り注ぐ氷の嵐! 【鮮烈なる氷槍】』
アークミネルヴァが放った大量の氷の槍が【風王鳥フレースヴェルグ】に降り注ぎ、押し出されていく。
急停止の反動、アークカイザーからの攻撃、そしてアークミネルヴァからの攻撃も相まって【風王鳥フレースヴェルグ】は前方の浮遊小島に叩きつけられた。
ここだ。ここからは俺たちの出番!
俺は【閃槍アーディボルグ】を取り出し、さらに【機天の装腕】に【ブーストエナジーメダル】を5枚装填する。
「【機天の装腕】エナジースピア!」
【閃槍アーディボルグ】を中心に巨大なエナジーの槍を生成する。これも【機天の装腕】の力の一つ。本来、【兵器】ではない武器に対してもエナジーを流し込み、武器の巨大化と同じ効果を発揮することができる。
全長100mを超えるであろう巨大なエナジースピアを・・・
「【スピアディスチャージ】!!」
【風王鳥フレースヴェルグ】に向かって投げつける。
「ピィギュアアアアアア!?」
浮遊小島に叩きつけられていた奴に俺の槍を避ける余裕は無く、奴は俺の槍にその胸を貫かれ、そして浮遊小島に縫い付けられる形となった。
これが俺の考えた作戦。奴を【機動戦艦】から引きはがすと同時に、奴に逃げられないよう浮遊小島に縫い付ける。
後は・・・
「今だ、皆!!」
奴を逃がさないよう、倒しきるのみ。
「【サウザンド・アローレイン】!!」
「【処刑人の断罪刃】!!」
先ほどまで攻撃に参加できなかったアテナやアスターも今度は攻撃に参加している。
そして・・・
「ブランちゃん! ノワールちゃん! テールちゃん! ラメールちゃん! 力を合わせるのです!!」
「キュイ!」「キュア!」「キュウ!」「キュン!」
「【四竜の息吹】なのです!!」
おお、ブランたちのブレスが一つに合わさって・・・新技か、やるな。
「俺たちも負けてられないぞ、アーテル」
「クルッ!」
俺は再び、アーテルの背に乗り、【豪剣アディオン】を取り出して・・・
「【勇天の一撃】!!!」
【風王鳥フレースヴェルグ】に最強の一撃をお見舞いする。
「ピィギュアアアアアア!!」
一方で奴は俺たちの攻撃を受け続けているにもかかわらず、必死にエナジースピアを抜こうとしている。
本当にタフだな。だが、いかに奴でももうそろそろ限界のはずだ。
「このまま押し切れると良いんだが・・・」
『アルクよ、それはフラグなのだ』
「ピィギュアアアアアア!!」
俺のせいなのかどうかは不明だが【風王鳥フレースヴェルグ】が再び動いた。全身から強力な風を出してきた。
「グッ!?」
「きゃあ!?」
これは・・・俺のエナジーハンドから脱出した時の自爆もどきのやつか。どうやら奴は全身どこからでも嵐のような風を巻き起こせるらしい。さっきは内部から風を起こして自身の翼や羽毛を吹っ飛ばしたのか。
そして今、遮るものの無い凶悪な風が俺たちに襲い掛かっていた。
これでは奴に近づけない。この隙に奴はエナジースピアを引き抜いて逃げる気か。
・・・まあ、こんな事態も想定済みなんだがな。
「アヴァン、出番が来たぞ」
『アルク・・・ここまで予想していたのだ? まあ良いのだ。ラグマリア!』
『こちらは準備OKデス』
こんなこともあろうかと!(一度は言って見たかったセリフ)用意していた戦艦の新【兵器】が役に立つ!!
それは戦艦の左右の側面に搭載された大型銃身砲。その長身のため取り回しが悪く、戦艦の前方にいる敵くらいにしか使用することができない。しかし、その分、威力はお墨付きだ。銃身がバチバチと放電しながら、敵・・・【風王鳥フレースヴェルグ】に狙いを定める。
『【戦艦電磁加速大砲】! 発射シマス!!』
ドォオオオオオオン!!
雷をまとった巨大な砲弾は嵐のような風をものともせず、【風王鳥フレースヴェルグ】に直撃し・・・
「ピィギュアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」
浮遊小島ごと木っ端みじんに吹き飛ばした。
瓦礫となって崩れ落ちていく浮遊小島。その中で・・・【風王鳥フレースヴェルグ】が光となって消えていくのが見えた。
「風を切り裂くのは雷、だったな」
やはり【機動戦艦】は頼りになる立派な戦力だ。今後のことを考えてもっと強化していかないとな。
・・・
・・
・
「フフフ、やるじゃない」
そう遠くない所から声が聞こえる。
「それならもっと楽しめるように、ラー♪」
「やらせるか!」
思わず叫ぶ俺。そして・・・
「きゃあ!?」
密かに出していたエナジーハンドで・・・ようやく歌声の主を捕まえることに成功した。
クックック、この為にアヴァンに例の地点・・・つまり、歌声の主がいる浮遊小島のすぐ近くまで来てもらい、さらに【機天の装腕】を使ってエナジースピアを出す際、メダル四枚分をエナジースピアに、もう一枚分をエナジーハンドにして密かに出していたのだ。
案の定、俺たちの戦いの見物に集中していた歌声の主は気づかなかったようだ。
こちらの思惑通りに・・・とうとう歌声の主を捕まえたぞ! そのツラ、拝ませてもらおうか!!
「もー! もう少しミステリアスキャラでいくつもりだったのに、台無しなのよ!!」
・・・なんかアホなこと言ってるような気がするが気のせいだろう、うん。
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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