風は嵐に変わり
【風王鳥フレースヴェルグ】が降り立ったのは【機動戦艦】の船首部分。
正直、奴からすれば敵地に足を踏み入れる自殺行為に等しいはずだ。
にも関わらず、奴からは闘志は一切失われていない。むしろ余計にやる気に満ちてきている気がする。体を覆っていた羽毛を取っ払ったせいか? 身軽になったから体を動かしやすくなったとか?
おまけにそのやる気に触発されたのか・・・
『【竜撃乱舞】! おりゃりゃりゃりゃりゃっす!!!』
「ピィギュアギュアギュアギュアギュア!!」
・・・アシュラが乗るアークカイザーと壮絶な殴り合いしとる。うーん、見えなくともアークカイザーのコクピットの中でアシュラがイキイキしているのがわかるな。
【風王鳥フレースヴェルグ】の方も、嵐のような拳の連撃を繰り出している。奴の攻撃の真骨頂は、奴の生み出す風でも、弾丸のような体当たりでもなく、肉弾戦だったようだ。・・・ホントに鳥なのか、アイツは。
無論、そんな奴の相手をアシュラたちだけに任せるわけはなく・・・
『立ちはだかる敵に雷の制裁を!【雷電の鉄槌】!!』
アルマが乗るアークミネルヴァも【魔法】によるフォローを行っている・・・が【風王鳥フレースヴェルグ】の奴は雷に打たれても構うことなくアークカイザーに殴りかかっている。中々気合が入ってるな・・・というか、防御力が低いと思っていたがそうでもないのか? 翼を失った分だけ防御力が上がった? 厄介だな。
俺たちも協力を、と思ったのだが・・・
「・・・微妙に手を出しにくいわね」
「なのです」
【風王鳥フレースヴェルグ】がいるのは戦艦の端っこ、その前にはアークカイザーとアークミネルヴァが立ちふさがっている。おかげで奴の攻撃は俺たちまで届かないが、俺たちからも2体の【クランメカロイド】が壁になって手を出しにくい。
かといってアークカイザーやアークミネルヴァを下がらせることもできない。もし、そんなことをしてしまえば奴は容赦なく戦艦に攻撃を仕掛けるだろう。幾分か縮んだとはいえ、奴の巨体を生身の俺たちで止めることは不可能だ。
つまり、奴を食い止めるには今の状態がベターなんだが、おかげで俺たちがアークカイザーたちに乗り込む隙も無い。
戦艦からの援護砲撃もできない。今撃っても【風王鳥フレースヴェルグ】ではなくアークカイザーやアークミネルヴァに当たるだけだ。フレンドリーファイアは無効とはいえ、ダメージが発生しないだけで攻撃が味方の体をすり抜けるなんて都合よくはいかないのだ。
空中に回り込めば攻撃に参加できなくはないのだが、今現在、【機動戦艦】は高速移動中なんだよなぁ。
『戦艦の移動、止めるのだ?』
確かに戦艦の移動を止めれば無理なく奴を囲い込むことができるが・・・
「・・・いや、このまま例の地点まで移動してくれ」
どちらにせよ、奴の翼があの状態ではどこにも逃げることはできない・・・と思っていたのだが周囲の状況を見る限りそうでもないみたいだ。
俺たちの戦いに巻き込まれる形で破壊され、消えてしまっていた浮遊小島・・・戦艦が移動し続けたことで浮遊小島が現存している空域までやってきたみたいだ。既に周囲にはぽつぽつと浮遊小島が見えるようになっている。
おそらく【風王鳥フレースヴェルグ】のあの形態は浮遊小島で戦うためのものだったのだろう。先ほどまではその浮遊小島が無かったから戦艦に降り立ったんだろうが・・・もし今、戦艦が移動を止めると奴は浮遊小島に逃げる可能性が出てくる。
浮遊小島の無い場所まで行くまでは現状のままの方が良い・・・もっとも、浮遊小島に関係なく例の地点にたどり着くまでは戦艦を止めるつもりはないのだが。
「それとアヴァン、新【兵器】の準備も頼む」
『む?・・・移動はともかくアレを使うのだ? しかしアレは・・・』
「わかってるさ。いざという時のだめだ」
あの【兵器】を使えば【風王鳥フレースヴェルグ】を仕留められる可能性は十分にある。まあ、奴が甲板の上にいるうちは使用できないが・・・いずれチャンスが来るはずだ。
もっともアシュラたちがこのまま【風王鳥フレースヴェルグ】を倒すことができれば、それに越したことはないのだが・・・
「ピィギュアアアアア!!!」
『ぐぬぅうううううっす!!』
『しぶといですね・・・』
【クランメカロイド】2体がかりで押しきれないとは・・・むしろこっちが押され始めているか?
なんて強さなんだ【風王鳥フレースヴェルグ】。単なるボスじゃなくレイドボスなんじゃないのか?
あまり時間をかけると【クランメカロイド】の制限時間を過ぎる可能性もあるし、そうなればこっちが一気に追い込まれるかもしれない。
せめて奴を戦艦から引きはがし、全員で一気に仕留められるようにしないとな。
そのためには・・・
『アルク、例の地点に近づいてきたのだ』
場所も頃合いか・・・良しっ!
「アヴァン、この辺りで一番でかい浮遊小島に向かってくれ」
『了解なのだ』
「皆、今度こそあの鳥野郎を倒すぞ。作戦は・・・」
【ジャック君】の通信越しにゴニョゴニョと作戦を伝える。
「・・・というわけだ。アシュラ、アルマ。お前たち肝だからな、頼むぞ」
『お任せくださいっす!』
『分かりました!』
『アルク! 絶好の浮遊小島があったのだ。前方、距離500なのだ』
良いタイミングだ。あとは・・・
「行くぞアウル!【精霊憑鎧】!!」
「だう!!」
アウルが俺が装備している【功鎧アルドギア】と一体化し・・・
「【王鎧アウルドギア】!!」
・・・これで準備は完了だ。
勝負だ!【風王鳥フレースヴェルグ】!!
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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