突き放す風
「ピィギュアアアアアア!?」
おお、効いてる効いてる。
背後からはアテナたちの攻撃を、正面からは【機動戦艦】の砲撃を受けてさしもの【風王鳥フレースヴェルグ】もダメージを受けているようだ。
「クルー!」「だうー!」「ピュイー!」
「キュイー!」「キュアー!」「キュウー!」「キュン!!」
さらにアーテルたちも攻撃に加わって一層苛烈な攻撃を【風王鳥フレースヴェルグ】に浴びせている。
予想以上に俺たちの攻撃が効いているように見えるが、さすがにこのまま倒せるほど甘くはないだろう。
今の内に俺とアルマも【MPポーション】を飲んで回復し、加勢をと思ったのだが・・・それよりも先に【風王鳥フレースヴェルグ】の方が動いた。
「ピィギュアアアアアア!!」
【風王鳥フレースヴェルグ】はその巨大な六枚の翼を羽ばたかせて、上空へと逃れた。俺たちが前後で挟み込んでいた以上、逃げ道は上下左右のどれかしかないだろうと踏んでいたが・・・上に逃げたか。
「アーテル、頼む!」
「クルッ!!」
ある程度予想していた俺はアウルと共にすぐさまアーテルの背に乗り込み、【風王鳥フレースヴェルグ】の後を追った。
・・・なお、他のメンバーは【風王鳥フレースヴェルグ】が急にいなくなったことでお互いの攻撃が飛び交う形になり、混乱していた。前後で挟み撃ちにしてたんだから、そのくらい想定してろよ。まあ、フレンドリーファイアは無効なので誰にもダメージは無いのが救いだが。
今はそれよりも奴を追い込むのが先決だ。
【風王鳥フレースヴェルグ】の力はまだ未知数、もしかしたら距離を取って回復を図るつもりかもしれないし、今は無理をしてでも追いかけた方が良い。
逃げる【風王鳥フレースヴェルグ】を追いかける俺たちだったが・・・しばらく追いかけた後、【風王鳥フレースヴェルグ】は身をひるがえし、こちらに向かって急降下してきた。
逃げるのは諦めて、反撃に転じるつもりか。そっちがその気なら・・・
「【勇撃強化・双刃・疾風連斬】!【シャイニングフェザーインパクト】!【オービットソード】!」
「クルー!!」
「だう!!」
俺たち三人で一斉に攻撃を仕掛け、迎え撃つ・・・つもりだったのだが・・・
「なにっ!?」
【風王鳥フレースヴェルグ】は俺たちの攻撃を直角に軌道を変えて避けた。
なんだ、あの動き!? アーテルと同等以上のスピードを出しておいた、あんな無茶な軌道転換ができるとは・・・ここが空の上で重力の影響が少ないせいか!?
さらに【風王鳥フレースヴェルグ】は不可思議に軌道を変えながら急降下を続けていく。その先にあるのは・・・まずい!? 奴の狙いは・・・!?
「アヴァン!!」
『わかっているのだ! 緊急加速なのだ!!』
【機動戦艦】に向かって真っすぐ急降下していた【風王鳥フレースヴェルグ】だったが、アヴァンがとっさに【機動戦艦】を前進させたことで直撃せずにすんだようだ。
【風王鳥フレースヴェルグ】はどうやら【機動戦艦】に狙いを定めたようだ。間近にいた俺たちを無視して【機動戦艦】に向かったのがその証拠だ。
【機動戦艦】が俺たちの生命線だってことがバレたっぽいな。もしくはそれも歌声の主の指示なのかは分からないが・・・
「また来たぞ、アヴァン!!」
『合点なのだ!!』
再び【風王鳥フレースヴェルグ】が【機動戦艦】に向かって突進してくる。
ちぃ、次撃が早い。アーテルに頼んで急いで【機動戦艦】に戻ろうとしているが、それよりも早く【風王鳥フレースヴェルグ】が攻撃を仕掛けてくる。
アヴァンが【機動戦艦】を加速し続けているおかげで避けることはできているみたいだが・・・このままだとまずいな。アテナたちもカウンター気味に反撃しようとしているが、【風王鳥フレースヴェルグ】には全く当たらない。
なんてスピードだ・・・攻撃方法自体は至ってシンプルな体当たりのはずなのだが、とにかくあのスピードがやばい。それに加えてあの巨体・・・あれではまるで超巨大な弾丸だ。しかも変幻自在に軌道を変えられる非常識な弾丸。
『緊急転換なのだ!!』
クッ、また・・・しかも今度は【機動戦艦】の進行方向から・・・アヴァンが舵を切ったことでギリギリで直撃を免れたようだが、進行方向が大幅にずれてしまった。
元々、俺たちは歌声の主の元にまっすぐ向かっていたのだが、【風王鳥フレースヴェルグ】によって見事に邪魔されてしまったな。
と、ここでようやく俺たちも【機動戦艦】に追いついた。甲板に降り立った所で、再び【風王鳥フレースヴェルグ】が向かってくる。
『クッ、まずいのだ!!』
やばい・・・【風王鳥フレースヴェルグ】の奴、どんどん狙いが正確になっていってるみたいだ。
今度のやつは・・・避けきれない!!
「聖なる光よ! 私たちを守る盾に!!【聖なる光の盾】!!」
ドゴッ!!
【機動戦艦】に直撃するかと思われた瞬間、巨大な光の盾が出現して【風王鳥フレースヴェルグ】を弾いた。
アテナの【神聖魔法】だ。話には聞いていたが、あの【風王鳥フレースヴェルグ】の巨体を押し止めるとは・・・なんて堅牢な盾なんだ。
「でかしたぞ、アテナ!!」
アテナの盾によって【風王鳥フレースヴェルグ】はその動きを止められた。俺たちにとってもチャンスだ!
「【マキシマムスラッシャー】!!」
すぐさま攻撃を仕掛けると、【風王鳥フレースヴェルグ】は俺の攻撃を避けるため、すぐさま飛び立った。
「逃がさんぞ! アイツを追ってくれ、アーテル!!」
「クルー!!」
飛び去った【風王鳥フレースヴェルグ】を追うアーテル。
「ピィギュアアアアアア!!」
しかし、アーテルも全力全開で追いかけているはずなのに・・・追いつけない。それどころかドンドン距離が離されていく。
「アーテル! 【レーザーダイブ】だ!!」
「クルー!!」
アーテルにスキルを使ってもらい、さらに加速して追いかけるが・・・それでも距離は縮まるどころか離されていく。
くそっ! アーテル以上のスピードだと・・・これじゃあ、誰も【風王鳥フレースヴェルグ】に追いつくことはできないぞ。
そんなことを考えていると、【風王鳥フレースヴェルグ】は再び方向転換、アーテルから距離を保ったまま大きく迂回し、【機動戦艦】に向かっていく。
「まずい! 戻れアーテル!!」
「クルッ!」
だが、この距離では到底間に合わない・・・まさか【風王鳥フレースヴェルグ】はそこまで見越していたというのか?
これじゃあ迂闊に【機動戦艦】から離れることもできない。
マジでどうするか考えないと。
(*・ω・)*_ _)ペコリ
作者のやる気とテンションとモチベーションを上げる為に
是非、評価とブックマークをポチっとお願いします。
m(_ _)m




