現れし風の王
『相変わらず、すごい威力っすね』
モンスター共の包囲網に見事に風穴を開けたのを見てアシュラがそんなことをつぶやいていた。
『っていうかアルクが今のを撃ち続ければ簡単に殲滅できるんじゃない?』
「バカ言うな、アテナ。メダルの数は限られてるんだよ」
今回、【エナジーブーストメダル】は20枚持ってきていたが既に4枚も使ってしまった。いくら【機天の装腕】が便利でもペース配分を考えないとあっという間に使用不能になってしまう。
『言い合っていないで今の内に移動するのだ』
『そうですね。モンスターたちもまた集まってきているみたいですし』
・・・確かに俺が空けた包囲網の穴にモンスターたちが集まってきている。だが、積極的に穴をふさごうとする動きではないな。あくまで狙いは俺たちで、たまたまできた通り道を通っているだけのように思える。
つまり、モンスターどもは歌声に引き寄せられて集まっているものの、操られているわけでも統率されているわけではないということだ。単に引き寄せられてきた先に俺たちがいたから本能的に襲い掛かってきているだけみたいだな。
群がってきているモンスターたちを駆逐しながら、【機動戦艦】を中心に包囲網の穴・・・北側に向かって戦場を移動する。
『そちらの方向に元凶となる者がいるのですか?』
「わからん。だが立ち往生していても見つからないのなら移動するしかないだろう」
【機動戦艦】のレーダーは周囲数km圏内にいるプレイヤーやモンスターを検知できるはずだ。歌声の主はその範囲内に居ないようだが、かといって何十kmも離れた場所にいるとも思えない。そこまで遠くに居たら【遠視】スキルを使っても俺たちの様子を観察できないからだ。
この状況が歌声の主が仕掛けて来たゲームなら、必ず俺たちの状況をどこかで見ているはずだ。
その証拠に・・・
『・・・はにゅ~、倒しても倒してもキリがないのです』
そう、移動を続ける俺たちを追いかけるようにモンスターどもが襲来してくる。その数は先ほどまでと同じ・・・つまり、俺たちの移動に合わせて歌声の主もモンスターを引き寄せる地点を移動させているということだ。
「【アローレイン】!!」
「天に広がる不吉な前兆、閃光の稲妻となって大地に降り注ぐ!【サンダーボルトサウザンド】!!」
「ブランちゃん、ノワールちゃん、テールちゃん、ラメールちゃん! お願いなのです!!」
「【サイコスラッシュ】!!」
「【竜星脚】っす!!」
『各砲座、皆さんを援護するのデス!』
移動と同時に全員が自然に【機動戦艦】の元に集まって来たようで、全員が視認できる程度の距離で戦っているのが見えた。
【眷属】たちも頑張ってくれているをおかげで楽に・・・とまではいかないが、苦戦するほどでもなく善戦していると言って間違いないだろう。
ただ・・・
『・・・アルク、この遊びの落とし所はどこだと思うのだ?』
・・・どうやらアヴァンも俺と同じことを考えていたらしく、通信越しでそんなことを聞いてきた。
「そうだなぁ・・・やはり歌声の主を見つける所だろう。敗北条件を満たす前に、な」
『敗北条件?』
「俺たちが全滅するか・・・歌声の主がこの状況に飽きるか、だ」
『・・・』
おそらく歌声の主は遊び半分でモンスターたちをけしかけてきて、モンスターたちと戦っている俺たちの状況を見て楽しんでいるものと思われるが、いつまでも変化しない状況をただ見ているだけだと次第に飽き始めるだろう。
そうなったら早々に歌声の主は逃げてしまう可能性が高い。いつものクエストとは違って、歌声の主の気分次第で状況があっさり変わってしまうっていうのが面倒な所だ。
そうさせないためには俺たちも動いて歌声の主を追い詰めるという刺激が必要だ。
『なるほどなのだ・・・しかし、追い詰めすぎると逃げられる可能性もあるのだ』
「いや、それは無い」
飽きたから逃げるのと、追い詰められたから逃げるのとでは意味が全く違う。少なくともこの歌声の主は敵から尻尾まいて逃げるような真似はしないだろう。
『そう言い切る根拠は何なのだ?』
「・・・きっと歌声の主は誰かさんたちと同じで意地っ張りだろうからな」
会ったこともない相手だが、何となくそう確信してしまう。
『その誰かさんたちって・・・』
『誰の事なんですか?』
・・・通信越しにやや怒り気味のアテナとアルマの声が聞こえてくるが・・・まあ、そういう気の強い所だよ。
『・・・むっ! レーダーに反応!! この先の浮遊小島に誰かいるのだ!!』
どうやら当たりにぶつかったようだ。目視ではまだ距離がある為、誰がいるかは見えないが・・・人影がいることは間違いない。
・・・あの距離ならアーテルに乗って行けばすぐだ。モンスターどもの相手はアテナたちに任せて、俺たちが先行してとっ捕まえてやるか。
そう思いアーテルの背に乗り、指示を出そうとした、その時。
「ラ――――――♪」
!? 曲調が変わった!?
「アルクさん、何かおかしいです!!」
続いてアスターの声が直接聞こえて来た。どうやらアスターを含む他のチームたちが皆、俺の元へ集まってきていたようだ。
持ち場を離れて何を、と思ったが・・・いつの間にかモンスターたちが居なくなっている、だと?
どうやら、モンスターたちが集まらなくなったことでアスターたちが合流しに来たらしいが・・・何故こんな突然?
レーダーの捕捉されて観念した? いや、そんな事で大人しくなるタマではないはずだ(確信)
では何故・・・と思っていたが、実は俺には一つ思いついていた事がある。
ゲームを盛り上げる為に俺だったらどうするか。
俺だったら・・・ある程度雑魚をぶつけて場が温まった所で・・・
『!? 上空から巨大モンスターが接近中なのだ。皆、注意するのだ!!』
そう、そこで・・・本命を用意する。
「ピィギュアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
上空から一瞬にして俺たちの前に立ちふさがるように現れる影。
その正体は・・・【機動戦艦】よりもさらに巨大な鳥のモンスターだった。
【風王鳥フレースヴェルグ Lv.75】
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(*・ω・)*_ _)ペコリ
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