風王鳥フレースヴェルグ
【風王鳥フレースヴェルグ Lv.75】
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現れた巨鳥を【看破】した結果がこれだった。・・・正直、ツッコミどころがいくつもある。
まず、その見た目。その姿は鷲に似ていた。実際、頭の部分は鷲のそれとほぼ同じだ。しかし、体の部分が大きく異なる。全身が緑色の羽毛で覆われており、翼が三対六枚、さらに人間のような手と足まで生えていて、鷲というか鳥という種類のフォルムから大きく逸脱している。
そして、なによりも目を引くのがその巨体。【機動戦艦】よりも巨大、つまり全長300m超えという巨大モンスターだ。
でかすぎだろう・・・と思いつつ、うちのメンバー誰一人としてひるんだ様子がないのは場慣れてしまったからだろうか。・・・俺のせい? どうもすいません。
そしてフレースヴェルグという名前・・・明らかに通常モンスターではなく、ボスモンスターだ。
「このでっかい鳥が敵さんの本命ってことよね」
「本気でこちらを潰しに来たということでしょうか?」
・・・いや、それはどうだろうな。本気で俺たちを倒すつもりなら、他のモンスターたちを解散させる必要は無かったはずだ。
まあ、あれだけでかい鳥だ。他のモンスターは足手まといになるから逃がした可能性もあるが・・・しかしそうなると、歌声の主はこの巨鳥が『俺たち【アークガルド】メンバー全員を相手にしても問題ないくらいの猛者』だと認識していることになる。
俺たちの戦い振りを見た上で【風王鳥フレースヴェルグ】を呼んだとすると・・・油断すれば俺たちの方が負ける可能性が高いのは確かだ。
「ピィギュアアアアア!!!」
む、来るか。
その巨体にふさわしく大音量の雄たけびを上げる【風王鳥フレースヴェルグ】。それだけで俺たちは気圧されそうになるが、俺たちだってそれなりの激戦を潜り抜けて来たんだ。この程度でビビったりはしない。
そんな俺たちを見据え・・・あるいは敵として十分だと判断したのか、【風王鳥フレースヴェルグ】はその六枚の翼を大きく広げると・・・
ビュオオオオオオオ!!!
その場で翼を羽ばたかせた。移動の為ではない。ただ俺たちに向かって風を送るように翼を動かしただけだ。
それなのに・・・
「「「「うわぁああああああ!?」」」」
その翼によって巻き起こされた突風により、俺たちは吹き飛ばされた。
たった一回の羽ばたき。しかし、そこから起こったのは微風などではなく大嵐にも匹敵する凶悪な嵐風であった。
『皆!【機動戦艦】に掴まるのだ!!』
俺たちが吹き飛ばされた先、そこにあったのは後方で待機していた【機動戦艦】だった。偶然だが、モンスターたちが居なくなったことでメンバー全員が俺の元、つまり【機動戦艦】の前方に来ていたのが功を奏した。
メンバーそれぞれが【機動戦艦】にしがみつく。すると少しだが、突風の影響がすくなくなり、自由に動けるようになった。
『戦艦の重力制御装置の効果範囲を外まで広げたのだ。戦艦の近くならば、多少だが風の影響を防げるはずなのだ』
なるほど重力で風を相殺・・・まではできないみたいだが、動けるようになるのはありがたい。あのまま吹っ飛ばされていたら、どこまで飛んでいったか分かったもんじゃないからな。
風の影響も残る中、なんとか全員が【機動戦艦】の甲板の上まで集まることができた。
しかし、【風王鳥フレースヴェルグ】は何度も翼を羽ばたかせて風を送り込んできている。
・・・あの鳥野郎、俺たちを直接手を下すまでもないと見下してやがるな?
『【機動戦艦】のブースターを全開にしても、この場にとどまるのがやっとなのだ。早めに何とかしてほしいのだ!!』
・・・とはいえ、こっちもいっぱいいっぱいか。さすがに相手が相手だからな。
「もう何なんすか、あのでっかい鳥は! 一発殴ろうにもこれじゃあ近づけないっす!!」
「・・・アシュラ、フレースヴェルグの名前、知らないのか?」
「「「???」」」
・・・おうふ、どうやら誰も知らないっぽいな。仕方ない、説明してやろう。
フレースヴェルグとは北欧神話に登場する鷲の姿をした巨人の事だ。なんでも世界中のあらゆる風を引き起こしているのがフレースヴェルグだとされている。
「まさに風の支配者・・・いえ、風の王というわけですか」
「ああ、神様じゃないみたいだが限りなくそれに近い存在だと言ってもいいだろう。少なくとも何の脈絡もなくこんな所で出てきて良いような敵じゃない」
そういう意味では、【風王鳥フレースヴェルグ】を呼び寄せた歌声の主は本気で俺たちを倒しに来ているのかもしれない。・・・もしくは【風王鳥フレースヴェルグ】を倒して自分の元へとやって来いという暗黙のメッセージ、かもしれない。
もしそうだとしたら・・・否、そうじゃなかったとしても俺たちのやるべきことは変わらない。
「俺とアルマの【魔法】でこの風を相殺するから、その隙にアテナ、アスター、アシュラで奴は回り込んで奴の背後に回り込んで攻撃してくれ。他は正面から奴を引き付ける」
「挟み撃ちにするってことですね?」
「そうだ。奴が巻き起している風は奴の後方にまでは及んでいないようだし、背後からの攻撃なら風に邪魔されることはないはずだ」
「わかったわ! レオーネも良いわね!」
「ガオ!!」
「行くっすよ、ルドラ! 【精霊憑依】っす!!」
「まう!」
「ミコト!カリン! 【精霊憑依】!!」
「あい!」「ふぁう!」
アテナたちの準備も完了した所でいよいよ反撃開始だ。
「やるぞアルマ!」
「分かりました! 破壊の嵐よ。万物を切り裂く刃にて敵を微塵とせしめる!!【風刃の大嵐】!!!」
「【魔天の叡智】!【サイクロンストーム】!!」
俺とアルマの【風魔法】が【風王鳥フレースヴェルグ】の巻き起こした風を押し返す。
「ピィギュアアアアア!!!」
【風王鳥フレースヴェルグ】もより一層激しく翼を羽ばたかせて風を巻き起こし続ける。
・・・俺とアルマの【魔法】でも押し切れない! 拮抗状態に持ち込むだけで精いっぱいか・・・だが、俺たち側への風の影響を無くせただけでも十分だ。
あとは、この隙に奴の背後に回り込んだアテナたちが・・・
「【サウザンド・アローレイン】!!」
「【処刑人の断罪刃】!!!」
「【竜撃双掌】!!」
攻撃すれば、
「ピィギュアア!?」
奴はそれに気を取られ、羽ばたくのを止める。その隙に・・・
「アヴァン! ラグマリア!!」
『全砲門一斉発射なのだ!!』
『了解、発射!!』
ドドドドドドドォーン!!!
【機動戦艦】の砲撃をぶち込むことができる。
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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